タグ「読書」を含む投稿[206件]

夢まぼろしだと思っていた、「城シリーズ」の新作「石球城」がついに来るらしい。
ミステリ界のエターナルコンテンツ、意外と待っていると来ることが多い。読みたいなあ。
城シリーズは中学生時代にドハマリしていたなあ。どれもおもしろい。
あとは、三途川理シリーズの続きが来てほしいな。そろそろ前作から10年近く経つのかぁ……。

#読書

藍上 央理「完璧な家族の作り方」を読んだ。
note主催・創作大賞2024〈角川ホラー文庫賞〉受賞作。

北九州にある呪われた一軒家でかつて起きた凄惨な心中事件。
そして、その後も頻発する行方不明事件。
それらのつながりを取材によって追いつづける筆者が、取材の先にたどり着く結論とは……。

きれいにまとまっている良作。怖いというよりは気持ち悪い系。中盤に挟まる手記の気持ち悪さがすごくよかった。
ただ、KADOKAWAの宣伝戦略が「『近畿地方のある場所について』の二匹目のドジョウ、狙いたい!」「モキュメンタリーホラー、売りたい!」という傾向に偏りすぎていて、そこまでリアリティのある話でもない本編のシナリオとの整合性が取れていない感じがした。
作品そのものに問題があるというよりも、KADOKAWAががっつきすぎているせいで、不協和音になっているような。
フォントをやたらと変えるのも妙に嘘っぽくて、そこは一緒のフォントでよかったんじゃないかなと思った。
あと、この手のモキュメンタリーでは、2ちゃんねる(5ちゃんねる)のスレッドは横書きにしてほしい……という個人的な願いがある。スレッドを縦で読むことってないから、「あ、嘘だ」と思ってしまう。
「近畿地方」のような意外性のあるシナリオではなく、どちらかというとホラーの王道を手堅く抑えていくベタに怖い話であるというのもあり、宣伝の空回りを感じる。

そろそろ、モキュメンタリーホラーの飽和の気配を感じるので、よほど質のいいもの(あるいは意外性たっぷりでバズりに特化したぶっ飛んでいるやつ)を出さないとヒットはしないのではないか。だんだんハードルが上がってきているなあ。畳む


#読書

赤川次郎「死者の学園祭」を読んだ。
終わってから細かいところを考えていくと「それはおかしいんじゃ……」という部分もあるんだけど、その場の勢いだとめちゃくちゃおもしろいんだよなあ。

現在では「一般小説」「ライトノベル」「ライト文芸」「ヤングアダルト」「少女小説」と非常に細分化されてしまっている文芸の分野だけれど、当時の赤川次郎はたぶんすべてにまたがるような存在だったんだろうなー、と思わせる。
まだ分けられていない存在だったからこそ、子どもも大人も楽しめるのかもしれない。

「顔のない十字架」ほどではないにしろ、「死者の学園祭」もアダルトだったり不適切だったりする描写はある。
けれど、当時のヤングアダルトとしては、これくらいならオーケーという感じだったんだろうなというおおらかさも感じる。
イケメン教師と生徒がサイレント結婚してるとか、現代だとすごく怒られそう。そもそも、できないだろ!という気持ちもある。

基本はいつもの赤川サスペンスなんだけど、学園祭のパートが凝っていて好きだったなー。誰が犯人なのか、わかりそうでわからないのもよかった。
この調子で赤川次郎マラソンしていきたいなあ。
「顔のない十字架」を超える作品や、それっぽい作品があるかどうか見ていきたいんだけど、どうやら「顔のない十字架」は赤川次郎的には異色の作品っぽいので、もしかするとこれ系を探すのは大変なのかもしれない。畳む


#読書

芦沢央「火のないところに煙は」を読んだ。
週刊文春ミステリーベスト10では2018年5位、このミスは2019年10位。

「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」という依頼をきっかけに、作家の「私」は連鎖する怪談の世界へと巻き込まれていく……。

