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2024年7月18日(木)
2024年7月18日(木)
角川スニーカー文庫から2002年に発売された、古典部シリーズの第2作。
文化祭に出展する、クラス製作の自主映画を見せられる、古典部のメンバーたち。
ミステリ映画のはずなのだが、被害者が死亡するシーンで本編が終わっており、解決編が存在しない。
犯人は誰で、トリックはなんなのか? 脚本家の意図するものはなにか?
折木奉太郎はこの謎を解き、正しい解決編を導けるのだろうか?
2作目にしてここまで仕上がっていることがあるのか……!?と驚く。
「秋期限定栗きんとん事件」が本当に好きで、毎度、あの感覚を求めて米澤穂信を読んでしまうのだが、これはかなり近いのではないだろうか。
『青春』は、砕け散るからこそ美しいし、愚かだ。
ミステリとして非常に丁寧な筋立てながら、人間の心情をきっちり描いているのが興味深い。
また、『日常の謎』(あるいは『非・日常の謎』)という存在へのメタ的言及を行うために『日常の謎』を構築するという手法も、凝っていて読み応えがある。
『探偵』という存在が持つ暴力性や、他者の気持ちを顧みない愚かさなど、『本格推理』や『探偵』という枠組みへの批評ともなっており、非常に短くて読みやすい250ページのなかに、ここまで要素を詰め込んでいるのは凄まじいと思う。ちょっと後期クイーン寄りの雰囲気が好き。
ここから、奉太郎がどういう人になっていくのか、気になるなあ。畳む
#読書
2024年7月16日(火)
「これって……ジャンケットバンクそのものじゃないのか!?」と戸惑うほどに、ジャンケットバンクの原型だった。構成がそっくりである。
でも、ジャンケットバンクのほうが明らかにこなれているし、絵もすっきりしていて、こうやって徐々に作品がおもしろくなっていくのか……!という驚きがあった。
一応はダーツの漫画なのだが、登場人物全員がダーツを百発百中させられる技術を持っているという前提のもとに進んでいくため、早々にダーツの話ではなく心理戦の駆け引きになっているのが意外でおもしろい。
そういえば、ジャンケットバンクも、一流のギャンブラーはダイスの目を簡単に揃えられるよ、というシーンがあったなあ。あれはイカサマなのかガチなのかは不明だったけど。
1巻の終わりがトンデモ展開だったので、2巻以降を買おうかは悩んでいるのだが、この頭脳バトルは先が見たい。
#読書
2024年7月14日(日)
少年時代の話やアンガールズ結成の話から、昨年の婚約まで。
読みやすい、さっぱりとした文体で、自身の半生を振り返るエッセイ。
田中さんはバラエティなどでも、場全体を見回して気遣いをすることができる人だ。
そんな気遣いの源泉がなんだったのかを知ることができる、良エッセイだった。
かなり重めないじめの体験や、ヤンキーに絡まれた体験など、つらいこともしっかり冷静に書いてあって、強い人だな〜と思う。
自分を客観視する力があるから、平場での存在感を獲得できたんだろうなあ。
ひとつひとつの趣味をきっちり極限までやる、真面目で凝り性なところも好感度が高くて、やっぱり好きだなと思った。
私生活について、ネタになることはなんでもかんでも切り貼りしてエッセイを書くような芸人さんもいるけれど、田中さんは結婚相手の情報に関してはかなり徹底して伏せているような気がしているし、書くとだれかに迷惑がかかったりしそうなことは書いていない印象だ。
書いていいことと悪いことの境界線をしっかり引いているのが、このエッセイが安心して読める理由かもしれない。
相方との出会いの話が特におもしろくて、「あれは誰だ? キモい!」と「なんだあの細い人は! 今まで見た中で一番気持ち悪い」がお互いのファーストインプレッションだったくだりで大爆笑してしまった。
そんな運命の出会いがあるかよ!
