I wanna be your GOD.
「カイセちゃん、今週のあのアニメ見た?もう絶体絶命って感じだったよね」
「まだ見てないけど、先週からずっとそうだよね」
「どうなっちゃうのかなー。来週が楽しみ」
それは、ここ最近繰り返されている、似たような、実りのない会話だった。
しかし、実りのない会話というのはすばらしい。何も考えなくていいし、適度に活用すれば人間関係は好転する。
「実り」というのは他人の心を大きく動かす「何か」だ。
誰かとの対話によって心が大幅にプラスに動く現象を、私はあまり肯定的に捉えられない。
というのは、たとえば世の中で「いい話!」とか「泣ける!」とか云われる物語、あるいは名言のようなものがある。それらは明らかに誰かの心を動かしている。が、そういうものに自分が感動したことというのはあまりない。むしろ、「え、こんなもので?」と思ってしまうようなチープなもののほうが多い。私にとっては自分のマイノリティ性を確認するための道具でしかないのであって、そういう「泣ける!」なんてのはもううんざりだ。
誰かが知ったような顔で言う「いい言葉」も、別の誰かを感動させてはいるけれど、同時にその場にいる誰かの劣等感を刺激している可能性がある。そんなことを逐一気にしていたら生きてはいけないが、心のなかで舌打ちするくらい、許してほしい。
そもそも、募金箱の存在にすら疑問を呈するような私だから、こういう形でひねくれているのは仕方がない。
ところで……今話していた彼女は、去年、院に入学してからできた知人である。私も彼女も今年で卒業。今はふたりとも修士論文を書いている。
他の学校の場合はどうだかよく知らないが、私の通う大学の院は狭い。偏差値も低いし、意識も低い。だからこそ気楽である。私も彼女も、やりたいことをするために入学してきて、やりたいことをしている。
しかし、狭い人間関係、そして研究者特有の狭い心ゆえ、この場所には軋轢が多い。自分の研究しか見えていないために視界が狭くなっている教師はそこそこいるし、そうでない教師たちは飲み会が大好きで、たむろして酒を飲んでは「明日授業したくないな」などと言ったり、その場にいない学生や教師の悪口を言ったり。たまに、見解が合わずに喧嘩をしたりしている。私の価値観に照らすと、どっちもどっちである。ぶっちゃけた話、このような特殊な場所にはおかしい人間しかいないのだった。おかしいからこそ楽しいし、おかしいからこそ衝突する。やりたいことをして生きる人間は、自己中心的である。きっと、やりたくないことをして大衆に同化して生きている人間よりも、彼らは理不尽である。どちらが悪であるわけでもなく、ただそういう風にできているという話だ。
+++
さて、そんな「実り」のない会話のなかで、私はいくつかの噂を入手した。
どこの学校にも噂はある。というか、人間がいるところには必ず噂が存在する。
私は基本的にひきこもりのオタクであるため、彼女以外に友人はほとんどいないのだが、彼女はそこそこの情報通で、噂にも精通している。いろんなところから集めてきた噂を、別の誰かに教えることで、彼女はこの学校で一定の人間関係を手に入れるのだろう。参考までに、私が聞きかじった噂をここにメモしておこう。
一つ目。図書館の地下には幽霊が住んでいる。どこかひんやりとした空気なのは霊がいるからで、普段人が寄り付かないのも、悪い霊の影響である。昔火葬場だったので、成仏できぬ霊がいまだ巣食っているのだ。
二つ目。夜の部活棟には近づかない方がいい。部活棟の廊下は非常に長く先の見えないスペースなのだが(私は部活に入っていないためこの廊下は見たことがない)、夜になると猿のような幼児がものすごいスピードで走り抜けていくのだという。部室の中にいてもその足音だけは聞こえ、足音は廊下の行き止まりまで進んだところでふっと途切れる。
三つ目。校庭にある大きな樹の下は霊の集まる鬼門であり、ここに近づいた人間は霊の影響下に置かれる。どのような影響が出るのかは不明だが、ここに近づいたために自殺に追い込まれた人物がいるという。精神を極限までマイナスに追い込む非情な悪霊がいるため、このような現象が起こるのだ。
四つ目。図書館に近い教室棟には女の幽霊が出る。昔この学校で自殺した女性の霊なのだが、詳細は不明。夜にこの教室棟で集会を開いたりすると、男性しか集まっていなくても女性の声がする。気味悪がって、みなこの棟で肝試しはしなくなったとか。
五つ目。ここで少しテイストが変わるが、先ほど述べた大きな樹の下は絶好の告白スポットでもある。この樹の下で告白をすると必ず成功し、その後もずっと別れずにいることができる。
