2025年8月29日の投稿[1件]

木下由一「あらくれお嬢様はもんもんしている」の7巻・8巻を読んだ。
エロコメから純愛ラブコメへ。そしてその先は……?という分岐点に立っている。

内容を知らない人が表紙だけ見たら、「すごくエロいマンガなのかな?」と思いそうなんだけど、内容的には即物的なエロからは急速に遠ざかっていっており、そこがすごく令和的で好きだったりする。
二人が両思いになり、付き合いはじめた時点で「もう終盤戦なのかな」と寂しく思っていたのだが、実はここが新しいスタート地点であったという驚き。

既存の作品(少女漫画やドラマなど)では、両思いになったふたりは、雰囲気が盛り上がったままキスをして、そのまま朝チュン……というような流れが多い。
しかし、本当にそれでいいのか? 雰囲気に流されているだけで、ちゃんとした同意(避妊や挿入の有無なども含めて)、取れてないかもよ?……という。
あらもんのすごいところは、お互いが『恋愛』と『性欲』を相反するものとして俯瞰して見ているところ。
そして、『恋愛』と『性欲』を同じ方向に向かわせるために、ありえないほど長く、ふたりでディスカッションを行うというところだ。
相手のことを本当に愛しているのなら、高校生で性行為には及ばないのではないか。
性欲によって勢いだけで致してしまうのは、本当の愛ではないのでは。
時には保健の教師にも相談しながら、『高校生同士でセックスするのって本当に純愛の結果ですか? 単なるリビドーであるなら、本当に愛しているわけではないのでは?』というテーマを丁寧に掘り下げていく。
純愛と性欲が矛盾するとき、性的同意は得られない。
互いに相手を求めながらも、論理的矛盾や倫理観によって、性行為は回避されていく。
セックスだけでなく、たった一度のキスにも丁寧な同意を取っていく、お互いを思いやるためにひたすらに話し合うという誠実さが、このマンガを輝かせている。
『雰囲気で、流されるまま、なんとなくする行為』の不誠実さをここまで描き出されてしまうと、拍手するしかない。
最終的には結ばれるんだろうけど、そこへ至るまでのプロセスがあまりにおもしろくて、もうずっとこのままでいてほしいとすら思う。凄まじいマンガ。畳む


#読書

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