いわゆる実話風怪談なのだが、一本一本に論理的なオチがあって、怪談としてだけではなくミステリとしても楽しめるところが好きだった。

文庫版だと、最後に解説があるから実話ではないということがはっきりとわかるんだけど、単行本段階だとさらに怖かっただろうな。
実話怪談としてのリアリティの細かさが最高。畳む


#読書

山口未桜「禁忌の子」を読んだ。
第34回鮎川哲也賞受賞作、2025年本屋大賞4位。
救急医・武田のもとに搬送されてきた身元不明の溺死体「キュウキュウ十二」は、なぜか武田と瓜二つだった。
いったい、この遺体は何者なのか? そして、武田自身のルーツは?

まず「自分とそっくりな溺死体」の救命措置を行うところから物語がはじまるというワクワクにがっちりと心を掴まれた。
そして、徐々にその正体へと迫っていく緊迫感。
二転三転する真相も魅力的でよかったなー。

ラストは賛否ありそうというか、嫌な人は嫌かもしれない展開だった。個人的には、これしか落としどころはないなと思った。
現役医師が書いた作品ということで、ミステリなのに、遺体を発見した瞬間に全力の救命措置がはじまるというシーンが斬新で好きだった。
ミステリの登場人物は、遺体っぽいものを発見しても、脈があるかどうか確認するくらいで、基本なにもしないことが多いからな……よく考えたら、発見時に心停止状態でも、蘇生する可能性はあるよね……。
このあとは城崎を探偵としたシリーズとして続いていくらしいので、それも楽しみ。早く続きが出てほしいなー。畳む


#読書

宮島未奈「それいけ!平安部」を読んだ。
入学式当日に「平安時代に興味ない?」と突然声をかけられたことをきっかけに、新たに「平安部」を作ることになってしまった栞。
平安時代が大好きな部長・安以加。
中学のサッカー部で万年補欠だったせいで、今回は楽な部活を選びたいと思った大日向。
百人一首の研究がしたくて百人一首部に入ったら、競技かるたの部だったために幽霊部員になってしまった明石。
気遣いのできる超絶イケメン・光吉。
完全にバラバラな属性の五人を集め、特になんの目的も決めないまま、平安部が始動する。
果たして、平安部の活動内容は……?

完全にバラバラな世界の住人と思われた五人が、意外と平安時代の属性でまとまっていく様子や、最初はだらだらと部活動を行っていたのに、いつのまにか実績を得てどんどん大きくなっていくくだりなどが気持ちよくて、理想的な部活モノだと思った。すごく好き。
これは続編も出そうな気がするんだけど、どうだろうな。畳む


#読書

小学生のころ、教室の隣の空きスペースのようなところに、学級文庫があった。
図書室とは別に、担任の教師が家から持ってきた本が置いてあるというもの。
今、思い出しても不可思議なラインナップというか、江戸川乱歩が数冊(しかも春陽文庫)、本当は怖いグリム童話(具体的なタイトルや出版社は思い出せないが、かなりガチでグロいやつ)、そして赤川次郎の「顔のない十字架」。
一通り読んだのだが、自分にとっては、この「顔のない十字架」がかなり衝撃作で、貪るように読んでしまった。
めちゃくちゃおもしろいと同時に、めちゃくちゃエロかったからである。
直接的なシーンはないのに、なぜかすごくエロティック。
小学生の心をほどよくくすぐる内容だった。

ということで、当時を思い起こしつつ、時空を超えて「顔のない十字架」を読む。
主人公・佐知子は非常に面倒見のいい女性で、しょっちゅう弟の世話を焼いている。
ある日、弟が深夜に男を轢き殺してしまったという連絡が入り、佐知子はその死体を処理することになってしまう。
が、その死体となった男は「脅迫状」を隠し持っていた。
その脅迫状には、「月曜日になったら、自動的に人質である娘が死ぬ」と書かれている。どうやら、弟は誘拐犯を殺してしまったらしい。
娘の所在を知る男が死んだことで、娘の命が危険にさらされていると直感した佐知子は、独自に調査を開始する……という話。