六つ目。この話は一つ目の噂とリンクする。図書館の地下は霊の噂があるせいで人が寄り付かない。それで、どの時間帯でも人気がない。地下には自習用の机が三つほど置かれているので、他の自習場所が埋まってしまうテスト前などは、この地下の自習机を使うとよい。もちろん、霊に祟られるかもしれないので、自己責任で。
――七個あれば「七不思議」として取りまとめられたかもしれないが、残念ながら私の得た情報はこれだけである。もちろん、六つ目は特に「不思議」ではなく事実なので、実質、五個しかないのだが。
さて、ここで、なぜか私は次のような感想を抱いたのである。
噂は派生して次の噂を生むものである。それは噂というもの全般に言える性質であり、私が得た数少ない噂の中でも、「図書館」に関するものが二つ、「校庭の大きな樹」に関するものが二つ……と、同じスポットにまつわる異なる話がある。これらも、どこかで枝分かれして派生した大きな流れの中の一部なのだといえなくもない。だが。
「図書館の噂」と「校庭の大きな樹の噂」は、少し色味が違う。「図書館の噂」は、「悪霊がいる」という風評と「そういう風評があるから人がいない」という現実がきちんと噛み合っている。何の矛盾もない。しかし、「大きな樹の噂」は「悪霊がいる」のにも関わらず「告白が成就する」というのだ。これはおかしくはないだろうか。別の人物が流した別の噂であるから食い違うのかもしれないが、このような正反対の内容の噂が両立することは不思議である。
ここで、私の中の好奇心が目をさましてしまった。私はこの大学にやってきたばかりなので、まだ校内には行ったことのない場所がたくさんある。六つの噂の舞台の中で、実際に行ったことのある場所は図書館に近い教室棟だけであるし、行ったのは昼間だったので霊に遭遇することはなかった。この「大きな樹の下」にも行ったことはない。「図書館の地下」にもだ。まず、これらのスポットに実際に訪れてみようじゃないか。
もう大学生でもないのに大人気ないと思われるかもしれないが、私は単身、「校内探索」を始めることにした。
+++
最初に、とりあえず「図書館の地下」に行ってみようと思い立った。
一番行きやすく、「夜」という時間の縛りもない。
図書館に入ると、学生たちが静かに自習をしているところだった。勉強するつもりもないのに来てしまって少し心苦しいが、自習している生徒たちの間を通り抜けて、地下へと続く階段を目指す。
確かに、空気は冷たい。そこは噂通りである。地下にあるのは需要の少ない中国書と大型書籍なので、霊がいなくても人が少ないのは必然であるが、空気が冷たく、どこか不穏なのは霊の存在に結び付けられそうだ。
私は地下の本棚の林の中へと踏み込んでみる。本棚は非常に高く、私の背よりも大きい。それが林立しているので、視界は非常に狭い。人間を霊と見間違えることもありそうだ。と思っていると、
「あ」
と声がした。霊か、と身構えたが、茶髪の男子だ。面識はないが、どこかで見たような顔。
「わ、びっくりした。霊かと思いました」
と屈託なくわらう彼も、やはり私と同じ想像をしたようだ。ただ、彼の手元を見ると、中国書を何冊か持っていたので、私のような目的で来たわけではなさそうだった。それらの本の一番上には、そのまま貸出に向かえるようにするためだろうか、図書の貸出カードが載っていた。一瞬だったが、「青木」と書いてあるように見えた。彼はニッコリ笑ってこう言った。
「いやー、怖いですよね、ここ。人が寄り付かないのもわかりますよ」
私は苦笑いしながら、そうですねと応じた。
+++
図書館の地下は本当に人気がなく、温度が低くて不気味、ということは確認できたが、特に霊的現象は起きなかった。もしかしたら青木という男子は幽霊かもしれないが、茶髪で中国書を持った幽霊なんて、なんとなく締まらないし、足はあったので違うだろう。
次は、「大きな樹の下」に行ってみようかと思う。理由は、やはり「夜」でなくても怪奇が存在すると噂で明言されているからで、ぶっちゃけた話、「夜」でないと怪奇が発生しない部活棟にはあまり行く気が起きなかった。そもそも、夜の部活棟なんて、霊がいなかったとしても、夜遅くまで飲んで騒いでいるサークル員たちしかいないであろう。そんなところに、ほぼ新入生である私が一人で乗り込んでいくなんて無理だ。夜でなくてもあまり行きたくないかもしれない。
……と考えながら、図書館から引き返そうとしていると。
「あれー、カイセちゃんじゃん。やっほー」
声をかけられて振り向くと、噂をくれた友人だった。
「図書館に来るなんてめずらしいね。今って課題出てたっけ?」
「出てないよ」
最低限の受け答えだけをして、私はそそくさと退散した。
校庭の樹の噂を確かめに行かなくてはならない。
+++
校庭に行ったことのない私に、「どの樹が噂の樹なのか」がわかるのかどうか不安だったのだが、行ってみると一目瞭然だった。明らかにひとつだけ、巨大な樹がある。いったいいつからここにあるのだろうか、と思ってしまうほど、大きな樹。
