2025年7月22日の投稿[2件]

安藤なつ「介護現場歴20年。」を読む。

お笑い芸人として活躍しながら、介護の仕事をつづけていた安藤なつさんが、これまで経験した介護の仕事について語るコミックエッセイ。

介護は、過酷だったり、薄給だったり、つらいことばかりなのではないかというイメージがあるのだけれど、安藤さんはひとりひとりの利用者と丁寧に向き合い、コミュニケーションや介護の仕事そのものを楽しんでいる。
彼女の快活で誠実な人柄が伝わるエッセイで、晴れやかな気持ちになれた。
合間にあるコラムも読み応えがあって、いい本だと思った。
安藤さんのポジティブで優しい人柄のほうに目が行ってしまって、介護の仕事の内容よりも安藤さんのほうが印象に残ってしまうところが、欠点といえば欠点かもしれない。すごい人だ。

「デイサービスを幼稚園にしない」とか、介護する側だけではなく、される側の気持ちを思いやる姿勢の話が興味深かったなあ。
みんないずれは介護される側になるかもしれないわけで、そのときのために、介護される側の気持ちに沿った介護の形が徐々に完成するといいな。畳む


#読書



少し前に、「海がきこえる」を初めて見た。
見たあとで、リバイバル上映が決まっていることを知ってすこし嬉しかった。
ファンタジーや考察の要素があまり好きではない自分が、スタジオジブリで一番好きな作品はおそらく「コクリコ坂から」なのだが、これもトーンとしてはやや近くて、好きだったなー。

日本アニメのよくない慣習として、人物が記号的すぎるというものがあると思う。(もちろんすべての作品がそうであるわけではない)
「海がきこえる」はそうした切り分けが少なく、人間の多面性を感じさせる作品で、好みだった。

「ツンデレ」「ヤンデレ」「クーデレ」などとキャラクターを細かく切り分けていくことがいろんなジャンルで当然のように行われているが、現実の人間は、そんな属性で切り分けられるものではない、と強く思う。
病んでいて落ち込んで自暴自棄になる日もあれば、人にやさしくできる日もあるし、急に不機嫌になって怒る日だって、あっていい。常にツンツンしているとか、ずっとトーンが暗いとか、一貫性があるほうがむしろ不自然だ。
そして、荒れている人に当たられた側も、なんの理由もなくそれを許していいし、あとから急に思い出して怒ったっていい。
実際、日常はそうやって、なんの脈絡もなく流れていくものだから。
そうした日常のコミュニケーションの風景を、描写をサボらず、記号化せず、情感を持って丁寧に映し出しているのが「海がきこえる」なのではないかと思った。
劇的に物語が動くことはないが、じわじわと事態が移り変わっていくさまが、とてもリアルだ。
ひとつひとつのシーンは「こういうこと、あるよなあ」というあるあるが詰まっているだけに、見ごたえがある。

定型化されていない、どこにでもいる、すこしだけ情緒不安定な女の子を描いたからこそ、「海がきこえる」は本当に青春を追体験させているような質感を持ってこちらに迫ってくる。
実写映画だとこういう作風のものはたくさんありそうなのだが、アニメという媒体に限ると滅多に見かけないし、うまく成功させるには描写力がかなり問われる気がする。
こういう作品、もっと見たいなあ。チャレンジするうまみは少ないんだろうけど。畳む


#映画

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