特撮!最前線

 カメラという単語は仮面ライダーの略だということを知っているかね、と眼鏡を押し上げて加持夏輝が言った。ばっかじゃねーの、とわたしが返すと、彼は満足げににっこりした。この男が、毎週水曜日、わたしの通う学校の実験室を占拠するみょうちきりんな団体の首謀者である。普段から地毛を銀髪にブリーチして外を歩いている、気持ち悪いコスプレ男だ。顔のレベルは普通、というかそこそこイケメンで、それがまた腹立たしい。喋らなければ美形なのだ、喋りさえしなければ。
「いやあ、今日もユカちゃんの毒舌は快調快調ってかんじだねえ」
と、無駄に笑顔を振りまいているのは保坂来。こちらも垢ぬけた美男子なのだが、その正体は廃墟と名のつくものなら何にでも興奮すると言う重度の廃墟オタクである。人間には欲情しないらしい。異次元すぎてわからない趣味である。廃墟というものが関わらなければ常識人なので、常時銀髪でオタクしゃべり全開な加持よりはマシ、というレベルだ。
「あ、カメラの話ですか。ぼくも混ぜてほしいな」
カメラ、という単語を耳聡く聞きつけてやってきたのは制服のままの高校生、亀梨敬太である。たぶん、趣味的には彼が一番まともだ。三度の飯よりカメラが大好き、というカメラオタク。カメラの話になると急に饒舌になるが、そのほかのときは物静かで、無害だ。
 ――以上の三名が、この研究会のメンバーである。加持はわたしの名前も名簿に加えたいらしいが、こんな怪しげな三人組と名前を連ねるのはまっぴらごめんである。
「いや、カメラの話はしてない」
わたしがそう言うと、亀梨は残念そうにうつむいた。
「うーん、最近撮影が少なくてさみしいんですよね。ぼくのカメラ、泣いてる気がする」
そう、撮影について語らなくてはならない。気が進まないのだが、この三人がここに集まる理由の中核にあるのが「撮影」という言葉なので、仕方ない。

 わたしがこの三人と出会ったのは、数週間前の放課後だ。忘れ物を取りに実験室へ戻ってきたわたしの前で、信じがたい光景が繰り広げられて……ああ、本当に、思い出したくもない光景。説明するのも面倒だし、説明したくもない。要するにそこで行われていたのは、いかがわしいビデオの撮影だったのである。しかも、かなり特殊な性癖向けとしか思えないキワモノだった。できるだけ端的に内容を説明しよう。白くてうねうねした巨大な蛇が、裸の男に巻きついて……ああ、もうこれ以上は説明したくない。いわゆる触手プレイというものだと、後に加持は説明した。リアルにねっとりとした蛇の質感と、それまで見たこともなかった男性のあんなところやこんなところが、まだ十八歳にもなっていないわたしの精神にいろんなトラウマを形成したことは間違いない。

 とりあえず、そのときのわたしは悲鳴を上げた。何が何だか分からなくて、怖かった。できたら逃げたかったが、足が動かない。
「違うんだ、待ってくれ、誤解だよ誤解」
と、制服を着たカメラマンの後ろで銀髪の怪しい男が言った。
「何が誤解ですか! あの蛇みたいなのはなんですか!変態!」
「いや、これは撮影で」
「ここは学校ですよ! こんな破廉恥なことしていいはずありません!」
「いや、ちょっと、落ちついて」
そのときわたしは、銀髪の男に焦点を絞っていて、蛇の方を見ていなかった。見たくもなかった。
それで、自分の背後に先ほどの被写体の男性が立っているのに気付かなかった。
「許可は取ってあるんだよ、一応ね」
声がすぐ近くで聞こえ、わたしは振り返った。
上着を羽織った、半裸の男性が立っていた。さっき、蛇に絡みつかれていた人だ。また叫びだしそうになるわたしをジェスチャーで軽く制した彼は、ごめんね、とつぶやいた。それは本当に申し訳なさそうな声で、わたしは、すぅっと自分の体温が冷えるのを感じた。
「怖がらせちゃったかな。本当にごめんね」