しかしながら、私はこのいわくつきの樹の下に行って、自分の精神が崩壊するかどうかを試すことはできなかった。
なぜなら、そこにはすでに先客がいたからである。
しかも、二人も。
遠くから見ただけで、その二人は異様だとわかった。
異様というのは言いすぎかもしれないが、世に言う「修羅場」というやつではないかと思う。
だが、先ほど友人に遭遇したときのように、しっぽをまいて逃げ出そうという気にはならなかった。その二人を遠くから見ていると、まるで映画のワンシーンのようにドラマティックで、震えそうになったのだ。
一人は女の子で、ショートカットだった。彼女は樹の下に座って、顔を隠して泣いていた。遠目でも泣いているのがわかるほどの嗚咽が痛々しい。何があったのかは分からないが、もしかすると噂通り、「樹にとりついた霊のせい」なのかもしれない。だとしたら、私はちょうどいいところに通りがかったのかもしれない。不謹慎だが、そう思う。
もう一人は男子だったが、風貌からしてただものではなかった。スキンヘッドなのである。大学生なのだから多少はっちゃけても許されるのかもしれないが、見ようによってはヤクザのようだった。目つきもなんだか悪い。彼は、彼女と背中を合わせるような格好で、樹に寄りかかっていた。
彼女からは彼の姿が見えないらしい。樹の幹が太く、ちょうど背後に人が一人隠れられるようになっているのだ。もちろん、どちらかが動けばまるわかりだろうが、彼女は泣くのに必死になっていて、背後に彼がいることに気づいていない。私はそんな二人を真横から眺めている形だ。泣きつづける彼女と、それを守るように背中を合わせた彼と。
二人から視線を外すことができない。さっさと立ち去るのがマナーかもしれない。
でも、この先いったいこの二人がどうなるのか、気になったのだ。
先に動いたのは男子のほうだった。というか、彼は私の視線に気づいてしまったのだ。大事な秘密を見られてしまった、というバツの悪そうな顔をして、こちらへ走ってくる。私に何か言う気ではないかと身構えたが、彼はそのまま私の横を通りぬけようとした。
そのとき、彼が何か祈るように言った。
はっとした。それは私の名前だった。いかにも恐ろしい風貌の彼が、私の名前を知っていたという事実に驚いて、私は思わず言ってしまった。「なんで私の名前知ってるの?」
+++
「は?」とスキンヘッドの彼は解せなさそうな顔をした。お前誰だよ、という表情である。当たり前だった。私は彼に会ったことはない。こんな印象的な風貌、一度見たら忘れるはずがない。さっきの茶髪の男子はどこにでもいそうなイケメンだったが、スキンヘッドの男子なんてのは、それに比べて、そうそういないはずだ。
「今、私の名前を言ったでしょう。カイセ、って」
「あなた、あいつの親族かなにかですか。教えて下さいよ、あいつに何が起きたのか」
と彼が深刻な顔で問いかけたが、意味がわからない。首を傾げるしかなかった。なぜなら、
「カイセ、というのは、私の下の名前ですよ。来栖川貝瀬。それが私の名前です。大学院一回生です」
その答えで、ああ、と彼はようやく合点したようだった。
「勘違いしてすいません、僕は学部の一年生の松浦かなめといいます。樹の下にいるのが、貝瀬理恵。彼女は、サークルの同期生です」
再びバツの悪そうな顔になった彼だったが、私は「貝瀬」などというなかなかない名前を持つ人間が自分以外にもいたという事実にびっくりしてしまった。いわゆる「DQNネーム」というやつではないかと思っていたのだが。いや、その呼称は苗字には適用されないか。
成り行き上、松浦と名乗る彼から、少し話を聞くことになった。まあ、記憶するほどの話ではなかった、とだけ言い添えておこう。私は他人の話には興味がない。こんなところで修羅場を演じている男女の個人情報など知りたくもない。
常に冷徹でありたい。誰にも深入りしたくない。それは私の常日頃からのスタンスだ。だからこそ、私には友達と呼べる存在がほとんどいないのだろう。
人間関係はギブアンドテイクなのだ。
誰にも何も与えない私は、そもそも関係を作れない。
ぐずぐずと崩れていくだけだ。
せいぜい、つまらない噂に飛びつくくらいしかできない。
モブキャラにしかなれないというのが、私の特性で、因果なのだろう。
……ただ、私にはどうしても気になっていることがあった。
それだけは確かめておきたいと思い、私は彼に問いかけた。
七不思議の話だ。
彼の知っている七不思議。
その内容は、私の知る七不思議とどう違っているのか、知りたかった。
「七不思議……ですか」
こんな大事なときに、何を言うのだ、と言いたげな、憮然とした顔になる松浦。
しかしこれは私にとっては何よりも大事なことなのだ。
そう言い足したところ、彼は渋々七不思議の話をしてくれた。