リアリティは皆無なのだが、二転三転するサスペンスが非常に鬼気迫っていて、一気に読めてしまう。
そして、途中で出会う裏社会の殺し屋・辰巳と佐知子の危険なロマンスもすごくいい。
辰巳がことあるごとに佐知子への恋心をアピールしていて、辰巳にしてみれば、いつでも佐知子を襲ってしまえる状況であるにもかかわらず、なぜか佐知子を大事にしている……というのがよかったんだよなー。懐かしい。
久しぶりに読んで、もしつまらなかったらショックだよなと思ったんだけど、おもしろかった。思い出をちゃんと更新できて、嬉しい。畳む


#読書

ミッフィー展でミッフィーに関するいろんなことを知って、絵本をめぐっていっている。
改めて見つめ直してみると、攻めたテーマが多くてすごくおもしろい。

大好きだったおばあちゃんのお葬式を描く「うさこちゃんのだいすきなおばあちゃん」、ある日突然、急病で入院して手術を受けさせられる「うさこちゃんのにゅういん」、文字がなく、絵だけで夜の冒険を描く「うさこちゃんのゆめ」。

そして、かわいらしいタイトルとは裏腹に、非常にビターなテーマの「うさこちゃんときゃらめる」。
「うさこちゃん、キャラメルをもらったのかな? おいしそうだな~!」と思わせるタイトルと表紙だが、内容はそんな話ではまったくない。
うさこちゃんが、お店で見かけたおいしそうなキャラメルを衝動的に万引きしてしまうというショッキングなお話。
うさこちゃんは自分の犯した罪の重さで眠れなくなり、その不審な様子から、お母さんに万引きのことがバレてしまう。
やってしまったことはもう戻らない。
万引きとまでは行かなくても、幼少期にだれもが抱くであろう、「お母さんに内緒で悪いことをしてしまった」という思い。
その気持ちとどう向き合っていくか。犯した罪をどう償うかというテーマを幼児向けの絵本で描いているということが新鮮で、考えさせられる。
「悪いことをしてはいけない」と教えるのは簡単だけれど、「悪いことをしたあと、どうするべきか」という教育が行われる機会は意外と少ないのではないかと思った。

#読書

井田千秋「ごはんが楽しみ」を読む。
井田千秋さんの漫画は、漫画というよりもイラスト集みたいですごく癒やされるんだよなー。
今回はエッセイということで、作者の代わりをつとめる白いくまとともに、きらきらした食の世界へ。
特に食器に関するお話が好きだった。
かわいらしい食器が次々と出てきて、「あ~!食器がほしい!!」と食器欲に火がついた。
また新作が出たら読みたいなあ。

#読書

「彩雲国物語」をまだまだ読む。
4巻目にして、茶朔洵登場。
3巻までは恋愛っ気はほぼほぼまったくなしの状態で、ひたすら政務に突き進むというお話なんだけど、朔洵という恋に生きる男(?)が登場したことで、秀麗が初めて自分の中にある恋心のようなものに気づくという波乱の展開が好き。
命をかけながら仲間と分断されたときに出会ったのが、よりによってこの男……!という絶望感と、正体を知らないで過ごした蜜月の不穏な平和さがたまらない。

アニメ版での配役が、いつ見ても全体的に完璧すぎる……と思っているんだけど、特に朔洵に子安さんを当てたのはすごい。セクシー。
当時、朔洵を推すために見ていた人も多いんじゃないか。魔性の男すぎる。

#読書

ブックマーカーに凝りはじめている。
書店で売っているややお高めなものから、セリアで売っているキャラクターものまで。
最近は、自分でいい感じの紙ものを見つけて、しおりに加工するのにもハマっている。
せっかくの読書時間なのだし、ブックマーカーにもこだわっていけばもっと楽しくなるかも。