あの蛇は何ですか、とわたしは訊いた。涼しげな彼は、淡々と答える。
「あれは、撮影用のセット。ただのハリボテ」
あなたは何ですか、と訊いた。
「ぼく? ぼくは俳優だ」
あなたがたはなんですか、と訊くと、三人が同時に肩をすくめる。
銀髪の男が髪をかき上げながらこう言った。
「ぼくらは特殊撮影研究会。特殊撮影技術の有効利用と限界に挑戦する、あくまで健全な、サークルである!」
髪をかき上げる動作と口調のうざさが相まって、銀髪の彼がかなり残念なタイプの人間であることがわかった。俳優さんは保坂、カメラマンは亀梨と名乗った。
そして銀髪の男は、名乗る前に胸を張った。
「ぼくの名前は加持夏輝。エヴァンゲリオンの加持と、夏が輝くと書いて夏輝だ。ちなみにぼくはミサト派だがな。そして新エヴァは認めねえ!」
いや、エヴァンゲリオンとかミサト派とか知らねえし。つーかその銀髪、何ですか。あなたも俳優ですか。
「ぼくは俳優じゃない。プロデューサーだよ」
憮然として加持が言う。
「この銀髪は、2.5次元の世界に近づくための歩み寄りの結果だ。いわば小道具にすぎん」
……いろいろ突っ込みたかったが、不毛そうなのでやめた。
「あー、ところで」
銀髪の加持はまた髪をかき上げる。どうやらそれがかっこいい動作だと思っているらしい。オタクにありがちな勘違いだった。
「君、ぼくらの撮影に協力してくれないかな」
わたしは、早く帰りたいなー、と思っていた。


 ……加持の説明によると、本来は、もう少しまっとうな方向のビデオサークルだったという。
 しかし、彼の言う『まっとう』を常識人の『まっとう』と一緒にしてはならない。彼の言う『まっとう』な方向性とは、あくまで『視聴者として、同性愛者を対象としない』という意味であり、決してわいせつでないという意味ではない。要するに、加持の中では保坂来ではなく女優にあの役をやらせたいという創作方針があるのだが、大人向けのビデオに出演をしてくれる女性が見つからず、仕方がないので男優を主役にし、一部の特殊な性癖をもつ男性向けのわいせつビデオを作ることになった、とのこと。
 当然だ。白い蛇に絡みつかれて嬌態を晒したい女性なんて、そうそういないのだから。出演してくれる奇特な男が一人いただけでもよしとするべきであり、加持はこれ以上被害を広げるべきではない。たまたま現場に遭遇したわたしを勧誘するなどもってのほかである。
「わたしは絶対に出ませんよ」
わたしがそう申告すると、加持は残念そうに腕を組んだ。「えー、君ならちょうどいいんだけど」
「わたしは未成年ですよ。訴えられても知りませんから」
「ダイジョーブダイジョーブ、黙ってれば君はかなり年上に見え」言い終わる前にわたしの手が華麗にチョップを決めた。
「最低です」
「ちょっと待って。ぼくの創作方針を聞いてから言ってくれ」
頭を殴打された加持は胸を張ってそう言い、『ソーサクホーシン』なる未知の単語に惑わされたわたしは、話だけ聞いておくことにした。


「特撮とセクシュアルなものの関わりと言うのは非常に密接なのだ。昭和の時代、『ウルトラマン』や『仮面ライダー』で性的な目覚めを迎えた少年は数多くいるといわれている。ウルトラマンの赤く濡れた体や、仮面ライダーの改造シーンは、女性のじょの字も知らない無垢な少年たちの心のリビドーを掘り起こすには十分すぎるエロスを含み、それでもお茶の間で堂々と放映されていた。この絶対矛盾、言いしれぬ背徳感は当時の少年たちにしか理解できないだろう。また、『キューティーハニー』や『セーラームーン』の変身シーンなども少年たちの性的衝動を呼び起こす魅力をもっていたと考えられるが、それと特撮には明らかに異なる部分がある。それは、ウルトラマンは現実に存在するスーツアクターが演じているものだが、キューティーハニーの裸体は世界のどこにも存在しない二次元であるという部分だ」
