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2023年8月28日
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2023年8月28日(月)
西加奈子「くもをさがす」を読み終わった。
カナダ在住の著者が乳がんになり、両乳房を切除し無事に生還するまでの闘病記。
乳がんサバイバーの話ではあるのだが、どちらかというと『乳がんになった』よりも『カナダで』というくだりがすごく丁寧に掘り下げられていて、医療や自己決定権に関する人々の考え方の違いがおもしろい。
日本人女性に生まれた頃からかけられている一種の呪いにも言及していて、「若見え」「高見え」「オバ見え」などの「他人からどう見られるか」という呪いが一生涯にわたって自分の人生や行動を蝕みつづけることの異常性の話は興味深い。
「幸せそうだなって思われたい」が「幸せになりたい」を凌駕する社会とは、いったいなんなんだろう。
移民の多いバンクーバーが、さまざまな人々にとって生きやすい場所になっている話もすごく印象的。
日本人の薬物への感覚はいまだに、「覚醒剤やめますか、それとも人間やめますか」の域を出ていないんだけど、カナダでは「薬物中毒はその人の選択ではなく、精神疾患です。差別はやめよう」というポスターが貼られているという。薬物中毒者をひとりの人間として、自分たちと同じ存在として扱っているのだ。
女性、子ども、薬物中毒者、ホームレス、生活保護者、障害者、LGBTなどなど、ちょっとでもその人たちの基準からそれていたり、普通から外れているとすぐに「人生終わってる」とか「邪魔」とか言われてしまう狭量な公共空間が構成されているのが現在の日本だけれど、どうやらバンクーバーはここまでひどくはないらしい。さまざまな人が暮らす場所だからこそ、さまざまな人を認める価値観が形成されている。
もちろん、バンクーバーのすべてが素晴らしいわけではなく、西さんも「これも偏見」と断っているけれど、日本ももうちょっとだけ、すべての人に優しい社会にならないものだろうか。
全編通して、闘病記というよりも一本の小説なのではないかと思ってしまうくらいに、読みやすく、ドラマティックで、胸打たれる。
この本が美しく丁寧にまとめられているのは、彼女が乳がんから生還できたからだ。
がんで亡くなった山本文緒さんの闘病記「無人島のふたり」は切羽詰まった生々しい死への恐怖が焼きつくような読書体験だったけれど、「くもをさがす」はパワフルな生への希望に満ち満ちていた。
ああ、この人はこれからも、希望を抱いて歩んでいけるんだ……と思うと泣きそうになった。
#読書
2023年8月28日(月)
「私の推しは悪役令嬢。」のアニメが10月に始まる!!
漫画版をちびちびと読んでいるんだけど、絵がめちゃくちゃかわいくて、伏線の置き方もセンスがあって、すごく好きな百合。
急激に距離が近づくのではなく、付き人とお嬢さまという関係性からすこしずつ縮めていく感じが、丁寧で好きなんだよなー。
アニメも作画よさそうな感じなので、期待している。
#アニメ
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カナダ在住の著者が乳がんになり、両乳房を切除し無事に生還するまでの闘病記。
乳がんサバイバーの話ではあるのだが、どちらかというと『乳がんになった』よりも『カナダで』というくだりがすごく丁寧に掘り下げられていて、医療や自己決定権に関する人々の考え方の違いがおもしろい。
日本人女性に生まれた頃からかけられている一種の呪いにも言及していて、「若見え」「高見え」「オバ見え」などの「他人からどう見られるか」という呪いが一生涯にわたって自分の人生や行動を蝕みつづけることの異常性の話は興味深い。
「幸せそうだなって思われたい」が「幸せになりたい」を凌駕する社会とは、いったいなんなんだろう。
移民の多いバンクーバーが、さまざまな人々にとって生きやすい場所になっている話もすごく印象的。
日本人の薬物への感覚はいまだに、「覚醒剤やめますか、それとも人間やめますか」の域を出ていないんだけど、カナダでは「薬物中毒はその人の選択ではなく、精神疾患です。差別はやめよう」というポスターが貼られているという。薬物中毒者をひとりの人間として、自分たちと同じ存在として扱っているのだ。
女性、子ども、薬物中毒者、ホームレス、生活保護者、障害者、LGBTなどなど、ちょっとでもその人たちの基準からそれていたり、普通から外れているとすぐに「人生終わってる」とか「邪魔」とか言われてしまう狭量な公共空間が構成されているのが現在の日本だけれど、どうやらバンクーバーはここまでひどくはないらしい。さまざまな人が暮らす場所だからこそ、さまざまな人を認める価値観が形成されている。
もちろん、バンクーバーのすべてが素晴らしいわけではなく、西さんも「これも偏見」と断っているけれど、日本ももうちょっとだけ、すべての人に優しい社会にならないものだろうか。
全編通して、闘病記というよりも一本の小説なのではないかと思ってしまうくらいに、読みやすく、ドラマティックで、胸打たれる。
この本が美しく丁寧にまとめられているのは、彼女が乳がんから生還できたからだ。
がんで亡くなった山本文緒さんの闘病記「無人島のふたり」は切羽詰まった生々しい死への恐怖が焼きつくような読書体験だったけれど、「くもをさがす」はパワフルな生への希望に満ち満ちていた。
ああ、この人はこれからも、希望を抱いて歩んでいけるんだ……と思うと泣きそうになった。
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