精神科医の樺沢紫苑さんが、YouTubeで「なにかを楽しむために必要なのは、お金ではなく工夫」という話をしていて、こういう「足るを知る」要素って、人生ですごく大事なのかもなと思った。
今はお金があっても、死ぬまでずっとお金があるとは限らないわけだし。
お金なしでも、自分の工夫でなんでも楽しめる体質になっておいたほうがお得だよな。
読書を楽しむための一工夫としてのしおり作り、これからもやっていこうと思う。

#読書

いつのまにか、十年屋さんの新作が出ているということに気がついた。
うわー、読むの楽しみー。
また一巻から読み返してもいいかも。
大好きすぎるシリーズで、癒やされる。

#読書

中村富士美「『おかえり』と言える、その日まで 山岳遭難捜索の現場から」を読んだ。

どうしてかはわからないけれど、山岳遭難に関する本を定期的に読みたくなる。
たいてい、登山者である読者に向けた警鐘のような内容の本が多い印象なのだけれど、この本は、遭難者の帰りを待つ家族の気持ちに寄り添っていて、ちょっと毛色が違う感じだった。

公的な捜索は生存の可能性の高い人に向けて行われており、生存の可能性が低くなれば打ち切られてしまう。
でも、家族は打ち切りのあとも、遭難者が帰ってくるのではないかと思い、待ちつづけてしまう。
もしかしたら、登山には行かなかったかもしれない。
もしかしたら、無事に下山して、どこか別の場所で過ごしているかもしれない。
どんな形でもいいから、帰ってきてほしい。
そんな家族の気持ちに寄り添い、民間での捜索を行う団体についての本。

登山者はどの道をどんな気持ちで辿っていったのか。
こういう性格なら、険しい道は行かないはず。
この印を見間違えたのかも。
きっとこの道の先にいるはず……。
会ったこともない人の思考を想像し、足取りを追い、そして白骨化したご遺体を見つけ、家族の元へ帰す。
なによりも、止まってしまった家族の時間を動かすために。
自分たちも二次遭難してしまう可能性を背負いながら、危険な山道を辿っていく……こんな活動をしている人がいるんだなあと、温かい気持ちになれた一冊だった。畳む


#読書

連休は半分仕事だったので、あまりありがたみはなかった。

「彩雲国物語」を久しぶりに最初から再読している。このほのぼの群像劇の雰囲気、好きなんだよなー。
イケメンだらけの少女向けライトノベルではあるんだけど、まったくハーレムではなく、恋愛要素も少なめ。
奇人変人だらけで、恋にはほぼならないという。

後宮で王の妃になるという楽な道を自ら蹴って、世の中をよくするために、国で初めての女性の官吏になるという筋書きが大好き。
フェミニズム的なライトノベルは令和にもちょこちょこあるけど、当時は官吏としてガンガン政治に関与していくという筋書きが新鮮でおもしろかった。
終盤でちょっと雰囲気が変わってしまってから読んでいなくて、たしか完走はしていないような気がする。
今度こそ完走したいな。

#読書

Himaco「今日もテレビは私の噂話ばかりだし、空には不気味な赤い星が浮かんでる」を読んだ。
タイトルからして、怖そうな話なのかな……と思ったけど、実際のところは、統合失調症を患った著者が、周囲の温かいサポートによって、すこしずつ日常を取り戻していくというハートフルなエッセイだった。いい意味でタイトル詐欺。

一応、コミックエッセイという体裁ではあるのだけれど、コミックというよりは、水彩で書かれた絵本のような感じ。
この薄い色合いが、優しい体験談とマッチしていて、すごくよかった。
脳が忙しく動きすぎて、外を徘徊したり、妄想が出たりしていた著者が、適切な服薬によって、ひとつひとつ快方へ向かっていくのが勇気づけられる。
なによりも、この体験を振り返って、客観視してエッセイにできたという事実自体が、彼女の精神がすごく回復しているということを示しているような気がした。
どんな疾患があったとしても、穏やかな日常を歩みながら、ちょっとずつよくしていければいいんだろうなあ。
自分も、ひとつひとつの日常を丁寧に積み重ねていこうと思えた。良エッセイ。畳む