音楽室のピアノの中には、死体の指が入っている。
校庭に落ちているキャッチャーミットの呪い。
漫画研究部にあるふしぎなフィギュアの持ち主の物語。
軽音楽部に伝わるある陰惨な風習の話。
「監視カメラ設置中につき立入禁止」という但し書きがあるのに、どこにも監視カメラは見当たらない、校門裏口にまつわる話。
夜、人間ならざる見回りのおじさんがまわってくるという話。
そして最後に、図書館の地下には亡霊がいる、という話。
私の知る七不思議とは、一個しか合致しなかった。私はやはり狭い人間だったのだろう。学年が五つも違えば、当然コミュニティ内の人間の層も違う。噂もまったく違うものが伝わっている。自分の狭い情報源の中からつまらない推論を組み立てた私は愚かであろう。しかし、今問題なのは私のことではない。目の前にいる彼のことだ。
彼が嘘をついていないのだとしたら、彼はまだ知らないということだ。
この校庭の樹にまつわるふたつの言い伝えを。
「告白すれば成功する」か、「悪霊に取り憑かれる」か。
そんな二択を迫られているかもしれないということに、彼は気づいていない。
私が知っている噂を彼が知らないということが、なんだかひどく愉快に思えた。
私は彼にこう言った。
「泣いている彼女の元へ、もう一度行ったほうがいいかもしれないよ。私は常日頃、他人の事情に介入するおせっかいな人間は大嫌いなんだけれど、でも、今回は、彼女と私はたまたま同じ名前だったから。なんだか運命を感じて、放っておけないと思ったの。彼女、きっとあなたのことを待っていると思うから。もう一度、話してみたほうがいいよ。あなただと伝える必要はない、話すのが無理ならそっと見守るだけでもいい。それが、今のあなたのやるべきことじゃないかと、僭越ながらモブキャラの私は思うよ」
よくもまあそんな嘘八百が並び立てられたものだ。
『運命を感じて?』
『放っておけなくて?』
馬鹿な。
くだらない。
でも、表向きはそういうことにしておこう。
そして、彼のメールアドレスを聞いておいた。
彼は足音をたてないようにしながら、樹の下でいまだ泣いている彼女のもとへと向かっていった。
それを見送りながら、私は考えていた。
彼女と彼は、いったいこれからどうなってしまうのだろうか。
悪霊に取り憑かれてしまうのか。
それとも、一転して幸せなカップルになってしまうのか。
くだらないと思われるかもしれないが、私は噂の真偽をどうしても知りたかった。
他人のことなんてどうでもいいと思う、モブキャラの私でも、興味のあることはある。
それは、誰かが生み出して無責任に連鎖していく『噂』という集合体には、どんな力が備わっているのか、ということ。
私という関係のない他者が、彼の背中を押した。
彼はそれを受けて、樹の下へと戻る。
樹の下に、男女が揃う。
噂と同じシチュエーションの中で、二人が何かしらのアクションを起こす。
そして、その先は……?
他人のことには興味がない、と書いた。
モブキャラにしかなれない、とも書いた。
興味があるのは『噂』だけだ。
だから、この先、私はあの二人の物語には介入しない。名前すら登場しないかもしれない。
でも、物語の結果だけはメールで教えてもらおう。詳細はいらない、結果だけあればよい。
『噂』がどんな方向へ向かうのかを知ることだけが、今の私にとって大切なことだった。
私は大学院生だ。ひよっこではあるが、研究者だ。研究者とは、爆発しそうなほどの知的好奇心を抱えて生きているものだ。私の好奇心のベクトルは今、間違いなく彼と彼女と、『噂』へと向かっていた。
さて、そろそろこのくだらないレポートは終了するが、これを読んでいるあなたは私を異常だと思うだろうか。
人間関係を構築せず、狭い知識しか持たないくせに、好奇心だけを満たすために生きる。そんな生き方を否定したいと思うだろうか。
それならそれでいい。
ただ、ひとつだけ覚えていてほしい。
人生なんてものは、長すぎる実験小説にすぎない。
樹の下の彼と彼女は私のモルモットだったかもしれないが、そんなことは珍しいことではない。
あなたの人生だって、誰かにモルモットとして使われているかもしれない。
モルモットになりたくないのなら、あなたは選ぶしかない。
『研究者』として実験動物の上に君臨するか。
『実験』だなんて言わせないように、巧妙に自らの手で人生をコントロールするか。
もしもそれらの企みがうまくいったなら、以下の宛先にメールを送ってほしい。
私の研究に、あなたを役立てるためである。
多額の報酬と、最高の待遇をお約束しよう。
その代わり、あなたの人生はサンプルとして利用させていただこう。
さあ、始めようか。
終わりの見えない実験小説。
あなたの人生を、改めて、また、ここから。
大学院二年 社会学研究科心理学専攻 来栖川貝瀬
