2024年1月7日の投稿[1件]

宮口 幸治「どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2」を読む。

前作ほどのインパクトはないが、少年たちの発達や事情に寄り添っていた前作とはスタンスを変えて、そんな少年たちを支援する側にはどのような心構えが必要なのか、という視点で書かれている。

保育や教育現場での支援の必要性が主に書かれているが、大人の職場でも似たような現象は起きている。
「本当に支援を必要としているのは、この人は支援したくないなと思うような嫌なことをする人」だというくだりは、日常で起きたあれこれを思い出して、「そうだよな~」と思わされた。
なにをどう教えても、絶対に失敗してしまうようなタイプの境界知能や発達障害の人って、どの学校にも職場にも一定の確率で現れるのではないかと思うけれど、そういう人は非常に無愛想だったり、挨拶ができなかったり、空気が読めなくて場を凍りつかせることを言ってしまったり、攻撃的だったりと、仕事以外の行動にも問題があることが多い。
それによって、「この人とは一緒に働きたくないな」という空気が徐々にできあがり、致命的なミスが積み重なり、やがて退職したりさせられたりしていく。

でも、本来、そういう「この人と働きたくないな」と思わせる人には、周囲の理解と協力が必要だ。
そうでなければ、違う職場で無限に同じことを繰り返すだけになってしまう。
愛想がよくて気配りができて、「この人と働きたい!」とみんなが思うような人には、たぶん支援はいらない。

しかし、この『支援』を実現するのは非常に難しいと思う。
支援者を支援する人の存在が必要不可欠だし、その人たちにもケアが必要となるかもしれない。
社会全体がこういう境界知能の人を忌避し、学校や職場から追い出しているからこそ、少年院や刑務所に入ってしまうことになり、そこからの復帰も遠のいていく。そうなる前に、どこかで誰かが支援する必要がある。
個人個人の問題としてではなく、社会全体で考えていかなければいけない問題だと思った。
社会を構成する一員として、考えさせられる一冊。

#読書

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