#読書

背筋「口に関するアンケート」を読んだ。
まず、この装丁と値段で本を出そうと思った時点で勝っていると思う。
本が売れない時代に、どうやったら本を売ることができるかという問いかけに対し、『安く、小さい本を売る』というアンサーを出しているのがときめく。
豆本が好きな人は、書店で見て「お!」と思ったのでは。
「なんだかわからないけど、とりあえず買ってみようかな」と思わせる、特殊な読書体験へのアプローチが楽しい。

謎めいたタイトルを最後の最後で回収する構成もおもしろい。
装丁も「アンケート」というコンセプトと噛み合っている感じがして、相性よかった。
もちろん、短い分だけ恐怖要素は控えめになってはいるんだけど、この短さでここまで怖くできるのはやっぱりすごい。さすが背筋さん。
最後まで行ってから読み返すと、見える景色が変わるという仕掛けがよかった。

あと、この作品のAudible版があるらしいんだけど、それはさすがに鬼畜すぎないか……?と思った。
Audibleにするところまで含めての戦略なのかもしれない。だとしたらすごすぎる。
「穢れた聖地巡礼について」も読まなきゃなー。畳む


#読書

佐藤マコト「サトラレ」を9年ぶりに読んでいる。
9年前もハチャメチャにおもしろかったが、相変わらず一気に読めてしまうおもしろさ。

周囲に自分の思考がダダ漏れになってしまうが、例外なく天才的な頭脳を持つ難病『サトラレ』の人たちを描くSF漫画。
本人にサトラレを告知すると、精神が崩壊し自殺してしまう恐れがあるため、サトラレを守るために対策委員会が組織されており、サトラレへの意図的な告知は犯罪となる。

しかし、突発的に自分がサトラレだと知ってしまう者もいて、その結果として無人島に隔離されたりもする。
ひとりひとりが、同じサトラレでありながら、まったく別の人生を歩んでいく様子が丁寧に綴られるところが大好き。

サトラレの心を守るために、周囲の人々にはなにができるのか。
そして、そんな人たちに、サトラレはどう報いるのか。

映画「トゥルーマン・ショー」が好きな人は、確実にこちらも好きだと思う。
2018年に新作が出ていたということを今更知ったので、これを読み終わったらそちらも読みたいな。

#読書

木爾チレン「二人一組になってください」を読んだ。
卒業式を目前にして、突如はじまるデスゲーム。
生き残る条件は、『二人一組』になること。ルールを破った者や、余ってしまった者は失格となり死ぬ。

ホラーとして、先が気になって一気に読んでしまった。
内容としては令和の「バトル・ロワイアル」で、個々の人物描写などは控えめ。
ひとりひとりが死んでいく直前の葛藤がひたすらに描かれていて、それ以外の要素は添え物かもしれない。

全体を通すとツッコミどころがかなり多いので、細かい部分は深く考えないほうがいいような気がする。
デスゲームものというジャンルがあまりにも定着しすぎていて、逆に「バトル・ロワイアル」を直に継承しているデスゲーム作品は減ってきているのではないかと思うんだけど、これはかなり近いマインドで書いているような気がした。
ジェットコースター的なスピード感はいいと思う。
ただ、自分は「バトル・ロワイアル」的な小説がやや苦手なので、この作家さんはもう読まないかもしれない。畳む


#読書

垣見隆・手塚和彰、五十嵐浩司、横手拓治、吉田伸八「地下鉄サリン事件はなぜ防げなかったのか」を読んだ。

スッキリする解答が提示されるタイプの読み物ではない。
当事者が多すぎて解釈や事実が語る人によってブレてしまうオウム真理教事件について、もっとも捜査の核心に近い場所にいた、当時の刑事局長にロングインタビューを敢行するという内容。
これまで発表された資料と、渦中にいた人物との証言を照らし合わせ、矛盾やブレを追いかけていく構成がおもしろい。