連絡先:kurusugawa-k@dot.co.jp
20130325
「まだ見てないけど、先週からずっとそうだよね」
「どうなっちゃうのかなー。来週が楽しみ」
それは、ここ最近繰り返されている、似たような、実りのない会話だった。
しかし、実りのない会話というのはすばらしい。何も考えなくていいし、適度に活用すれば人間関係は好転する。
「実り」というのは他人の心を大きく動かす「何か」だ。
誰かとの対話によって心が大幅にプラスに動く現象を、私はあまり肯定的に捉えられない。
というのは、たとえば世の中で「いい話!」とか「泣ける!」とか云われる物語、あるいは名言のようなものがある。それらは明らかに誰かの心を動かしている。が、そういうものに自分が感動したことというのはあまりない。むしろ、「え、こんなもので?」と思ってしまうようなチープなもののほうが多い。私にとっては自分のマイノリティ性を確認するための道具でしかないのであって、そういう「泣ける!」なんてのはもううんざりだ。
誰かが知ったような顔で言う「いい言葉」も、別の誰かを感動させてはいるけれど、同時にその場にいる誰かの劣等感を刺激している可能性がある。そんなことを逐一気にしていたら生きてはいけないが、心のなかで舌打ちするくらい、許してほしい。
そもそも、募金箱の存在にすら疑問を呈するような私だから、こういう形でひねくれているのは仕方がない。
ところで……今話していた彼女は、去年、院に入学してからできた知人である。私も彼女も今年で卒業。今はふたりとも修士論文を書いている。
他の学校の場合はどうだかよく知らないが、私の通う大学の院は狭い。偏差値も低いし、意識も低い。だからこそ気楽である。私も彼女も、やりたいことをするために入学してきて、やりたいことをしている。
しかし、狭い人間関係、そして研究者特有の狭い心ゆえ、この場所には軋轢が多い。自分の研究しか見えていないために視界が狭くなっている教師はそこそこいるし、そうでない教師たちは飲み会が大好きで、たむろして酒を飲んでは「明日授業したくないな」などと言ったり、その場にいない学生や教師の悪口を言ったり。たまに、見解が合わずに喧嘩をしたりしている。私の価値観に照らすと、どっちもどっちである。ぶっちゃけた話、このような特殊な場所にはおかしい人間しかいないのだった。おかしいからこそ楽しいし、おかしいからこそ衝突する。やりたいことをして生きる人間は、自己中心的である。きっと、やりたくないことをして大衆に同化して生きている人間よりも、彼らは理不尽である。どちらが悪であるわけでもなく、ただそういう風にできているという話だ。
+++
さて、そんな「実り」のない会話のなかで、私はいくつかの噂を入手した。
どこの学校にも噂はある。というか、人間がいるところには必ず噂が存在する。
私は基本的にひきこもりのオタクであるため、彼女以外に友人はほとんどいないのだが、彼女はそこそこの情報通で、噂にも精通している。いろんなところから集めてきた噂を、別の誰かに教えることで、彼女はこの学校で一定の人間関係を手に入れるのだろう。参考までに、私が聞きかじった噂をここにメモしておこう。
一つ目。図書館の地下には幽霊が住んでいる。どこかひんやりとした空気なのは霊がいるからで、普段人が寄り付かないのも、悪い霊の影響である。昔火葬場だったので、成仏できぬ霊がいまだ巣食っているのだ。
二つ目。夜の部活棟には近づかない方がいい。部活棟の廊下は非常に長く先の見えないスペースなのだが(私は部活に入っていないためこの廊下は見たことがない)、夜になると猿のような幼児がものすごいスピードで走り抜けていくのだという。部室の中にいてもその足音だけは聞こえ、足音は廊下の行き止まりまで進んだところでふっと途切れる。
三つ目。校庭にある大きな樹の下は霊の集まる鬼門であり、ここに近づいた人間は霊の影響下に置かれる。どのような影響が出るのかは不明だが、ここに近づいたために自殺に追い込まれた人物がいるという。精神を極限までマイナスに追い込む非情な悪霊がいるため、このような現象が起こるのだ。
四つ目。図書館に近い教室棟には女の幽霊が出る。昔この学校で自殺した女性の霊なのだが、詳細は不明。夜にこの教室棟で集会を開いたりすると、男性しか集まっていなくても女性の声がする。気味悪がって、みなこの棟で肝試しはしなくなったとか。
五つ目。ここで少しテイストが変わるが、先ほど述べた大きな樹の下は絶好の告白スポットでもある。この樹の下で告白をすると必ず成功し、その後もずっと別れずにいることができる。
六つ目。この話は一つ目の噂とリンクする。図書館の地下は霊の噂があるせいで人が寄り付かない。それで、どの時間帯でも人気がない。地下には自習用の机が三つほど置かれているので、他の自習場所が埋まってしまうテスト前などは、この地下の自習机を使うとよい。もちろん、霊に祟られるかもしれないので、自己責任で。
