彼の服の裾が、風ではためいている。雲ひとつない青空と、彼の桃色の対比がきれいだ。
「お願いしたいことがあるのです」
「なにかね。わたしは高いぞ」
「もちろん、『殺し』をです」
 震える声で、わたしはそう告げる。大変なことをしているのはわかっている。でも、止められない。
「今年は『殺し屋さん20周年キャンペーン』で半額セールを実施中だ。そして、きみの目はとても美しい。3000万ゼニーでどうかね」
「お金なら持ってきました。どうしても、あの人を殺してほしいのです」
「よろしい」
 わたしがターゲットの名を告げると、彼が満足げに笑った。以前見たものと同じ顔だった。その表情を見るためだけに、わたしはここまでやってきてしまった。あの日も、彼の服の裾はとても軽快に風でひらひらとしていて、そして、彼は人を殺した。……わたしの父を、殺してくれた。もう、わたしには殺したい人はいない。でも、会いたい人ならいた。桃白白。わたしの恩人にして、最強の殺し屋だ。



もういちど

20211128
文庫本1ページにおさまるサイズで、という縛りで書きました。