表示中の日付範囲に限定して検索
2024年3月2日
の投稿
[1件]
2024年3月2日(土)
武田惇志、伊藤亜衣「ある行旅死亡人の物語」を読んだ。
行旅死亡人とは、病気、行き倒れ、自殺など、さまざまな理由で亡くなり、身元が不明のまま、どこにも引き取り手のいない死者を指す法律用語。基本的に事件性はないのだが、官報にて公表される行旅死亡人のデータには、時折、不可解なミステリーを匂わせるものがある。
「ある行旅死亡人の物語」は、ふたりの記者が、3400万円という大金を持ちながら死んだ名もなき女性の人生を追い、彼女の名前を見つけるまでを克明に描いた、執念のルポだ。
所持金3400万円、そして右手の指が一本もない。持ち物のなかには星型のペンダントがあり、ペンダントのなかには暗号のような数列が記載されていた。部屋には大きなぬいぐるみが大切に残されていた。
そんな女性の遺産の相続人を探している弁護士と接触するところから、物語ははじまる。
さまざまにもつれあう人間関係を丁寧に紐解きながら、女性の名前が発覚するくだりは、どんなフィクションよりもぐっとくる。
もちろん、ノンフィクションなので、判明しない点も多いのだが、それも含めて、ひとりの人間の生の厚みを感じられて、読み応えがあった。
どんなに隠れて生きようとしても、その人が働いたり、近所の人と話したり、家賃を払ったり、買い物をしたり……どこかで他人とのつながりが生まれる。
もしかしたら、自分もいつかは行旅死亡人のひとりになるかもしれないけれど、だれかが足跡をたどってくれたなら、きっとそこかしこに生きた証があるはずだ。
ありふれたものかもしれないけれど、自分にもそんな痕跡が残されている。
自分が死ぬ日のことを想像して、世界のスケール感に圧倒される。そんな本だった。
これを読んだあと、行旅死亡人データベースを閲覧してみたのだが、病気、孤独死、自殺などのありふれた死因とは別に、「ホルマリン漬けにされた胎児」、「江戸時代に死んだと推定される人骨」、「ゴミ捨て場に捨てられた火葬後の遺骨」など、さまざまな行旅死亡人のデータがあって、データベースを読んでいるだけでも、「こんな人生もあるんだな」と世界が変わっていくような感覚があった。
やっぱり、ノンフィクション本は視界が急激に広がるような感覚があって、小説とはべつの手応えがあるよなー、としみじみと思った。
また、おもしろいノンフィクションが読みたくなる。
#読書
初期表示に戻る
■ハッシュタグ:
ゲーム
(239)
読書
(158)
視聴メモ
(108)
お笑い
(103)
ラジオ
(74)
特撮
(39)
音楽
(21)
映画
(21)
投資
(19)
アニメ
(16)
勉強
(12)
手帳
(11)
株
(11)
ドラマ
(8)
買い物
(7)
健康
(7)
片付け
(5)
イベント
(5)
手芸
(4)
ポケットモンスターブリリアントダイヤモンド
(3)
夢日記
(2)
アナログゲーム
(2)
サイト運営
(1)
shiohamalog
(1)
文具
(1)
創作
(1)
料理
(1)
あつ森
(1)
ドラマ
(1)
記事メモ
(1)
Steam
(1)
テスト
(1)
■日付一覧:
2024年
(328)
2024年
11月
(23)
2024年
10月
(30)
2024年
09月
(31)
2024年
08月
(30)
2024年
07月
(32)
2024年
06月
(29)
2024年
05月
(31)
2024年
04月
(30)
2024年
03月
(31)
2024年
02月
(29)
2024年
01月
(32)
2023年
(364)
2023年
12月
(30)
2023年
11月
(30)
2023年
10月
(31)
2023年
09月
(30)
2023年
08月
(31)
2023年
07月
(32)
2023年
06月
(30)
2023年
05月
(30)
2023年
04月
(30)
2023年
03月
(31)
2023年
02月
(28)
2023年
01月
(31)
2022年
(386)
2022年
12月
(31)
2022年
11月
(30)
2022年
10月
(31)
2022年
09月
