2023年7月5日の投稿[1件]

桐谷広人「桐谷さんの株主優待のススメ」を読んだ。
優待廃止がやや流行っている昨今、優待株にはあまり興味がないので、テクニック面や銘柄紹介はあまり参考にならなかったが、メンタル面は他の株の本とは違う視点のように思えて、興味深く読めた。

基本的に、人は儲けるために株を買うので、普通の株の本には儲けるための買い方や失敗するときのパターンなどが簡素にまとめられている。
また、投資のための節約法などが書かれていることも多い。
ミスをすると大損するというリスク管理のイメージが強く、どちらかというと、クールだったりネガティブだったりするトーンになりがちだ。
損切りはきっちりすること、狼狽売りしないこと、四季報を正しく読むこと、マイボトルを持参して節約すること、固定費を見直すこと、儲けても生活のレベルは落とさないこと……などなど、あれはダメ、これはダメ、という制約の話がどうしても多くなる。

桐谷さんの本にもそういったことは書かれているのだけれど、どちらかというと「どうやって楽しく暮らすか?」という部分にかなり大きくフォーカスしていて、そこが高配当株投資やインデックス投資の本とは毛色が違う。
読者ターゲットとなっているのが定年後のサラリーマンという点も大きいのだろうが、「楽してたくさん儲ける」のではなく、「優待品で生活を豊かにする」ことが目的で、出費にことさら厳しくしたりするギスギスした感じはない。
ゲームとして優待を楽しんでいるうちに、いつのまにか出費がなくなっている、といった感じ。
こういうトーンで株の話をするのは、非常に異質。
値動きを細かく追ったり、損切りしたりすることをすべて諦めるという強気の姿勢で、ただ楽しむだけの株式投資というポジティブな投資スタイルを打ち出している。
エンジョイすることを重視しているため、お金を使わずに優待を受け取ることのできるクロス取引はしないなど、自分が気持ちよく過ごすために全力を尽くしているところもいい。
儲けだけが目的なら、クロス取引したほうがお金が減らないのだからいいじゃないか、という論調になりそうなものだけど、楽しく企業を応援することが目的だから、そういうことはしないということか。

優待には複利がないし、値動きを追わない&損切りしないのは非常にリスキーだと思うので、こういう姿勢で株と相対することは自分にはまだ考えられない。
しかしながら、株式投資をする目的は、本来はお金を手に入れるためではなくて、自分の未来をよりよくするためだったはず。
お金だけがたくさんあっても、使い道が充実していなければまったく意味がない。
そういう意味で、優待を使い倒して人生をどんどん明るくしていく桐谷さんの姿勢はすごく輝いて見えた。
配当は結局再投資に回るだけでお金以外になにも生み出さないかもしれないが、優待は届いたその日から楽しいもんなあ。

#読書

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