2022年4月20日の投稿[1件]



接客業をやっていると、世の中には『ちょっと変な人』や『面倒くさい人』が思っていたより多いことに気がつく。
セクハラ、クレーム、見下しは日常茶飯事。
距離感がおかしい人、自分を勝手に常連だと思いこんで傍若無人にふるまっている人、ちょっとでも注意されたらマジギレする人。いろんな人がいる。
もしかすると自分自身も、他人から見ると、そういう面倒くさい人の一面があるかもしれない。
問題は、そういう人に出会ったとき、接し方によって、自分の本性が垣間見えてしまうということだ。
そういう人がそこにいるということは、どう頑張っても覆せない。
来ないでほしいと願っても、何度でも来る。
そういう人に対して、笑顔でいつもどおりに接することもできるし、陰口を言わないこともできる。
しかし、たいていの人は、休憩室に帰ったら、その人の悪口三昧。
過度なストレスを受けたあとは、そうしないとやっていられないのだろう。
早く帰ってもらうために、わざとすこし冷たく接したりもする。
そういうときに視覚化されているのは、そのお客さんが面倒くさい人だという現実のみではなく、接客している自分の心が驚くほど狭かった、という事実でもあるかもしれない。
普段、どんなにいい人ぶっているとしても、接客者にもやっぱり醜い部分はあるのだ、と。

空気階段の「警察」はそういう人と人との距離感に目を向けたくなるコントだ。
突然、青年の家に訪れたのは、凶悪犯を探す警察を名乗る怪しい小太りの男。
しかし、どう見ても警察という服装ではない。
競馬場にでもいそうな風体だ。
そして、男がなぜこの家に来たのかが詳細に語られる。
やっぱり、行動理由のすこしおかしな人だった。
どう観察してもヤバい人なのだが、青年は追い出したりツッコミを入れたりせず、優しく聞いてあげる。むしろ不審な男に興味津々な様子だ。

やがて、この男が異常に癖が強いだけで、そこまで悪いやつではないということが視聴者にも伝わりはじめる。
行動の内容はちょっとヘンテコだし、正直迷惑な存在だけど、話を聞けば聞くほどに、彼には彼の人生があるのだということがわかる。
もっと彼の人生を知りたい。適度に離れた場所から見たい。
青年の心に、怖いもの見たさと、好奇心が押し寄せてくる……そんな気がする。

世間には、変な人には関わらないようにしようという風潮がある。
ちょっとでも「この人はヤバい」と感じたら、話を聞かずに距離を取る。
それが現代人の普通の行動だ。
でも、話を聞いてみれば、変な人にも変な人なりの人生がある。
たった一瞬だったとしても、その人とすれ違ったとき、人生が交わったとき、すこしでも優しい自分でいることができればいい。
「警察」を見ているうちに、そんな理想の優しい世界が垣間見えた気がした。
そのヘンテコな人とずっと付き合っていくほどの勇気は、もちろんないのだけれど。

#お笑い

■ハッシュタグ:

■日付一覧:

■日付検索:

■カレンダー:

2022年4月
12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930