……わたしは早くも、話を聞き始めた自分を後悔していた。この後、どういう風に論理が着地するのか、すでにだいたい予想がついてしまう。
「二次元は確かにすごいかもしれない。そこには無限の可能性が広がっている。しかし、その可能性の正体は、実は袋小路であると言うのも純然たる事実。現代におけるEDの男性の一部は、二次元にしか欲情しないことがその原因と考えられている。二次元ばかりを愛していると、現実の女性を愛せなくなる。これは人類という種の存亡にかかわる、ゆゆしき事態であると、ぼくは考えている」
「だから特撮系AVを撮ろうと思ったんですか?」
早く話を終わらせたかったので、わたしはそう尋ねた。が、加持はそれをスルーし、演説を続ける。
「二次元のわいせつビデオや漫画の類は濫造されている。これ以上発展しようのないほど、保守的な市場だ。これ以上伸びることはないと言ってもいい。また、通常の『三次元』的アダルトビデオの市場も完全に飽和している。ところが、『ウルトラマン』で感じたエロスの根源をそのままに体現した、感動的な特撮アダルトビデオというものを、ぼくはまだ見たことがない。予算とジャンルの都合上、どうしても特撮ものというのはチープになりがちだ。そんなコスプレ同然の特撮ものでは、かつての少年たちは納得しえない。まるで本当に存在しているかのような、臨場感のある触手、怪物、そしてヒーロー。彼らはそれを求めているはずなのだ」
そこで一息ついてから、加持はきらりと目を光らせた。
言っている内容さえ隠しておけば、普通のイケメンなのに。まったくもってもったいない。資源の無駄遣いだ。
「そういうわけで、ぼくらはそんな特撮アダルトビデオ界における神になるために、こうして日夜頑張っているというわけだ」
「予算はあるんですか?」
「ふっふっふっ! 聞いて驚け。ぼくの父親は株式会社KJの社長なのだ」
KJは、夕方に放送するアニメや児童向け特撮の開発を担当している会社だ。そういうものに興味がないわたしでも、一応名前くらいは知っている。そこそこ大きい、有名な会社である。まさか、その社長の息子が、銀髪をかきあげながら、こんなところでバカ丸出しな演説をしているとは誰も思うまい。わたしは尋ねた。
「では、加持さんはお金持なのですか」
「いや、ぼく自身は貧乏学生だ。ただ、使い終わった特撮のセットを一部、譲り受けているから、特撮のセットに関しては金がかからないという寸法。いわゆるエコだ」
……この人、番組を見ている子供たちが知ったら、かなりショックを受けそうなことを自分がしていると気付いているのだろうか。夢見る大人たちのために働くのは勝手だが、夢見る子供たちの夢を壊しては元も子もない。
「撮影機材や人件費はすべて実費。なんとか男優だけは見つけられたが、残りの予算では女優を雇えない。ぼくらの理念に賛同してくれる、この深遠なテーマを理解する女優とも巡り会えない。結果として、野郎向けのAVを作っているというのが現状だ。これは非常にまずい。ターゲットが狭すぎて売り上げが望めなさすぎる」
加持はそう言ってため息をつき、ちらっとわたしを見た。そんな捨てられた子犬のような目をしても、わたしはわいせつビデオに出演したりはしない。よくわからないけど、そういうのってナントカ法とかナントカ条例とかに引っかかるのではないだろうか。
「まあ、出演はしてくれなくてもいいや」
と、加持はあっさり引き下がったように見えたが――実は、引き下がってなどいなかった。
「君、名前は?」
「園田ユカです」
「園田か。ファイズのヒロインと同じ名前だね。ぴったりだ」
理解できないことをさらりと口にしてから、加持はこう言った。
「園田さん。ぼくらのサークルで、アドバイザーをしてくれないかな」
「はぁ?」