(30)
2022年
08月
(31)
2022年
07月
(31)
2022年
06月
(30)
2022年
05月
(31)
2022年
04月
(31)
2022年
03月
(35)
2022年
02月
(31)
2022年
01月
(44)
2021年
(46)
2021年
12月
(46)
■日付検索:
全年月 (1124)
2024年 (328)
2024年11月 (23)
2024年10月 (30)
2024年09月 (31)
2024年08月 (30)
2024年07月 (32)
2024年06月 (29)
2024年05月 (31)
2024年04月 (30)
2024年03月 (31)
2024年02月 (29)
2024年01月 (32)
2023年 (364)
2023年12月 (30)
2023年11月 (30)
2023年10月 (31)
2023年09月 (30)
2023年08月 (31)
2023年07月 (32)
2023年06月 (30)
2023年05月 (30)
2023年04月 (30)
2023年03月 (31)
2023年02月 (28)
2023年01月 (31)
2022年 (386)
2022年12月 (31)
2022年11月 (30)
2022年10月 (31)
2022年09月 (30)
2022年08月 (31)
2022年07月 (31)
2022年06月 (30)
2022年05月 (31)
2022年04月 (31)
2022年03月 (35)
2022年02月 (31)
2022年01月 (44)
2021年 (46)
2021年12月 (46)
新しい順(降順)
時系列順(昇順)
■カレンダー:
2024年
3月
日
月
火
水
木
金
土
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
« 前の月
/
次の月 »
行旅死亡人とは、病気、行き倒れ、自殺など、さまざまな理由で亡くなり、身元が不明のまま、どこにも引き取り手のいない死者を指す法律用語。基本的に事件性はないのだが、官報にて公表される行旅死亡人のデータには、時折、不可解なミステリーを匂わせるものがある。
「ある行旅死亡人の物語」は、ふたりの記者が、3400万円という大金を持ちながら死んだ名もなき女性の人生を追い、彼女の名前を見つけるまでを克明に描いた、執念のルポだ。
所持金3400万円、そして右手の指が一本もない。持ち物のなかには星型のペンダントがあり、ペンダントのなかには暗号のような数列が記載されていた。部屋には大きなぬいぐるみが大切に残されていた。
そんな女性の遺産の相続人を探している弁護士と接触するところから、物語ははじまる。
さまざまにもつれあう人間関係を丁寧に紐解きながら、女性の名前が発覚するくだりは、どんなフィクションよりもぐっとくる。
もちろん、ノンフィクションなので、判明しない点も多いのだが、それも含めて、ひとりの人間の生の厚みを感じられて、読み応えがあった。
どんなに隠れて生きようとしても、その人が働いたり、近所の人と話したり、家賃を払ったり、買い物をしたり……どこかで他人とのつながりが生まれる。
もしかしたら、自分もいつかは行旅死亡人のひとりになるかもしれないけれど、だれかが足跡をたどってくれたなら、きっとそこかしこに生きた証があるはずだ。
ありふれたものかもしれないけれど、自分にもそんな痕跡が残されている。
自分が死ぬ日のことを想像して、世界のスケール感に圧倒される。そんな本だった。
これを読んだあと、行旅死亡人データベースを閲覧してみたのだが、病気、孤独死、自殺などのありふれた死因とは別に、「ホルマリン漬けにされた胎児」、「江戸時代に死んだと推定される人骨」、「ゴミ捨て場に捨てられた火葬後の遺骨」など、さまざまな行旅死亡人のデータがあって、データベースを読んでいるだけでも、「こんな人生もあるんだな」と世界が変わっていくような感覚があった。
やっぱり、ノンフィクション本は視界が急激に広がるような感覚があって、小説とはべつの手応えがあるよなー、としみじみと思った。
また、おもしろいノンフィクションが読みたくなる。
#読書