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2024年1月16日
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2024年1月16日(火)
西堀亮「芸人という病」を読んだ。
思わぬところから、とんでもない良書が飛び出してきた。
『笑いながら読み進めると、突然“真の豊かさ”を問われる哲学の書。』という若林さんの推薦文がついているのだが、本当にそんな本だった。
世に出ている芸人本は、バカ売れした人のものがほとんどだと思う。
しかし、世の中に存在しているほとんどの芸人は、売れていない。
売れているのはほんの一握りの人だけで、あとは地を這いずるようにして生きているはずだ。
ランジャタイやマヂカルラブリーやモグライダーが売れたことによって、ホームとなる劇場を持たない『地下芸人』という存在にスポットが当たった今こそ、売れていない芸人を主役にした本が出てもいいのではないか。
そんなふうに思っていたときに、この本が発売された。
「芸人という病」は、マシンガンズの西堀さんが、売れないまま何十年も経ってしまったおじさん芸人たちにひたすらインタビューをしていくという構成になっている。
「R-1の芸歴制限に達したことで、R-1に挑まなくてよくなって安心した」というような、意識低い系芸人トークが繰り広げられ、みんな、芸人としてはどう頑張っても食っていけなさそうなのに、どうしても芸人をやめられない。
やめられない理由はそれぞれ違っているが、芸人であることが、すでに『職業』ではなく『生き方』になってしまっていて、どれだけ赤字になってもやめられないという話はおもしろかった。
彼らは惰性で芸を続けているだけで、「絶対にM-1で優勝する!」というような大きな夢はすでに持っていないし、モチベーションもない。
M-1で優勝した錦鯉を見て羨ましがったり、自分もワンチャンあると思ったりはするが、いたってマイペースな暮らしをつづけている。
でも、芸人であるだけで幸せそうで、満ち足りて見える。
われわれは、老後に備えて2000万円の貯金があること、定職があること、結婚して子どもがいることなどを勝手に幸せに必要かもしれない条件だと思っているが、お金もろくに持っていないし、定職もないままおじさんになってしまった彼らが、サラリーマンよりも幸せそうに見えるのはなぜだろう。
だれにも注目されなくても、『芸人である』というただそれだけのことで満ち足りてしまうのだとしたら、そこにはどんな魔法があるのだろう。
西堀さんの淡々とした語りが彼らから引き出す価値観は、どう見ても異様だが、妙に安心感のあるものだった。
幸せとはなんなのか。芸人とはなんなのか。若林さんの言うように、これは哲学だ。
風呂のない部屋に住んでいても、借金がたくさんあっても、その日暮らしでも、彼らは芸人であるだけでこれまでと同じ日々を生きていける。
世界情勢が悪化し、世の中が暗くなっていくなか、それでも幸せに生きていくにはなにが必要なのか。
自分らしさを見失わないためには、どう生きればいいのか。
そんなことを考えさせてくれる本だった。
#読書
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『笑いながら読み進めると、突然“真の豊かさ”を問われる哲学の書。』という若林さんの推薦文がついているのだが、本当にそんな本だった。
世に出ている芸人本は、バカ売れした人のものがほとんどだと思う。
しかし、世の中に存在しているほとんどの芸人は、売れていない。
売れているのはほんの一握りの人だけで、あとは地を這いずるようにして生きているはずだ。
ランジャタイやマヂカルラブリーやモグライダーが売れたことによって、ホームとなる劇場を持たない『地下芸人』という存在にスポットが当たった今こそ、売れていない芸人を主役にした本が出てもいいのではないか。
そんなふうに思っていたときに、この本が発売された。
「芸人という病」は、マシンガンズの西堀さんが、売れないまま何十年も経ってしまったおじさん芸人たちにひたすらインタビューをしていくという構成になっている。
「R-1の芸歴制限に達したことで、R-1に挑まなくてよくなって安心した」というような、意識低い系芸人トークが繰り広げられ、みんな、芸人としてはどう頑張っても食っていけなさそうなのに、どうしても芸人をやめられない。
やめられない理由はそれぞれ違っているが、芸人であることが、すでに『職業』ではなく『生き方』になってしまっていて、どれだけ赤字になってもやめられないという話はおもしろかった。
彼らは惰性で芸を続けているだけで、「絶対にM-1で優勝する!」というような大きな夢はすでに持っていないし、モチベーションもない。
M-1で優勝した錦鯉を見て羨ましがったり、自分もワンチャンあると思ったりはするが、いたってマイペースな暮らしをつづけている。
でも、芸人であるだけで幸せそうで、満ち足りて見える。
われわれは、老後に備えて2000万円の貯金があること、定職があること、結婚して子どもがいることなどを勝手に幸せに必要かもしれない条件だと思っているが、お金もろくに持っていないし、定職もないままおじさんになってしまった彼らが、サラリーマンよりも幸せそうに見えるのはなぜだろう。
だれにも注目されなくても、『芸人である』というただそれだけのことで満ち足りてしまうのだとしたら、そこにはどんな魔法があるのだろう。
西堀さんの淡々とした語りが彼らから引き出す価値観は、どう見ても異様だが、妙に安心感のあるものだった。
幸せとはなんなのか。芸人とはなんなのか。若林さんの言うように、これは哲学だ。
風呂のない部屋に住んでいても、借金がたくさんあっても、その日暮らしでも、彼らは芸人であるだけでこれまでと同じ日々を生きていける。
世界情勢が悪化し、世の中が暗くなっていくなか、それでも幸せに生きていくにはなにが必要なのか。
自分らしさを見失わないためには、どう生きればいいのか。
そんなことを考えさせてくれる本だった。
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