垣見さんの淡々とした語りのなかに、なにかを言えない葛藤や感情の揺らぎが見えて、ひとりの人生を大きく変えてしまった事件について考えざるを得なくなる。

地下鉄サリン事件に関する重大な資料の完成をめざした編者たちの執念も見えて、事件を紐解く上で、複数の資料を参照し、情報の取捨選択を行うことの重大さを理解させてくれる一冊でもあった。
ファクトチェックが必須なフェイクニュース時代にこそ読まれるべき、ニュースや情報について考えさせられる本だと思う。畳む


#読書

瀬尾まいこ「そんなときは書店にどうぞ」を読み終わった。
瀬尾さんの小説を読んだことがないので、このエッセイが瀬尾さん初読み。
関西人らしい、ノリツッコミとボケにあふれた、優しいエッセイ。
ダジャレ社長のダジャレもいい味を出していて、何度となく吹き出してしまった。


特に好きなのが、ストーンズ(とカタカナで書いているのもめちゃくちゃ好き)の松村北斗さんが出てくるくだりで、(最初シックストーンズだと思ってました。トーンズの前のシックスが見えてるの、私だけでしょうか? 何の現象?)という素朴な疑問が提示されたところ。
そうか、なんでみんなすんなり読めるんだろうと思ってたら、みんなには見えていないのか、あのSix……納得。

地味に好きなのは、社長とのLINEのシリーズ。
「書店巡りをエッセイにしたい」と言った瀬尾さんに対し、社長が「水鈴社のnoteに書きましょう」と提案したあとのこと。
「誰かには読んでいただきたいので、(会社の)ノートに書くのはどうかと思います」
と社長にマジでLINEしているのが好きすぎて、何度も見返してしまった。
「noteというのはこれです」と真剣に返してくれる社長もじわじわと笑える。

内容とはまったく関係ないのだけれど、個人的に思い入れのある映画館・イオンシネマ高の原が登場したのが嬉しかった。
瀬尾さんの娘さんが「映画、高の原か四條畷で見ます」と松村さんに言ったら、松村さんが「高の原? そういう地名があるんだね」と返してくれたというエピソード。
かつてあのあたりを根城にしていた身としては、「そうなんですよ!! あるんですよ!!」とでっかい声で言いたくなった。いいところなんだよなー、高の原イオン。畳む


#読書

柳沢小実「『自分ログ』で毎日が変わる 手帳のある暮らし」を読んだ。
手帳本は、デコ系、スピリチュアル系、ビジネス系など、いろんな種類があるが、これは女性向けかつ実用に特化した感じで、デコの話は少なめ。
手帳の見た目をよくするよりも、生活の中身をよくするというコンセプトなのが好みだった。
『ログ』という一本の芯がしっかりあるから読みやすかったなあ。
自分の手帳観ともそこまで食い違いがなかった。
手帳モチベを上げるのにも使えると思う。
あと、最近、ふせんを活用するのに興味があるんだけど、この方はかなり的確にふせんを使いこなしていて、参考になった。

#読書

うささ「耳がきこえないうささ ウワサのユニバーサルスポットをゆく」を読む。
耳が聞こえないうさささんが、だれもが楽しめるユニバーサルな場所をレポートするエッセイ漫画。
手話を主なコミュニケーション手段とするスターバックスや、耳の聞こえない店主さんがやっている飲食店、手話で行うよしもとのお笑いライブなど、盛りだくさんな内容。

それ以外にも、「耳が聞こえない人に向けた手話を、目の見えない人にどうやったら届けられるだろう?」という通訳者たちの取り組みを取り上げていて、普段意識していなかった領域に気付かされる場面が多かった。

障害の有無や年齢・性別にかかわらず、すべての人に優しい場所。
きっとそういうユニバーサルスポットは、そこに訪れるひとりひとりの人に優しさや寛容さを与えてくれると思う。
いつか、すべての場所がそういう優しさにあふれるようになればいいなと感じられる一冊だった。

#読書

スタンリイ・エリンの「特別料理」を文庫で購入した。
十年以上前から買わなきゃな~と思っていたはずなのに、なんだかんだと後回しにしていた作品。
一発目から表題作だったんだけど、あまりにも期待通りすぎて震えた。十年分の期待があったのに、それを悠々と超えていった。