#読書
2024年7月12日(金)
知略バトルかと思いきや、根本の部分がめちゃくちゃフィジカル頼りだったり、いつのまにか男と男の友情ストーリーになっていたり、予想もしないところからぐんぐんおもしろくなっていく。ぎゅっと凝縮されたエンタメの塊だった。
序盤は「頭おかしい人ばっかりで共感できないよ~!」という感じだったのだが、いつのまにか全員のことを大好きになってしまっていた。
ギャンブルするたびに友だちが増えていくのが気持ちいいんだよな……。
特に獅子神さんと村雨さんはいいキャラで、このふたりの出番が加速度的に増えていく様子に、読者の総意を感じる。続きが楽しみ。
#読書
2024年7月11日(木)
ほっこり人情もの✕グルメものという、普段あまり読まないジャンルに挑戦してみた。
丘の上にある『洋食屋オリオン』は、常連客たちを幸せな気分にさせる料理を出す、むかしながらのお店。
『誰も寂しくさせない』ことをモットーに、ひとりひとりの心に寄り添う料理を作りつづける。
トマトソースオムライス、パンチェッタ入りのカルボナーラ、丁寧に仕込みをした煮込みハンバーグなど、心を込めて作った料理が、お客さんたちの心を満たしていく。
ひとりひとりのお客の事情にフォーカスしつつ、お店にいる従業員たちの素性もすこしずつ明らかになっていく。
基本ハッピーエンドしかないので、安心して読める構成だった。
女性同士のマウンティング、いじめ、生活保護家庭での児童虐待など、実は重めなテーマもあるんだけど、オリオンがすごく優しいお店であることで、そこまで重く感じられないようになっているさじ加減が絶妙だった。
第4話が特に好きだったなー。こういう、ドラマティックに再会するお話に弱い。
あと、全部読み終わってから、一番最初の開店準備の部分を読むのも楽しかった。
お客パートではレストランの内部事情は語られなくて、本当にお客になった気持ちで読めるのが好きだったなー。ほのぼのした。
#読書
2024年7月8日(月)
よく似た別々の怪異の話が少しずつ重なり合い、その共通項を探すために調査を始めるというのは、最近のモキュメンタリーものでもよくある構造だったりする。最近の作品との類似や相違を探してみても楽しそうだ。
ひとつひとつの怪異の怖さがずば抜けていて、「やっぱり、三津田信三は一味違う!」という気持ちになった。
「近畿地方のある場所について」が好きな人には、ぜひこちらも読んでほしい。
特に後半の怪異が群を抜いて怖くて、ページをめくる手が止まらなかった。怖いのに、先が気になる……!
ラストの謎解きシーンは正直いらなかったかなとも思うのだが、全体を通してモチーフの不気味さが突き抜けていて、ホラー小説のオールタイムベストに入れたい出来栄えの傑作だった。
続編もあるらしいので、そちらも読みたいな。
タイトルの噛み合っていない感じや、不快度の高い書影も不気味で印象的。いい味出してるんだよなあ。
#読書
2024年7月1日(月)
第24回本格ミステリ大賞、第77回日本推理作家協会賞、第37回山本周五郎賞の三冠からの、第171回直木三十五賞候補でもあるというバケモノ作品。
これで直木賞も獲ったら凄まじいことになると思う。
イカサマありのギャンブルゲーム小説で、「グリコ」「じゃんけん」「坊主めくり」など、おなじみの遊びに新たなルールを加えて、読み合いの頭脳バトルに変えていくという作品。
非常に漫画的な発想であり、特にギャンブル漫画好きにウケそうなノリではあるのだが、デスゲームや暴力の要素はなく、高校生同士の対決なので読みやすい。
青崎有吾といえば、細やかな本格ミステリの名手という印象だが、まさか、こういうのも書けるとは……!という新鮮な驚きがあった。キャラも魅力的で、続編が読みたくなる。
読んでいて絵が脳内に浮かぶ感じで、たぶんアニメ化にも向いているだろうなー。
#読書
2024年7月1日(月)
田中一行「ジャンケットバンク」を3巻まで読む。
銀行の地下で行われる、命やら肉体やら人権やらを賭ける、危険なギャンブルゲームの話。
ちょっと絵柄が怖いんだけど、ギャンブラーたちの駆け引きが読み応えがあって、すごくおもしろい。
