『 4月1日 』

「僕は君のことが嫌いです。」
4月1日になって、ようやく僕はそう言えた。
それが事実か嘘かなんてどうでもよくて、ただ僕は、君を居心地の悪い気分にしたかった。
そんな僕は最低だろう。4月1日という日付をわざわざ選んでそんなことをする僕は、最低限に最低な人間だろう。
でも、今、あの4月1日よりも後の時間軸に存在する僕は、ただ思う。
君を思い出すことはもう、だいぶ減ってしまったけど。
でも、僕は君を思い出して、何事もなかったように笑うことはできないんだよ。
あの日、君にひどいことをした僕は、もう、当たり前に笑うことなんて許されないんだって思う。
僕は加害者で、君は被害者だったね。
もし君に出会いなおすことができたとしても、僕はやっぱり君を害するんだろう。
そうしなければ、僕は自分の記憶に君をとどめておくことができない。
そして君の記憶に僕をとどめておく方法も、やっぱり、これしか思いつかないんだ。
大丈夫、僕は君のことが嫌いです。
大丈夫、僕は、君のことが大嫌いです。
そして、君よりも僕自身を、殺してしまいたいくらいに大嫌いです。
そう呟きながら、空を流れていく桜の花びらを一枚捕まえて、爪の先で貶める。そうすることで、君を忘れようとするけれど、むしろ気の毒な花弁は君と僕にそっくりで、ため息しか洩れなかった。



2011年04月10日(日) 

元イメージは『世界はみんな僕の敵』『ハロー』byメトロノーム。


大好きは、大嫌いの裏返し。
害は、愛の裏返し。
だからといって、許さないことは許しの裏返しにはならない。
いつまでだって加害者なんだ、君の前では。
幸せそうに笑わないでくれ。
僕が不幸になってしまうから。