Scene-03

「っつーわけなんだけどよぉ、あんたは『スタンド使い』か?」

 仗助と未起隆の助言を聞いたあと、億泰は億泰なりにちょっとだけ悩んでみたのだが、結局、少女本人に直接聞いてみることにした。
 疑惑を胸のうちに秘めつつ、バレないように本人にうまく探りを入れる……そんな器用な真似ができるのならば、それはもはや虹村億泰ではないのだ。
 というか、彼女に淡い好意を抱いている今、そんな騙すような真似はしたくない。

「『スタンド使い』というのは、超能力者のようなものですか?」

 と少女は首を傾げる。

「そうだ。たとえば、こういうやつ」

 億泰は自分のスタンドを出してみた。少女はなにも反応しない。
 ただ、未起隆も最初は反応しなかったらしいので、「スタンドに反応を示さない」からといって、「スタンドが見えていない」とは限らない。

「……わたしは超能力者ではないと思います」

 相変わらず硬質な口調で、少女は言った。

「そっか。違うならいいんだ。今までにいろいろあったからよぉ、初対面の相手は一応、疑ってみることにしてるんだわ。気を悪くしたなら、ごめんな」
「かまいません。億泰さんと話せるだけで、うれしいですから」

 少女はちょっとだけ笑ってみせる。
 普段あまり笑わない彼女だから、たまに笑っているところを見ると、こちらも笑顔になってしまう。
 その笑顔を見ただけで、億泰は有頂天になってしまった。
 彼女がスタンド使いかどうかなんて、もはやどうでもいいのではないかと思う。

「おれも、みょうじと一緒にいられるだけで、いいような気がするッ」

 小声でそんなことを言ってみたりして。
 少女はそんな億泰にこう問いかけた。

「億泰さんのお友だちは、どんな方ですか?」

 億泰は誇らしげに胸を張る。

「まず東方仗助! こいつはとびっきりかっこいいやつだけど、ちょっと悪ノリがすぎる感じかなぁ。あと、広瀬康一! 普段は頼りなく見えるかもしれないが、実は男気のあるやつなんだぜ。で、支倉未起隆っていう変な宇宙人と……」
「たくさんお友だちがいるのですね。億泰さんのお友だちなら、きっといい方なんでしょうね」

 そんな会話をしているふたりのあいだを、さらさらと春の風が吹き抜けていく。
 平和な杜王町で、新しい恋をする。
 なんて素敵な現実だろうか。闘いのただなかにあったときには考えられなかった未来だ。

 尊い友人たちと友情を育み、そして彼女と出会えた場所。杜王町。
 その存在そのものに、今、億泰はなぜか泣きたくなるほど感謝をしてしまった。

「億泰くん、きょうもありがとう。あなたと会えて、ほんとうにうれしい」

20170617