「カイジ」を途中まで読んだときに「Eカードと限定ジャンケンが好きすぎるから、こういうくだりをもっと延々と読みたいな~」と思っていた自分には、ぴったりの漫画。変なルールかつ一対一のギャンブルが次々と出てくる。
これは、アニメ化したら盛り上がる気がするなー。
ボイコミのCV内山昂輝が非常に印象通りだったので、アニメ化したら内山さんに声を当ててほしい。
#読書
2024年6月27日(木)
前から気になってはいたんだけど、一気に読むとめちゃくちゃおもしろかった。
やや渋めの邦バンドが好きな鳩野ちひろは、高校に入学して心機一転、ギターを買って軽音楽部に入ることにした。
中学時代のトラウマを払拭し、新たな青春を手に入れるためにあがくちひろの前には、個性豊かすぎる部員たちが次々と現れる。
バタバタと追い立てられるようにバンドを結成したちひろたちの青春の行方は……。
どこかで見たようでいて、どこでも見たことのない音楽部活漫画で、切り口がすごく楽しい。
大人数の部活動で、それぞれ自由にバンドメンバーを集めてバンドを結成するのだが、早々に人間関係でモメたり、たいして本気じゃないやつが抜けていったり、色恋沙汰でいなくなったりと、「そうそう、『ふつうの部活動』ってこんなもんだよね……!」というリアルな質感が半端ない。
部活漫画における部活動って、なぜか登場人物がみんな本気であることを前提に描かれていたりしがちだけど、ふつうは、運動部でもない部活にそこまでマジになるやつ、たぶん半分もいないんだよな……。
部活動というものが、特別な時間ではなく、学校における生活の一部なのだという認識が、部活漫画という媒体においては剥がれ落ちていることが多いのだが、「ふつうの軽音部」の部活動は、高校生活の一部におさまっていて、ベタベタしていないのがいいなと思う。
陽キャによる陰キャへの悪意なき見下しの描写も、それを悪い意味で捉えすぎてドツボにハマる陰キャの描写も、現実にありそう。
あと、軽音部でやる曲が有名バンドのコピーばかりで、オリジナル曲的なものはあまりなさそうなのも、「それっぽい」なと思う。
バンドものの漫画やアニメってオリジナル曲をやりがちだけど、やる気のない人たちが集まって組んだバンドで、そうそうオリジナル曲なんてできないのでは?という。
しかし、「ふつうの軽音部」のすごいところは、露悪的なテーマを取り扱っているわりに、登場人物たちはさわやかで、そんなに度を越して嫌な人はいない(※ただし、ヤバい人はいる)というところ。
露悪をやり抜くと、ギトギトとして読む人を選ぶ漫画になるのが当たり前であるはずなのだが、なぜか読後感は非常にさわやかで、全然ギトギトしていない。
はとっちが熱い努力家だというのが大きいとは思うけれど、それ以外の登場人物も、特別ヘイトを集めるような人はいない。
露悪的なのにキャラへのヘイトがないというのは、不思議で、矛盾しているように思える。でも、実際そうなんだよなあ。
「こいつヤバそうだな」と思うようなキャラでも、そのキャラの心情描写にフォーカスされると実は意外とふつうな考え方だったり、ハメられただけだったりと、過剰に嫌なキャラを作らないように、ヘイトの量を細かくコントロールしている気配があり、このテクニックだけで唯一無二の漫画だと感じる。
「部活で嫌なことがあったら、退部すればいいや。辞めてもなにも変わらないし」という身軽な雰囲気が随所に漂っており、「そこまでマジな気持ちで読まなくてもいいよ、たかが部活内の揉め事だよ」と読者に語りかけてきている気もする。
なお、一番の危険人物である厘ちゃんは、あまりにも考え方が異次元すぎるので、ヘイトとかそういう感情には至らない。
一人だけ異能力バトルの能力者が混ざっちゃっている感じで、こういうところもバランスいいなと思う。
厘ちゃんがもっと陰湿でリアルに嫌な人だったら、たぶんこの漫画の読後感は一変する。
「ふつうじゃない」厘ちゃんがもっと見たい。
続きも楽しみ。畳む
#読書
2024年6月24日(月)
読みながら「読んだことあるな……」と思っていたけど、2016年の3月に一度読んでいた。
こういうときに読書メーターの16年分の読書記録が生きてくる……!
