2024年6月11日の投稿[2件]

米澤穂信「冬期限定ボンボンショコラ事件」を読んだ。
小市民シリーズ、ついに完結。
完結編にふさわしい、ミスリードを駆使したトリックが素晴らしい。
小佐内さんとの絆も次のステージへ移ったような感じで、すごくよかったなあ。
お話が一番好きなのは秋期限定なんだけど、ミステリとしては今回が一番クオリティが高かったかもしれない。
短くスッキリとまとまっているシリーズなので、アニメ化をきっかけに読みはじめる人が増えると嬉しいなあ。文体も読みやすいし、おすすめ。

#読書

黒沢清監督の「回路」(2001年)という映画を見た。
インターネットという装置を駆使したジャパニーズホラーではあるのだが、そちらは本筋ではなく、実際のところは死生観を揺さぶる哲学系映画だと思う。
黒沢監督は「CURE」や「散歩する侵略者」が好きだった気がする。このふたつもやや哲学系だったような……。二作品ともそろそろ詳細を忘れてきたので、そのうちにまた見たい。

「永遠に孤独なまま存在しつづけるということは、ただ死ぬよりもつらいことだ」というような結論を出しているっぽいようなところには、ついこのあいだ久しぶりに見た手塚治虫「火の鳥 未来編」のマサトの深すぎる孤独を思い出した。
「回路」に出てくる幽霊たちは、みんなマサトと同じ状態なのかもしれないよなー、と思うと怖い。
「永遠に生きる(永遠に死んでいる)」こと自体は苦ではないけれど、そこに「孤独」が加わると非常に深い苦痛に変わるのかもしれない……と考えさせられる。

また、生きている人間とも会話であまり分かり合えていないという絶望感も、幽霊たちの孤独な気持ちを補強しているような気がして、細やかだ。丁寧に積み重ねられた孤独が世界を埋め尽くしていくのは、爽快ですらあるかもしれない。

不安を煽るアングルや不気味な舞台装置がうまく作用している映画で、ジャンプスケアに頼らずに怖がらせる演出が楽しかった。
直接的な暴力描写がないということも含め、良質なホラー映画だと思う。
こういう上品めなジャパニーズホラー、他にも見たいな。畳む


#映画

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