2025年8月31日の投稿[1件]

松下龍之介「一次元の挿し木」を読んだ。
2025年、第23回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作。
二百年前の人骨のDNAと、四年前に失踪した妹のDNAが一致するという驚愕の謎の提示が魅力的すぎて読みはじめたのだが、この出だしがあまりにもよすぎて、終盤はトーンダウンした印象もある。
予想の範囲内の真相で、もう一捻りほしい気分だった。
以下、やや否定的な感想。

ミステリ的に納得できる解決が来るかと思って期待していたけど、SFとライトノベルのあわせ技のような結末で、リアリティに欠ける感じがした。倫理的に受け容れがたい部分もある。
ハラハラドキドキで楽しいし、一気読みできる勢いはあったけど、ラストには納得していないかも。
あと、内容には関係ないが、主人公が信じられないほどイケメンであるということを強調する描写がすごくしつこくて、「そんなに何度も言わなくてもいいよ!?」と思ってしまった。
ただ、メインのトリックはうまく機能していると思うし、好きだなー。
解説にもあるけど、読者を強く惹きつける謎の提示がデビュー作で完成しているのは凄まじいインパクト。

個人的には、「救急医である主人公の元に搬送されてきた男が、自分とまったく同じ顔だったが、すでに手遅れで、眼前で死んでしまった」という山口未桜「禁忌の子」とあらすじが似ているから、これと同じ水準を求めてしまって、勝手にややがっかりしたというのも大きいかな。
「禁忌の子」は医学部出身の方が書いていて、合間に挟まれる、医学的にリアリティのある描写がおもしろかったんだよなあ。

このミス大賞は「怪物の木こり」しか読んでいなくて、これが二作目。どちらも、最初からライトノベルだと思って読むほうがすっきりと読める作品かもしれない。すくなくとも、ミステリよりサスペンス重視の賞だということを念頭に置いておくべきかなあ。
大賞の「謎の香りはパン屋から」も、ノリが軽すぎて序盤で(第一章が終わったところくらいで)挫折してしまったんだよなー。こちらはもしかしたら徐々におもしろくなるかもしれないので、またリベンジしたいところ。畳む


#読書

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