2023年8月12日の投稿[2件]

「だが、情熱はある」を全話見た。

こういう実話ベースのドラマが、視聴者によってどういうふうに読み解かれるかということを丁寧に分析した上で作られている、非常に計算された作品だと思った。
基本的に、存命の人物を感動ものや偉人ものとして回収されると、しらけてしまう視聴者は多いと思う。
「だが、情熱はある」は、主人公のふたりをあくまでも『たりないふたり』として扱いつづけ、青春ものでも感動ものでもなく、ただ『なにかがたりない人たちのあがき』として最後まで走っていったのがとてもよかった。
恋愛に関してあまり掘り下げなかったのも、彼らの恋愛を掘り下げることで、そこに感動ドラマや成功ドラマが発生してしまうから、あえて避けて通ったんだろうなと勝手に思う。恋愛・結婚って、世間的に見て『たりてる』ものだしなー。

それだけでなく、最終回では現実と虚構が合流していったり、「美女と結婚できたんだったらもう『足りてる』じゃねえかよ、勝ち組じゃん」「もう、人見知りじゃなくてコミュ強じゃん」という山里・若林それぞれのリアルでのアンチへのアンサーを行っているところもおもしろい。
「だが、情熱はある」の1話放映時と時間軸が合流していくところも圧巻だったなー。

あと、最後まで見て、やっぱり春日の描写があまりにも好きだった。
春日やしずちゃんにも悩みや苦しみは当然あるはずだし、彼らの人生にも若林・山里コンビと同じくドラマがあるはずなのに、そこはバッサリと切り取って、ただ明るいだけの光として春日というキャラクターを作り上げているのが、ドラマ全体を明るい空気に仕上げている。
みんなが「たりないふたり」を見ているときに、春日だけ自分の番組を見ていたくだりとか、好きすぎるよな……。

お涙頂戴の感動ドラマではなく、どん底からのサクセスストーリーでもなく、ただ足りない人たちが足りないままの状態で前に進んでいく、現実的な自己肯定の物語。
『足りない』を『足りてる』に変える、キャラクターを成長させるのが従来のドラマの在り方だけど、この作品ではそれをあえてやらずに、足りない状態をそのままに愛そうとする。その結果として、物事がうまく回りはじめる。
それを見た視聴者もまた、違う自分に変わるのではなく、今の足りない自分を愛してみようと思う。そんな希望に満ちた作品だった。

#ドラマ

青山美智子「ただいま神様当番」を読み終わった。

喉から手が出るほど欲しいものが、いつも通るバス停に落ちている。
「おとしもの」と書かれたそのものを拾って着服してしまうと、家に『神様』がやってくる。
腕には真っ赤な文字で『神様当番』と書かれてしまい、神様の言う通りにしなければ、文字を消すことはできない……という話。
どうしようもないモヤモヤや悩みを抱えている人々が、神様と出会うことでひとつの答えを見つけていく……という連作短編のハートフルストーリーで、やや低年齢向けっぽい調子の文章ではあるけど、読みやすかった。

特に、英語の非常勤講師であるリチャードの話は、バイアスや差別を対話の努力によって切り開こうとするという内容で、好きだった。
青山美智子さんの本はこれで2冊め。こちらもやっぱり、表紙の雰囲気がいい。
サクサク読めるから、もうすこし探索してみたいな。

#読書

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