さて、「氷菓」は、アニメ化もされた古典部シリーズの一作目であり、角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞している、米澤穂信のデビュー作でもある。
折木奉太郎と千反田えるの出会い、古典部の結成シーンから始まり、33年前に起きたある事件の謎解きまでを描く。
デビュー作かつ角川スニーカー文庫ということで、ややライトなノリではあるのだが、心情描写の手堅さはさすが。現在の米澤穂信作品に通じる情緒があると思う。
中盤まではやや退屈な日常の謎解きパートが続くのだが、終盤にかけて行われる、33年前の事件の概要を探る会議のくだりは楽しかったなー。
情報と仮説を提出し、別の人たちがソースを提示しつつ仮説を否定する。その後で新たな仮説を出す、また否定する……という建設的な議論の過程が気持ちいい。大人数で協力して謎解きをする作品が好きなので、このくだりだけでも読んだ価値があった。
2016年当時はさらりと流し読みしていた気がするんだけど、8年ぶりに読んでみると、昔より楽しめたかも。
#読書
2024年6月23日(日)
19世紀末ロンドン。
路地裏で浮浪児として暮らすリューイが出会ったのは、変わり者の探偵・シャーロック・ホームズだった。
リューイは、浮浪児を見下すホームズに憎しみを抱きつつも、ホームズの『猟犬』として働くことを決意する。
浮浪児と探偵。不可思議なバディの謎解き合戦がはじまる。
ホームズのパスティーシュはどうしても、ワトソンとホームズというバディにフォーカスした話になりがちなイメージがあるが、「ガス灯野良犬探偵団」には今のところ、ワトソンは出てこない。
ホームズは開業したばかりという設定なので、おそらくはワトソンと出会う前のホームズの話だ。
そして、主人公のリューイはおそらく未来の世界での「ベイカーストリートイレギュラーズ(ベイカー街遊撃隊)」の一員という。
ありとあらゆる人間から暴力を振るわれ、蔑まれ、それでも路地裏で生き抜いていく浮浪児たちの人生を追いながら、ホームズとの交流を描いていくのがおもしろい。
パスティーシュって、原典に忠実である必要はないけど、「原典におけるこのパートを切り取っています、こういうリスペクトがあってやってますよ」という目的が明確だと、作品としての質が上がると思う。
パスティーシュでありながらホームズを主人公にしない、ワトソンを配置しないなど、変則的でありながら、それでいてきっちり時間軸を決めて原典ホームズに差し挟む話をやっている。
この力加減がたまらなくて、続きが気になっている。
#読書
2024年6月21日(金)
座布団さえあればどこでもできる究極の話芸・落語。
突然、父の志ん太が破門された日から、朱音は噺家を志しはじめる。
個性的な仲間たちとともに目指す、噺家の頂点。
果たして、朱音の噺家としての道はどこへつづいていくのか。
超シンプルで王道。丁寧すぎるほど丁寧なジャンプ漫画。
落語シーンで、客席を呑み込んでいく噺家たちの迫力がきっちり表現されている作画がいい。
最後にドン!とキメの大ゴマでサゲや演目名が大写しになるのがかっこいいんだよなー。
特に「真景累ヶ淵 豊志賀の死」は急に異能バトルの世界に引き込まれたかと思った。
怖すぎてゾッとする。BLEACHの隊長格の卍解に匹敵する強さを絵面で見せつけられた。
キャラクターたちも個性的ながら落語を愛する熱い人たちばかりで、とても読みやすい漫画だと思う。つづきも気になる。
金属バットの友保さんのそっくりさんキャラがいるのだが、主人公のライバルとしてかなりの良キャラで、なおかつ出番も多くてびっくりする。性格も友保さんっぽい。
「これ、友保さんじゃない!?」と思いつつググった結果、「ヒロアカにも友保さんがいる」という謎情報を仕入れてしまった。
漫画キャラにしやすい造形なのか……?と無駄に気になってきた。
#読書
2024年6月18日(火)
10巻めの「ブギーポップ・パラドックス ハートレス・レッド」まで読み終わったけど、どの巻も物語の構造が違っていて、新鮮に楽しめる。
毎回、主人公が新キャラに変わるのが熱いんだよな~。
特定のキャラの人気に頼らなくてもおもしろいのがすごいし、肝心のブギーポップがほとんど出てこないのも凄まじい。
一応、主人公としてシリーズに名前を冠されてはいるけど、ブギーポップが主人公であったことは一度もない……という驚きがある。
