2023年11月30日の投稿[2件]



今年のキングオブコントについて考えるとき、必ず「演劇の稽古」の印象的なシーンを思い出す。
や団のコントが好きなのは、単純に笑えるから、ネタがおもしろいからというのもあるけれど、そこに人間の感情が丁寧に載せられているから、というのが大きいと思う。
それまで、灰皿を他人に叩きつけることをまったく厭わなかった伊藤さんが、人を殺せる灰皿に変わった途端、暴力を躊躇するのが好きだ。
その瞬間、単なる暴力キャラだった伊藤さんがひとりの人間に変わるように思えてならない。
そんな伊藤さんと、視聴者の感情が共鳴することで、余白や深みが生まれている気がする。
ただの嫌な人ではなく、ふつうに揺れる感情を持っている人なのだ、という事実に安心する。
暴力を安易にお笑いにすることが難しくなってきた令和の世の中だからこそ、『暴力を躊躇する』メンタルが笑いどころになっているのが興味深い。

コントは劇ではなくお笑いなので、感情の余白をもたせる必要は、本来はない。
ニッポンの社長の1本目のネタや、ゼンモンキーのお賽銭のネタは、システムに徹していて、感情移入の幅がないネタだと思う。それはそれでひとつの戦略なのだが、個人の好みとしては、もっとナマの人間の感情が載っかっているほうが楽しい。
アイデアやシステムがただ動いているだけのコントは、たしかに一時的にはすごく笑えるかもしれないが、システムの全容が明らかになった瞬間に、急激に現実への揺り戻しが起こるからだ。
そこに等身大の人間がいて、共感できるような人物として描かれているからこそ、描写に説得力が出るし、没入できる。
緻密なシナリオや、厚みをもたせた登場人物描写こそ、コントの醍醐味なのではないか。
や団のコントを見ていると、しみじみとそう思う。

#お笑い

「美内すずえ傑作選 1 妖鬼妃伝」を読んだ。
「妖鬼妃伝」「白い影法師」「みどりの炎」というホラー作品3本を収録。

3本ともかなり丁寧に恐怖を表現していて、特に表題作「妖鬼妃伝」は非常に怖い。
閉まったあとのデパート! 地下鉄の奥にある魔界! 人形! 平安時代から残りつづける怨念!!
もはや怖い要素しかない。
今は大人だから冷静に読めるけど、10代のころに読んだら3本ともトラウマものだと思う。
デパートと地下鉄を両方入れるのは欲ばりすぎでは?と思うが、どっちも怖いから仕方がない。

「少女時代に読んでトラウマになったホラー漫画スレ」というようなネット話題で、よく「妖鬼妃伝」と「白い影法師」が挙げられていた記憶があるんだけど、どっちも美内先生の作品だとは知らなかった。
むかしの少女漫画はガチでホラーなものが多かった気がする。
どのあたりの年代からホラーがなくなってしまったんだろうなー。

#読書

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