――七個あれば「七不思議」として取りまとめられたかもしれないが、残念ながら私の得た情報はこれだけである。もちろん、六つ目は特に「不思議」ではなく事実なので、実質、五個しかないのだが。
さて、ここで、なぜか私は次のような感想を抱いたのである。
噂は派生して次の噂を生むものである。それは噂というもの全般に言える性質であり、私が得た数少ない噂の中でも、「図書館」に関するものが二つ、「校庭の大きな樹」に関するものが二つ……と、同じスポットにまつわる異なる話がある。これらも、どこかで枝分かれして派生した大きな流れの中の一部なのだといえなくもない。だが。
「図書館の噂」と「校庭の大きな樹の噂」は、少し色味が違う。「図書館の噂」は、「悪霊がいる」という風評と「そういう風評があるから人がいない」という現実がきちんと噛み合っている。何の矛盾もない。しかし、「大きな樹の噂」は「悪霊がいる」のにも関わらず「告白が成就する」というのだ。これはおかしくはないだろうか。別の人物が流した別の噂であるから食い違うのかもしれないが、このような正反対の内容の噂が両立することは不思議である。
ここで、私の中の好奇心が目をさましてしまった。私はこの大学にやってきたばかりなので、まだ校内には行ったことのない場所がたくさんある。六つの噂の舞台の中で、実際に行ったことのある場所は図書館に近い教室棟だけであるし、行ったのは昼間だったので霊に遭遇することはなかった。この「大きな樹の下」にも行ったことはない。「図書館の地下」にもだ。まず、これらのスポットに実際に訪れてみようじゃないか。
もう大学生でもないのに大人気ないと思われるかもしれないが、私は単身、「校内探索」を始めることにした。
+++
最初に、とりあえず「図書館の地下」に行ってみようと思い立った。
一番行きやすく、「夜」という時間の縛りもない。
図書館に入ると、学生たちが静かに自習をしているところだった。勉強するつもりもないのに来てしまって少し心苦しいが、自習している生徒たちの間を通り抜けて、地下へと続く階段を目指す。
確かに、空気は冷たい。そこは噂通りである。地下にあるのは需要の少ない中国書と大型書籍なので、霊がいなくても人が少ないのは必然であるが、空気が冷たく、どこか不穏なのは霊の存在に結び付けられそうだ。
私は地下の本棚の林の中へと踏み込んでみる。本棚は非常に高く、私の背よりも大きい。それが林立しているので、視界は非常に狭い。人間を霊と見間違えることもありそうだ。と思っていると、
「あ」
と声がした。霊か、と身構えたが、茶髪の男子だ。面識はないが、どこかで見たような顔。
「わ、びっくりした。霊かと思いました」
と屈託なくわらう彼も、やはり私と同じ想像をしたようだ。ただ、彼の手元を見ると、中国書を何冊か持っていたので、私のような目的で来たわけではなさそうだった。それらの本の一番上には、そのまま貸出に向かえるようにするためだろうか、図書の貸出カードが載っていた。一瞬だったが、「青木」と書いてあるように見えた。彼はニッコリ笑ってこう言った。
「いやー、怖いですよね、ここ。人が寄り付かないのもわかりますよ」
私は苦笑いしながら、そうですねと応じた。
+++
図書館の地下は本当に人気がなく、温度が低くて不気味、ということは確認できたが、特に霊的現象は起きなかった。もしかしたら青木という男子は幽霊かもしれないが、茶髪で中国書を持った幽霊なんて、なんとなく締まらないし、足はあったので違うだろう。
次は、「大きな樹の下」に行ってみようかと思う。理由は、やはり「夜」でなくても怪奇が存在すると噂で明言されているからで、ぶっちゃけた話、「夜」でないと怪奇が発生しない部活棟にはあまり行く気が起きなかった。そもそも、夜の部活棟なんて、霊がいなかったとしても、夜遅くまで飲んで騒いでいるサークル員たちしかいないであろう。そんなところに、ほぼ新入生である私が一人で乗り込んでいくなんて無理だ。夜でなくてもあまり行きたくないかもしれない。
……と考えながら、図書館から引き返そうとしていると。
「あれー、カイセちゃんじゃん。やっほー」
声をかけられて振り向くと、噂をくれた友人だった。
「図書館に来るなんてめずらしいね。今って課題出てたっけ?」
「出てないよ」
最低限の受け答えだけをして、私はそそくさと退散した。
校庭の樹の噂を確かめに行かなくてはならない。
+++
校庭に行ったことのない私に、「どの樹が噂の樹なのか」がわかるのかどうか不安だったのだが、行ってみると一目瞭然だった。明らかにひとつだけ、巨大な樹がある。いったいいつからここにあるのだろうか、と思ってしまうほど、大きな樹。