かつて、中学生のときに一番好きだったのは「ペパーミントの魔術師」だった気がするけど、「VSイマジネーター」の退廃感も好きだし、あらためて読むと「歪曲王」も迫力あるし、「パンドラ」の疾走する青春模様も好きだし、正直、全巻おもしろいので一番が決まらないという。
上遠野浩平といえば、ジョジョ勢としては「ジョジョの小説を書いている人」「業界一のジョジョ好き」というイメージなのだが、ブギーポップもジョジョっぽさはかなりあるし、影響は色濃く出ていると思う。
統和機構のヒリヒリ感は5部っぽいなーとか、全体の世界観やテンションは4部っぽいなーとか、考えつつ読むのも楽しい。
「スタンド使いはひかれあう」ならぬ「MPLSはひかれあう」の魂を感じる。
「笑わない」は1998年、10巻目の「ハートレス・レッド」は2001年ということで、どれも20年以上前の作品なのだが、昔の作品でよくある「令和においてはこの価値観は古い」「倫理的によくない」「時事ネタが通じない」というような、気が散る描写がほぼないのも印象的だった。
もちろん、時代性を考慮しながら読むため、そういう描写があること自体は悪いことではない。ただ、度重なると我に返る時間が増えるのは確かで、なければない方が快適に読めるよなと思った。
おそらく、ライトノベルが萌えと完全に融合するよりも前の、硬派かつリアル志向の作品だから、違和感が少ないのかなと思う。
あと、メインテーマが青春の傷み、思春期の儚さというような、現代に通じるものなのも一因かもしれない。
主役だけではなく脇役やチョイ役にも切実な悩みがあり、等身大の人生があるという丁寧な拾い上げが、まるで本当の世界を眺めているようにリアルなのだった。
今のところ既刊が25巻ということで、まだ折り返し地点にも着いていないのだが、この調子なら全巻読破できそうな気がしてきた。今後も楽しみ。
#読書
2024年6月11日(火)
小市民シリーズ、ついに完結。
完結編にふさわしい、ミスリードを駆使したトリックが素晴らしい。
小佐内さんとの絆も次のステージへ移ったような感じで、すごくよかったなあ。
お話が一番好きなのは秋期限定なんだけど、ミステリとしては今回が一番クオリティが高かったかもしれない。
短くスッキリとまとまっているシリーズなので、アニメ化をきっかけに読みはじめる人が増えると嬉しいなあ。文体も読みやすいし、おすすめ。
#読書
2024年6月10日(月)
ブギーポップの思い出は一言では語り尽くせない。
中学生のころ、初めて読んだライトノベルであり、当時の自分の創作の源流でもあった。
ライトノベルの世界観としては非常にドライで残酷であり、キャラ萌えとはあまり縁のない感じが当時の自分としてはかなり斬新だったし、いまだに色褪せない。
「バッカーノ!」もそうだけど、群像劇かつ一人ひとりの登場人物へのウェイトが少なめなのが好きだったなー。
巻を追うごとにキャラ推しの要素は出てくるんだけど、そこまでベタベタしていない感じ、というか。
ブギーポップと再会できたのは、今回、Kindleで大安売りセールをしていたためで、これがなければ戻ってきたりはしていなかったかもしれない。
当時、ブギーポップを読んでいたのは確か14巻くらいまでで、そこから先はいつのまにか読まなくなっていたような気がする。
今から、当時の自分を追い越せるといいなー。
#読書
2024年6月8日(土)
待ちに待った沼駿先生の新作。
慣れ親しんだ定食屋の味がするぜ……!!
「左門くんはサモナー」のファンはみんなむせび泣きながら読んでいると思う。
クズだけどどこか憎めない主人公と、そんな主人公に振り回されつつも、意外とふてぶてしく生きるヒロイン……という構図は「左門くん」と同じなのだが、「左門くん」と比べると、シリアスよりもギャグ多めな感じになっている。
ギャグでぶん回しつつも、気づくといい話になっている、という展開が楽しい。
キャラ的にはまだまだここから、という体感だが、今後も新刊が出るのかと思うと非常に嬉しい。
#読書
2024年6月2日(日)
5/31 「サガ エメラルド ビヨンド 公式設定資料+攻略ガイド 翠の導きの書」
6/4 沼駿「超巡!超条先輩」1巻
6/4 川田大智「半人前の恋人」3巻
6/13 伊吹亜門「幻月と探偵」文庫版