「ぼくらは、作品にふさわしい女優を探していた。単純に出演をオーケーしてくれるだけの女優ではだめだ。ビデオを見るのは男性だけかもしれないが、男性のみの狭い視点で作られた作品は、狭いものになりがちだ。ぼくらは、ぼくらと同じように作品を冷静に見、批評してくれる女性を求めていた」
「どっちにしろ、わたしはアダルトビデオなんて見ません。未成年ですから」
「いやいや、ちょっと待ってくれ。別に見てくれなくてもいいんだ。ただ、そこにいてくれればいい。漫画の中の野球部にはかわいいマネージャーがいるけど、彼女は練習には参加しないだろ?」
「いやです。ていうか、それは野球部のマネージャーに失礼だと思います」
「君の言う条件はすべて飲む。ギャラが必要なら出す。撮影風景は絶対に君には見せないと約束してもかまわない。だからさあ、頼むよお」
途中までは毅然としていたのに、後半は泣き顔になっていた。加持夏輝、演技が下手すぎる男である。ああ、だから男優じゃなくてプロデューサーなのか。妙に納得した。
「そこまでして、わたしを勧誘するのはどうしてですか?」
「月影千草が、北島マヤを初めて見た瞬間の感覚を、君は理解できるか?」
どこかで聞いた名前だ、と思ったが、よくよく考えるとそれは、漫画の登場人物である。『ガラスの仮面』だ。漫画好きの友だちに借りたことがある。主人公の名前が北島マヤ、主人公の師匠の名前が月影千草。
「唯一無二の恐るべき才能を目にしたとき、人は何も言わずに震えるだろう。そして、その才能を自分の元だけにとどめておきたいと思う。どんなことをしてでも、引きとめる。ぼくが君に感じた才能の片鱗は、いわばそういうものだってことだ」
「信用できかねますね。あなたに下心がないと、どうやって証明するのですか?」
「うーん、それはそうだな」
君は頭がいいね、と加持は呑気そうに言った。
「そもそも、わたしの才能ってなんですか。演劇部員でもないのに」
「なんかさー、ビビっ!ときたんだよね。自分でもよくわかんないんだけどさ」
「何がビビっ!なんですか」
「女優としての才能。脚本家としての才能。あるいは、カメラの撮影の才能。もしかしたら、会社を立ち上げる才能かもしれないし、ビデオには全く関係ない才能かもしれない。なんだかよくわからないけど、オーラを感じたんだよ」
「そんな曖昧なこと言われても、困ります」
「ぼくもわりと困ってる。あえてたとえるなら、これは直感だ。仮面ライダーが初めてベルトを手にした瞬間、それを腰に巻いてポーズをとり、颯爽と『変身!』と叫んでしまうような、そんな直感だよ」
「そんな局地的な直感は知りません」
と言いつつ、わたしはちょっと揺らぎ始めていた。加持夏輝がどうしようもないオタクであることがわかると同時に、加持が嘘をつけない不器用な男であることも、なんとなくわかってきた。下心があって引きとめているのなら、もう少しそれっぽい感じになるのではなかろうか。
それに、才能があるなんて言われたのは初めてだった。
これまで、平凡すぎるほど平凡な人生を送ってきた。
全然、ぱっとしない女の子だった。特技も趣味も特になくて、誰からも特別に扱われたことはない。
そんなわたしが――こんな風に人に必要とされるのは、初めてだった。
……必要とされるまでの理屈が、見えなさすぎるけど。
「ねえ、ぼくからもお願いしていいかな」
――と、唐突に言葉を発したのは保坂来だった。雰囲気のある美男子だが、どこか中性的な印象を覚えるのは、先ほどの撮影を見てしまったからだろうか。
「加持くんはこう見えても、直感だけは鋭い男なんだよ。ピノを食べたらいつも星型のが入ってるくらい」
……それは直感とは関係ないのではないか。
「撮影には絶対付き合わせないし、変なこともしない。何かあれば、株式会社KJに苦情の電話をして、『おたくのバカ息子がアホなことをしています』って報告するからさ、ぼくが」
「ユカちゃんじゃなくておまえが電話するのかよ!」