しかしながら、私はこのいわくつきの樹の下に行って、自分の精神が崩壊するかどうかを試すことはできなかった。
なぜなら、そこにはすでに先客がいたからである。
しかも、二人も。
遠くから見ただけで、その二人は異様だとわかった。
異様というのは言いすぎかもしれないが、世に言う「修羅場」というやつではないかと思う。
だが、先ほど友人に遭遇したときのように、しっぽをまいて逃げ出そうという気にはならなかった。その二人を遠くから見ていると、まるで映画のワンシーンのようにドラマティックで、震えそうになったのだ。
一人は女の子で、ショートカットだった。彼女は樹の下に座って、顔を隠して泣いていた。遠目でも泣いているのがわかるほどの嗚咽が痛々しい。何があったのかは分からないが、もしかすると噂通り、「樹にとりついた霊のせい」なのかもしれない。だとしたら、私はちょうどいいところに通りがかったのかもしれない。不謹慎だが、そう思う。
もう一人は男子だったが、風貌からしてただものではなかった。スキンヘッドなのである。大学生なのだから多少はっちゃけても許されるのかもしれないが、見ようによってはヤクザのようだった。目つきもなんだか悪い。彼は、彼女と背中を合わせるような格好で、樹に寄りかかっていた。
彼女からは彼の姿が見えないらしい。樹の幹が太く、ちょうど背後に人が一人隠れられるようになっているのだ。もちろん、どちらかが動けばまるわかりだろうが、彼女は泣くのに必死になっていて、背後に彼がいることに気づいていない。私はそんな二人を真横から眺めている形だ。泣きつづける彼女と、それを守るように背中を合わせた彼と。
二人から視線を外すことができない。さっさと立ち去るのがマナーかもしれない。
でも、この先いったいこの二人がどうなるのか、気になったのだ。
先に動いたのは男子のほうだった。というか、彼は私の視線に気づいてしまったのだ。大事な秘密を見られてしまった、というバツの悪そうな顔をして、こちらへ走ってくる。私に何か言う気ではないかと身構えたが、彼はそのまま私の横を通りぬけようとした。
そのとき、彼が何か祈るように言った。
はっとした。それは私の名前だった。いかにも恐ろしい風貌の彼が、私の名前を知っていたという事実に驚いて、私は思わず言ってしまった。「なんで私の名前知ってるの?」
+++
「は?」とスキンヘッドの彼は解せなさそうな顔をした。お前誰だよ、という表情である。当たり前だった。私は彼に会ったことはない。こんな印象的な風貌、一度見たら忘れるはずがない。さっきの茶髪の男子はどこにでもいそうなイケメンだったが、スキンヘッドの男子なんてのは、それに比べて、そうそういないはずだ。
「今、私の名前を言ったでしょう。カイセ、って」
「あなた、あいつの親族かなにかですか。教えて下さいよ、あいつに何が起きたのか」
と彼が深刻な顔で問いかけたが、意味がわからない。首を傾げるしかなかった。なぜなら、
「カイセ、というのは、私の下の名前ですよ。来栖川貝瀬。それが私の名前です。大学院一回生です」
その答えで、ああ、と彼はようやく合点したようだった。
「勘違いしてすいません、僕は学部の一年生の松浦かなめといいます。樹の下にいるのが、貝瀬理恵。彼女は、サークルの同期生です」
再びバツの悪そうな顔になった彼だったが、私は「貝瀬」などというなかなかない名前を持つ人間が自分以外にもいたという事実にびっくりしてしまった。いわゆる「DQNネーム」というやつではないかと思っていたのだが。いや、その呼称は苗字には適用されないか。
成り行き上、松浦と名乗る彼から、少し話を聞くことになった。まあ、記憶するほどの話ではなかった、とだけ言い添えておこう。私は他人の話には興味がない。こんなところで修羅場を演じている男女の個人情報など知りたくもない。
常に冷徹でありたい。誰にも深入りしたくない。それは私の常日頃からのスタンスだ。だからこそ、私には友達と呼べる存在がほとんどいないのだろう。
人間関係はギブアンドテイクなのだ。
誰にも何も与えない私は、そもそも関係を作れない。
ぐずぐずと崩れていくだけだ。
せいぜい、つまらない噂に飛びつくくらいしかできない。
モブキャラにしかなれないというのが、私の特性で、因果なのだろう。
……ただ、私にはどうしても気になっていることがあった。
それだけは確かめておきたいと思い、私は彼に問いかけた。
七不思議の話だ。
彼の知っている七不思議。
その内容は、私の知る七不思議とどう違っているのか、知りたかった。
「七不思議……ですか」
こんな大事なときに、何を言うのだ、と言いたげな、憮然とした顔になる松浦。
しかしこれは私にとっては何よりも大事なことなのだ。
そう言い足したところ、彼は渋々七不思議の話をしてくれた。
音楽室のピアノの中には、死体の指が入っている。