6/13 汀こるもの「最強の毒 本草学者の事件帖」
6/28 今村昌弘「明智恭介の奔走」
近刊だけで、かなり充実の6月。どれを買おうかわくわくするなー。
ちょっと多めなので、いくつかは後回しにするかもしれない。
#読書
2024年5月15日(水)
単行本未収録短編を集めたものらしいが、クオリティはかなり高い気がする。雰囲気があまりにもいい。
今のところ、連城三紀彦は、短編のほうが出来がいいような体感があるなあ。
かなり長い時間をかけて読んでいるが、ちょっとした移動時間に世界観に没入できるのがかなり好き。
#読書
2024年5月8日(水)
かつて、芹沢と同じ夢を抱いた知られざる天才・原田が登場し、濃口らあめんを機に袂を分かったふたりの関係性が描かれる。
「再遊記」になってからはこういう感じの話が少なくて、「発見伝」「才遊記」と比べると情念のうねりが足りないかなと思っていたが、10巻でようやく、じっとりとした情念の話になってきて、「これだよ! 読みたかったのはこれ!!」という気持ちになった。
濃口らあめんという存在について掘り下げる話にもなっていて、目が離せない。
理想に殉じることを選んだ男と、現実と向き合うことを選んだ男が出会ったとき、なにが起きるのか。
藤本と芹沢の関係性が好きだった身としては、愛憎入り交じる原田との関係性がどこへ決着するのかはかなり気になる。
共感、嫉妬、失望が複雑に入り混じった、天才と天才のあいだでしか発生しない感情の応酬が見られて嬉しいな。
たぶん11巻はすごく荒れる展開になると思うので、ドキドキしつつ待ちたい。
#読書
2024年4月15日(月)
ここ最近読んだエッセイ漫画のなかではダントツでおもしろい。
増田こうすけ先生にしか書けない、独特なテイストの作品。
漫画家生活を描くエッセイ漫画って、締切に追われたり、アイデアが出なかったり、不摂生な生活をしていたり、クズだったり、編集とバトルしたり……というようなものが多いように思うが、「ギャグマンガ家めざし日和」にはそんな片鱗はいっさいない。
呼吸をするようにギャグマンガを描いていて、受賞までの苦労なども特になさそうなのが凄まじい。
嫌なことがあっても、必要以上に深く考えずに次へ行けるような前向きなところも垣間見えて、よかったなあ。
思考回路はすごく共感できる感じで、しっとりしたトーンが好きだった。
実生活のことすらも、まるでギャグマンガ日和の一幕であるかのように、冷静に俯瞰で描ききっているところがおもしろかった。
トントン拍子にデビューが決まるくだりで、いわゆる天才的な漫画家なのだろうと思わせるが、本人がいたって淡々としていて、嫌味なところがまったくないし、自分がすごいことをしているとも特に感じていなさそうなのが、すごく増田こうすけらしいなと思った。
#読書
2024年4月12日(金)
相変わらずスイスイ読める、気持ち悪さ強めのライトホラー&ミステリ。
問題編のおどろおどろしさは非常にいいのだが、解決編がかなり強引なため、ミステリとしてはイマイチだと思う。これは「変な家」「変な絵」の時点でそうだけど。
クイズやパズルのような話運びで、登場人物の姿がまったく見えてこなくて、それによって怖さも薄まっている気がする。
「カトリック教徒は人を殺すことはない。よって犯人ではない」などの牽強付会な推理の数々にはずっこけるしかない。
糸電話で話しながらセックスもかなり難易度高い。どんなシチュエーションなんだ。
ただし、雨穴作品は(Youtubeも含め)あくまでも軽いクイズやパズルのように楽しむのが正しいと思うので、こういう箇所に細かいツッコミを入れるのは野暮かな。
居心地の悪い雰囲気を楽しむための、ライトホラーノベル的な立ち位置で読むといい気がした。
ライトノベルとして読むには、題材が気持ち悪すぎるのがネックなのだが(児童虐待、性暴力、カルト宗教など)。畳む
#読書
2024年4月12日(金)
一応、読みかけの本はいくつかあるのだが……。三十冊には程遠い気がする。
漫画かなにかで稼ごうか、どうしようか、悩んでいる。
毎年、4月と5月はなんとなく憂鬱で、すべてにやる気が出ない。どうしてなんだろうか。
#読書
2024年4月3日(水)
ワールドトリガー!
暗号学園のいろは!
ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王!