後世の人たちは序盤の時点で「たぶん、そういうオチなんじゃない?」と思いながら読みはじめるだろうし、実際にオチは思っている通りのものなんだけど、オチまで読めている状態で読んでもめちゃくちゃおもしろいし、最後までドキドキするという。
あと、実際にそういうオチだったのかどうか、はっきりと語ってはいないところも好き(はっきりとは言っていないけど確実にそうだろうな、という含みがいい)。
これこそが、本物の名作短編なのでは……?と思った。
もったいないので、まだ全部の作品は読んでいなくて、電車内でちょっとずつ読んでいっている。畳む


#読書

品田遊「納税、のち、ヘラクレスメス のべつ考える日々」を読む。
「キリンに雷が落ちてどうする 少し考える日々」につづく、品田遊の日記のまとめ本。
最近、あまり本が読めなくなって苦しんでいたんだけど、これはするっと読めて、ちょっと安心した。
ADHDな他人の頭のなかをこっそり覗くという貴重な体験。前作につづき、すごく楽しめた。
なんとなく、1冊めよりもマイルドで読みやすかった気がする。
タイトルにもなっているヘラクレスメスの話がドラマティックでよかった。

#読書

藤子・F・不二雄「ミノタウロスの皿」を読む。
大人向け本格SF。そして鬱展開。
「どら焼き屋さん物語」で突然お店にやってきた、他の世界とはやや雰囲気の違うカワイイ女の子が気になっていたのだが、まさか、こんな鬱展開漫画の主人公だったとは……。
むかしから「トラウマになった漫画スレ」とかでよく見かけるタイトルだとは思っていたんだけど、こんな話なのか。
わがどら焼き屋のコンセプトが崩れかねない、とんでもない世界の出身だった。
終わったあとから知る、どら焼き屋の危機。

ラストシーン(オチ)も解釈が分かれそうで意味深だし、かなりアダルトな漫画だと思う。
F先生もこんな漫画を描いているんだなあ。
こうやって、どら焼き屋さん物語から入って、まだ見ぬF先生のドラえもんやキテレツ大百科以外の漫画に触れる人、けっこういるのではないか。ゲームの功績がすごい。

#読書

邑田「いつも心に7テンを」を読んだ。
パチンコ好きな作者が、自分の家の猫と過ごす日々を綴る猫エッセイ漫画。
ペットエッセイ漫画って、読者が求めている方向性がすでに定まっているジャンルなので、わりと似たような味に落ち着きがちだと思う。老舗的なジャンルというか。
この作品は「パチンコ好き」「オタク」という二点において特異性があり、オタクミームやパチンコ用語を駆使して猫との生活を描く、異質な存在感があるのがおもしろい。
登場人物全員をいつもちょっと口が開いている猫っぽいマスコットの絵で描いていて、実際の猫はリアルな猫として描いているところも好き。この絵柄がかわいくて癒やされるんだよなあ。

#読書

田中一行「ジャンケットバンク」17巻を読む。

急激に男の友情要素が増していった叶VS獅子神戦だったが、意外な結末に落ち着いた。
獅子神さんの急成長が読めて嬉しいと同時に、「もうこの漫画の主人公は獅子神さんでは……?」という疑問がわいてきた。人気もありそう。
常識人には常識人なりの戦い方があるという、感情移入しやすい展開になっていてよかった。

そして、単行本ジャンケットバンクのメインコンテンツともいうべきオマケ漫画。
今回も楽しみにしていたのだが、ホラーだった。
16巻みたいなほのぼのギャグを期待していたのに、まさかこんなものが待っているとは。
本当に信じられないんだけど、一応は主人公として登場していたはずのキャラが、こんなにキモくなること、ある……?
出番があるたびにキモさが増していく電卓さん、怖すぎる。
獅子神さんのマトモさをプッシュした直後に、電卓キモ漫画を持ってくるバランス感覚。
「オマケ漫画は獅子神さん主役のほのぼのギャグ漫画かな?」などと淡く期待していた人間を奈落に突き落とすスタイル、いいよね……。畳む