校庭に落ちているキャッチャーミットの呪い。
漫画研究部にあるふしぎなフィギュアの持ち主の物語。
軽音楽部に伝わるある陰惨な風習の話。
「監視カメラ設置中につき立入禁止」という但し書きがあるのに、どこにも監視カメラは見当たらない、校門裏口にまつわる話。
夜、人間ならざる見回りのおじさんがまわってくるという話。
そして最後に、図書館の地下には亡霊がいる、という話。
私の知る七不思議とは、一個しか合致しなかった。私はやはり狭い人間だったのだろう。学年が五つも違えば、当然コミュニティ内の人間の層も違う。噂もまったく違うものが伝わっている。自分の狭い情報源の中からつまらない推論を組み立てた私は愚かであろう。しかし、今問題なのは私のことではない。目の前にいる彼のことだ。
彼が嘘をついていないのだとしたら、彼はまだ知らないということだ。
この校庭の樹にまつわるふたつの言い伝えを。
「告白すれば成功する」か、「悪霊に取り憑かれる」か。
そんな二択を迫られているかもしれないということに、彼は気づいていない。
私が知っている噂を彼が知らないということが、なんだかひどく愉快に思えた。
私は彼にこう言った。
「泣いている彼女の元へ、もう一度行ったほうがいいかもしれないよ。私は常日頃、他人の事情に介入するおせっかいな人間は大嫌いなんだけれど、でも、今回は、彼女と私はたまたま同じ名前だったから。なんだか運命を感じて、放っておけないと思ったの。彼女、きっとあなたのことを待っていると思うから。もう一度、話してみたほうがいいよ。あなただと伝える必要はない、話すのが無理ならそっと見守るだけでもいい。それが、今のあなたのやるべきことじゃないかと、僭越ながらモブキャラの私は思うよ」
よくもまあそんな嘘八百が並び立てられたものだ。
『運命を感じて?』
『放っておけなくて?』
馬鹿な。
くだらない。
でも、表向きはそういうことにしておこう。
そして、彼のメールアドレスを聞いておいた。
彼は足音をたてないようにしながら、樹の下でいまだ泣いている彼女のもとへと向かっていった。
それを見送りながら、私は考えていた。
彼女と彼は、いったいこれからどうなってしまうのだろうか。
悪霊に取り憑かれてしまうのか。
それとも、一転して幸せなカップルになってしまうのか。
くだらないと思われるかもしれないが、私は噂の真偽をどうしても知りたかった。
他人のことなんてどうでもいいと思う、モブキャラの私でも、興味のあることはある。
それは、誰かが生み出して無責任に連鎖していく『噂』という集合体には、どんな力が備わっているのか、ということ。
私という関係のない他者が、彼の背中を押した。
彼はそれを受けて、樹の下へと戻る。
樹の下に、男女が揃う。
噂と同じシチュエーションの中で、二人が何かしらのアクションを起こす。
そして、その先は……?
他人のことには興味がない、と書いた。
モブキャラにしかなれない、とも書いた。
興味があるのは『噂』だけだ。
だから、この先、私はあの二人の物語には介入しない。名前すら登場しないかもしれない。
でも、物語の結果だけはメールで教えてもらおう。詳細はいらない、結果だけあればよい。
『噂』がどんな方向へ向かうのかを知ることだけが、今の私にとって大切なことだった。
私は大学院生だ。ひよっこではあるが、研究者だ。研究者とは、爆発しそうなほどの知的好奇心を抱えて生きているものだ。私の好奇心のベクトルは今、間違いなく彼と彼女と、『噂』へと向かっていた。
さて、そろそろこのくだらないレポートは終了するが、これを読んでいるあなたは私を異常だと思うだろうか。
人間関係を構築せず、狭い知識しか持たないくせに、好奇心だけを満たすために生きる。そんな生き方を否定したいと思うだろうか。
それならそれでいい。
ただ、ひとつだけ覚えていてほしい。
人生なんてものは、長すぎる実験小説にすぎない。
樹の下の彼と彼女は私のモルモットだったかもしれないが、そんなことは珍しいことではない。
あなたの人生だって、誰かにモルモットとして使われているかもしれない。
モルモットになりたくないのなら、あなたは選ぶしかない。
『研究者』として実験動物の上に君臨するか。
『実験』だなんて言わせないように、巧妙に自らの手で人生をコントロールするか。
もしもそれらの企みがうまくいったなら、以下の宛先にメールを送ってほしい。
私の研究に、あなたを役立てるためである。
多額の報酬と、最高の待遇をお約束しよう。
その代わり、あなたの人生はサンプルとして利用させていただこう。
さあ、始めようか。
終わりの見えない実験小説。
あなたの人生を、改めて、また、ここから。
大学院二年 社会学研究科心理学専攻 来栖川貝瀬
連絡先:kurusugawa-k@dot.co.jp
20130325