今買っているジャンプコミックスはかなり少ないのに、一気に3冊出るという。いきなりどうした。
充実のゴールデンウイークになりそうだが、このあとで買うものがなくなりそうでもあるなあ。
#読書
2024年4月2日(火)
本当に今さらなマイブームなのだが、新本格推理以降の本格作品をメインフィールドにしてきたせいか、連城三紀彦は意外とノーマークだったんだよな。
今までに取りこぼしてきた作品のなかに、まだまだ自分のツボにハマるものがあるのだと思うと希望を感じる。
しかし、この登場人物たち、すぐに不倫するなあ。どうしてそんなに不倫するんだ。
#読書
2024年3月31日(日)
1986年に刊行された作品の復刊だが、令和に読んでも存分におもしろい。どんでん返しまみれの傑作短編集。
やや強引なトリックや、現在の視点から見ると古典的なトリックもある。しかし、連城三紀彦の凄まじいところは、しっとりとしたアダルトでハードボイルドな世界観、叙情的な文体で、トリックの強引さを強引と感じさせない手腕だと思う。
トリックそのものがすごいというよりも、トリックの魅せ方がとにかくうまいのだよな。
あと、濡れ場を濡れ場と感じさせない、異様におしゃれなセックスシーンも見どころ。脇を思い切り噛むとか、危険なことをしているような感じもあるのだが、それを異常だと感じさせない謎の説得力があって、世界観に呑まれる。
個人的ベストは「代役」と「ベイ・シティに死す」。特に「代役」のSFっぽさはかなりよかったなー。
80年代を感じさせるような描写は意外と少ないのだが、最後に収録されている「ひらかれた闇」はコテコテのヤンキー(?)が登場していて、急に「そういえば、80年代だったな……」と思い出させてくれる。
今年度を締めくくるのには最高の作品だった。また忘れたころに読みたい。
#読書
2024年3月27日(水)
筋肉少女帯のボーカルとして長年ライブシーンに立ちながらも、まったく楽器ができない、楽譜も読めないオーケンが、ギターに目覚めるという私小説的エッセイ。
どのタイミングだったかは忘れたけれど、オーケンのエッセイには多少の誇張やフィクションが混ざっていて、完全なノンフィクションではないよ、というような話を本人がしていた気がする。
「FOK46」はそのフィクション性に自ら着目して、あえて逆手に取り、私小説として仕上げたエッセイ……というふうに読めると思う。
タイトルからはほのぼのした印象を受けるが、内容はかなりシリアスで、40代のオーケンが体験した身近な『死』について、淡々と述べられている。
その『死』に背中を押されるような形で、ギターへとのめりこんでいく疾走感と、焦燥感。
作中でも述べられているが、40代での他人の『死』には特別な重みがあるのではないかと思う。
50代を超えれば、誰でも病気になるリスクがあり、周囲で亡くなる人も増えるだろうが、40代はまだそういう年齢ではない。しかし、30代よりは確実に死に近い。
そんな過渡期ともいえる年代のなかで、立て続けに体験した友人や家族の死。
オーケンなりのユーモアを交えつつ、死を受容し、前向きに生きていく姿に勇気づけられるし、若い頃のオーケンのエッセイを読み込んでいればいるほど、彼がこの文体を崩さずに、次のステージへと駒を進めていることに驚くはずだ。
この本は2014年発売で、すでに10年前の話なのだが、久しぶりにオーケンのエッセイを読んだ者としては、昔と変わらないオーケンのまま、着実にいい年のとり方をしていることがすごく嬉しい。
#読書
2024年3月27日(水)
「世界でいちばん透きとおった物語」と同じようなワンアイデア系なのだが、「世界でいちばん透きとおった物語」のほうが構造的にはよくできていると思う。
「世界でいちばん透きとおった物語」は、謎を提示し、その謎の答えとしてトリックの内容が明かされる構造になっているが、「逆転美人」はそういうふうにはなっていないと感じられるからだ。
以下、やや批判的な感想。
ミステリーには魅力的な謎が必要であり、それに付随する問題提起や誘導も重要な要素だ。
トリックをうまく見せるには、そこにトリックがあるということを明確に読者に示す必要がある。「逆転美人」のトリックはたしかに凄まじい労力がかかっていることが示唆されてはいるが、読者への謎の提示はほとんど行われていない。
途中、些細な違和感がいくつか提示されるのみで、明確な論理を帯びた推理パートはないに等しい。
読者は読み終わってから、そこにトリックがあったということを知らされる。
そこには、トリックを解くために必要な問題提起のパートが欠落している。
もちろん、このトリックそのものは非常にクオリティが高いのだが、もうちょっとうまい見せ方があるのでは?という気持ちがかなり強い。
トリック以外の描写に不愉快なものが多く、人物にもまったく惹かれないというのもあり、やっぱりワンアイデア系はアイデアの部分以外が手抜きなものが多いかな……という体感がある。