#読書

172回(2024年下半期)芥川賞受賞作・安堂ホセ「DTOPIA (デートピア)」を読む。
直近で読んだ芥川賞受賞作は「ハンチバック」、「おいしいごはんが食べられますように」、「ブラックボックス」など、読みやすくてエンタメ性の高いものが多かった。
「そういえば最近、芥川賞らしい作品を読んでいなかったな……」と思い返しながら手に取った「デートピア」は、かなり芥川賞らしさの強い芥川賞受賞作だった。

エロティックであり、バイオレンスであり、思想的でもある。
恋愛リアリティショーを通して社会を覗き見るような作品で、肉体の損傷と個人の感情と社会問題がリンクしていく感じは「そういえば芥川賞ってこんな感じだったな……」と思わせる。
正直、エンタメではないし、売れる小説では決してないと思うが、こういう個人の感情の爆発こそが芥川賞の醍醐味だったのかもしれない。
読んでいるあいだは、先がどうなるのかすごく気になって、一気に読み切ったけど、読み終わった瞬間に体力を吸い取られて疲れてしまった。

あと、ふと思い出して、芥川賞受賞作の読了数をカウントするスプレッドシートを作った。まだ11冊しか読めていなかった。
芥川賞は社会問題をうつしとる鏡のような存在でもあり、あまりにも古い作品は読んでも意味がわからないのではないかとは感じているので、新しめの作品から、気が向いたらマラソンしようかと思っている。
「バリ山行」とかは評判よさそうだから読んでみたいな。畳む


#読書

住吉 九「サンキューピッチ」の1巻を読む。
野球漫画なのだが、一日に三回しか全力投球できず、それが弱点となってしまうため、関係者以外にはその秘密を隠さなければいけないという、頭脳バトル的な作品となっている。
出てくるキャラがいちいち濃すぎて、スリル満点でおもしろい。
わりと価値観がドライで、あまり熱血ではないため、野球漫画っぽくはないなという印象。
2巻も楽しみだ。

#読書

葦原大介「ワールドトリガー」28巻。最高だった。
これは毎回言っている気がするけど、ワールドトリガーは常に最新刊が一番おもしろい。

香取隊にはなんらかの問題があるというほのめかしはかなり初期から本編中で行われていたんだけど、読者は「問題の原因は破天荒すぎる隊長であって、それ以外のメンバーは大丈夫」というミスリードをいつのまにか食らっていたんだなと……。
この展開、読者側の生き方にも刺さるんだよなあ。
タイムリミットがなく、ただ目的のために努力したつもりになっているだけで、目的の手前でずっと足踏みしているだけ……という状況、ありがちなのではないかと思う。

たとえば、「◯月◯日締め切りの新人賞に応募するために、それまでには必ず小説を仕上げる」、「◯月のTOEICでスコア◯点以上を取るために、TOEIC対策を詰める」、「春に海外旅行に行くので、それまでに外国語を習得する」といった努力はとても有意義。
だけど、「特になんの締め切りもないけど、なんとなく語学の勉強をやる」、「いつ完成させるか決めてないけど、なんとなく小説の下書きだけ書いておく」は、実は一歩も前に進んでいない可能性があるぞ、という。
なんというか、自分の心の弱いところを突かれた気がして、ウッとなった。
「前に進んでいるつもりが、ハードルの前で足踏みしているだけだった」と、「思っていたよりもハードルの高さが自分の背丈に合っておらず、超えられない壁であることすら気付けなかった」というダブルパンチが、非常に心に刺さると同時に、「いや、でも自分もこれやってそう!!!」という気づきがあった。恐ろしい。

まずは時間を区切って、目的設定してから努力をすること。
そして、自分に合ったハードルのサイズを確認すること……。
自分も気をつけようと思った。
本当に怒涛の鬱展開だったけど、ここからどうやって巻き返していくのか、めちゃくちゃ気になるなあ。畳む


#読書

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