加持は勢いよく突っ込みを入れ、保坂と二人でけらけら笑っている。ダメだこの二人、脳のレベルが明らかに成人じゃない。中学生だ。二人ともイケメンなのに、そういう意味ではまったく興味がわかない。あと、どさくさにまぎれて下の名前で勝手に呼んでいるあたり、ちょっと調子が良すぎるような気もする。
「でも、いきなりこんなこと言われても、信用できるわけないって思いますけど。三人の男に囲まれて、っていうシチュエーションにも問題があると思われますし」
そう言ったのは亀梨敬太だった。落ちついた口調でそう言う彼が、妙に常識的に見えた。
「あっ、そうか! そうだよな!」
ようやく気付いた、と言いたげに加持が叫んだ。
「ぼくは三次元の女性というものを知らなさすぎる。そうだ、こんな風に迫られたら、女性は不安になるものなんだ」
「加持くん、君は今、園田さんにとても冷たい目で見られているよ」
保坂が冷静にそう指摘し、加持はわたしの方を向いて照れ臭そうに笑った。
「あ、えっと……その、今の独り言は聞かなかったことにしてくれ」
……なんとなく、出演してくれる女優が見つからない理由がわかったような気がした。加持夏輝はおそらく、口では理論を並べているものの、実際は本物の女性には接したことがない、ただの童貞オタクなのだ。そんな男が主催しているアダルトビデオ撮影サークルなんて、ちょっと胡散臭いというか、信用できない。自分がそういう系の女優業を営んでいたとしても、わたしならそんなサークルには入らない。カメラを回している亀梨が童貞であるのならともかく、男優やプロデューサーが童貞であるというのは、サークルにとって致命的な欠陥だ。
 そこまで考えて、わたしはちょっとだけ、このサークルに興味がわいてしまった。自分が参加したいというのではもちろんないけれど、どうしようもない欠陥を抱えたまま、彼らはどこへひた走って行くのか。その行く末が、気になる。
「どうしても園田さんを勧誘したいのでしたら、しかるべき安心を彼女に与えるべきであると思います」
亀梨はそう言ってわたしの方をちらっと見たけれど、目は合わせなかった。彼も、加持と同種の人間かもしれない。その横顔を見ながら、ぼんやり思った。
「ええと、そう、身分証のコピー。ぼくの運転免許証をコピーして、ユカちゃんにあげる。何かあったらそこに連絡してもらうように、ご両親にもお伝えして……」
加持はどこか一生懸命な様子でそう言って、わたしの方を見た。許しを乞うような、イタズラをした少年のような顔だった。わたしは、思わず笑ってしまった。
「……両親に了解をもらえたら、わたしは参加してもかまわないです。もちろん、怪しげなサークルだと伝えたら、両親には拒否されると思うので、そこはうまくごまかしておくべきだと思いますけど」
「は?」
わたしがそんな風に了解を出すとは思わなかったのか、加持が素っ頓狂な声をあげた。
「ほんと? ほんとにいいわけ?」
「別にかまいません。加持さんに下心がないのでしたら」
「ない!ないよ下心!全然ない!」
必死に主張する加持の子供じみた表情は、とてもうらやましいものに思えた。彼がこういう人間として生きているのは、やっぱり特撮という子供の世界を今も愛しているからなのだろうか。大人になれない精神を、大人の体の中で燻らせて。それでもなお、楽しげに生きている彼のことが気になって仕方ないのは――わたしの子供じみた好奇心のせいだろうか。きっとそうだ……と考えながら、わたしは笑んだ。
 ――奇妙に歪んだ、おかしな三人の仲間たちとの日々は、こうして始まった。




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投稿用に作った話なんですが、こんなの投稿しても許してくれる場所がなさそうなのでこちらにサルベージ。
ほのぼの青年×少女な方向で行きたい感じです。