最後に読者自身が読み解く最後のメッセージが、手記の世界を揺るがすような内容だったら、もうすこし評価が変わっていたかもしれない。この内容があまりにも普通だったので、「わざわざ読み解くほどのものではないな」と思ってしまった。
それでも、大どんでん返しのアイデアが気になって、ついつい読んでしまうのだった。畳む
#読書
2024年3月13日(水)
「このミステリーがすごい!」2003年版の7位ランクイン作品。
吹雪で交通網が麻痺した埼玉県笠井市で、汚職疑惑のある政治家の孫娘が誘拐された。
被害者の自宅には盗聴器が大量に仕掛けられており、警察は家の中に立ち入ることすらできない。
異常な状況のなかで、追い詰められていく母親と警察官たち。
彼らははたして、誘拐された少女を取り戻すことはできるのか。
いやー、変な話だった。
視点がいろんなところに飛びまくり、話もとっちらかり、なにが主眼なのかわからない迷宮へと徐々に入り込んでいく。
でも、この視点飛ばしは文章が下手だから起こっているのではなく、『人間動物園』という主軸を表現するためにわざとやっているのだと思う。
こんな面倒なことを意図的にやっているというのが、連城三紀彦らしすぎる。
全編通してあまりに読みづらいので、何度か挫折していたのだが、ようやく最後まで読めた。
ラストシーンは連城作品らしい美しさ。
ミステリ的にはトンデモ寄りの展開なのに、どこか叙情的なのがいいな。
人間ドラマとしてはかなり濃厚。
連城三紀彦にしか書けない、唯一無二の世界観を堪能した。
#読書
2024年3月12日(火)
初出が2003年ということで、「令和の倫理観に照らすとちょっとダメでは?」と思う箇所もあるが、いつものはやみねかおるのテンションで、安心して読める。
本人は自分を普通だと思っているが、実際のところはかなりの変人である語り手・井上快人。
幼なじみの川村春奈は本物の霊能力者で、霊能力を恐れない快人に好意を抱いているようだ。
快人は、大学に入学するにあたり、親からの仕送りを拒んだ結果、家賃月1万円の今川寮に住むことになってしまう。
変人だらけの今川寮のなかでも、もっとも得体のしれないオカルトマニアの変人・長曽我部慎太郎に目をつけられてしまったふたりは、「あやかし研究会」という部活に入会させられてしまう。
不可思議現象を研究しつつ、日常の謎を解いていく「あやかし研究会」。
長宗我部先輩と快人は、事件の謎を解くことができるのか。
本物の霊能力者というチートキャラを介しつつ、オカルトを理論で紐解いていく……という魅力的な導入で、なかなか好きなお話だった。
はやみねかおる作品の登場人物で大学生たちがメインというのはなかなか珍しい気がして、そこも新鮮で好きだなあ。
非常にもったいないのは、「長宗我部先輩は何者なのか?」という最大の謎が解かれないまま終わってしまうというところ。
大学に8年間通っている仙人のような先輩で、どうやらオカルトの力で人格が変わってしまうらしい、というフリだけを残し、謎めいたままフェードアウトしていくのがずるい。
夢水清志郎ポジションなんだと思うと、謎めいているほうが雰囲気としてはいい気もするが。
たぶん、シリーズ化していたらさらにおもしろくなっていたのだろうなーと思うし、そうなっていないからこそ、謎が多くて魅力的な人物に見えるというのもありそう。
今からでも続きを書いてくれないかなー、と思わずにはいられない。
「涼宮ハルヒの憂鬱」的な感じの、オカルトとミステリをミックスした部活ものとして、リブートしてほしいなー。もっとこの三人が見たい。
#読書
その人の問題を解決するための旅を提供する、トラブル旅行社シリーズの第一作。2020年刊行。
安定の廣嶋玲子さんなので、おもしろくないわけがないのだが、今回は挿絵もめちゃくちゃかわいくて、描き込みが細やかで、しかもカラー挿絵多数ありという嬉しい一冊。
家族みんなで飲もうとしていた珍しい外国のジュースを、気づかずに飲み干してしまった時川大悟。
このままでは、食いしん坊の姉に怒られてしまう。あわてて街に探しに出かけるが、同じジュースはまったく見つからない。
そんな大悟のもとに、ふしぎなフクロウが現れる。
フクロウに導かれてたどり着いたのは、問題解決のための旅行会社であるトラブル旅行社。
トラブル旅行社が提供する「砂漠のフルーツ狩りツアー」に参加すれば、まったく同じジュースを作ることができるという。
大悟は、わけもわからぬままに、砂漠へと旅立つことになるのだった。
「砂漠のフルーツ狩りツアー」というかわいらしいタイトルからは想像もつかない、砂漠のキャラバンでの過酷な旅の様子がおもしろい。
唯一、料理が得意な主人公の大悟が、その料理を武器に砂漠で生き抜いていくという展開も痛快で、気持ちよかった。
料理の内容も、日本の料理をそのまま出すのではなく、現地の食料で作れるようにアレンジしているのが詳細に描写されていて、おいしそうだった。サボテンのジャム、いいなー。
今まで読んだ廣嶋玲子作品の中で一番好きかもしれない。
こんなにおもしろいのに、まだ3冊しか出ていないらしい。2巻以降も読みたいな。
#読書