タグ「読書」を含む投稿[254件]

雨穴「変な地図」を読む。
「変な」シリーズ第四弾。

以前よりも気持ち悪さやグロさが減って、ミステリ要素がやや増えた。
今回はいつもと違う毛色の話で、栗原の過去が語られる。
一日あればサクサク読める、スナック感覚ミステリだった。

毎回、ミステリファンとしてはロジック弱めで物足りない。ちょっと論理的に怪しいな~という部分が多い。「戦乱の世」(戦時中のこと?)とか、言い回しもやや違和感あり。

ただ、このシリーズは大ブームのなかで小学生が読んでいたりするらしく、ミステリ入門書としては読みやすくていいだろうなと思う。
個人的には雨穴さんのミステリよりもYouTubeでやっているホラーが好きだから、ホラーの本も出してほしいな。畳む


#読書

又吉直樹/ヨシタケシンスケ「本でした」を読んだ。

ちょっと難しい本を読めない気持ちのときにちょうどいいかもしれない、ライトな読書賛歌の本。
本の一部分から、もとの本を復元できる二人組が、いろんな本を復元していくという大喜利的な流れから、最後は驚きの事実が……というお話。
前回の「その本は」が好きだった人はまた楽しめるのではないかなあ。
ラストでちょっといい話をぶっこんでくるのがいいんだよな。

最近の芥川賞作家で、こういうポップな活動をしている人って珍しい気がするなあ。
羽田圭介もわりとポップ寄りではあるけど、それ以外だとあまり思いつかないかも。畳む


#読書

安部公房「砂の女」を読んだ。
読んだことのなかった名作を読むシリーズ。
第14回(1962年度)読売文学賞、1967年度最優秀外国文学賞受賞。

昆虫採集をするために砂丘の村に降り立った仁木順平は、住人たちの策略により、砂の穴の底にある民家に閉じ込められてしまう。そこでは、ひたすら砂かきをすることが生業となっており、住人たちは仁木にも砂かきをやらせるつもりだったのだ。民家で暮らす寡婦との奇妙な共同生活がはじまる。
仁木は抵抗し、何度も脱出を試みるが、どうしてもうまくいかずに連れ戻されてしまう。
彼はもとの生活に戻ることができるのだろうか……。

砂に埋もれながら暮らすという非現実的な舞台設定なのに妙にリアルで、読者の口の中にまで砂が入ってくるように感じられる。
どうすれば脱出できるのかというサスペンス、女との極限共同生活の果てに芽生えてくる愛情、人生ってこんなものかもしれないという諦念。
ひとつひとつがあまりにおもしろすぎて、こういう圧倒的な存在感こそ、名作の証なんだなあと思った。
現代に読んでもめちゃくちゃおもしろい。特にオチが大好きすぎるなあ……。
年末にこれが読めてよかったなあと思う。映画版も気になるところ。畳む


#読書

松本渚/大久保一彦/久部緑郎「文豪ナツメは料理人が嫌い」を読み終わった。全3巻。

少し前に2巻まで読んで、存在をすっかり忘れていた漫画。
カワイイ女の子(なお、実際は変な人ばかりであまりかわいくはない)に囲まれまくった芹沢達也っぽい料理通のおじさんが潰れそうな料理店をコンサルして立て直すぜ~!というような話。

原作が久部緑郎ということで、立て直しパートは「らーめん才遊記」のテイストそのまま。ここは満足感があるのだが、サイコ萌えキャラとでもいうべきメインキャラの女子たちに現実味がなく、世界観の構築に失敗している気がする。

1巻はまだ大丈夫そうだったのだが、2巻、3巻と話が進むにつれて、お店のパートとメイン女子キャラのパートのリアリティラインが噛み合っていない形になっていく。だんだんとお店パートも雑になり、打ち切りっぽいエンドへ。
ただ、3巻終盤の風呂敷のたたみ方は非常によかったと思う。こんなにきれいにまとまるとは予想できなかった。
これによって読後感がかなりよくなった。
このゴール地点を最初から決めていたとしたらすごいな。畳む


#読書

夢のなかで、三島由紀夫の「豊饒の海」を読まなければいけない!今すぐに読まなければ!と妙に慌てていた。

出先であるにもかかわらず、最寄りの図書館に駆け込んで読もうとしていた。
いったい、なにがあったのだ。

起きてからも、なんとなく読まなければいけない気がしている。読むか。
三島由紀夫は中高生のときにハマっていて、「金閣寺」「仮面の告白」「潮騒」あたりは読んだ。
「豊饒の海」は長すぎるせいか、読んでいなかったなあ。
今読めば、なにかが変わるだろうか。

#読書

大橋薫/大槻ケンヂ「くるぐる使い」を久しぶりに読み直す。

原作小説を丁寧に漫画化しており、「くるぐる使い」以外のオーケンの作品のエッセンスも取り入れながら、美麗な絵で紡がれる残酷な悲劇が素晴らしい。
超能力を持った狂人の少女(くるぐる)を見世物とし、大金を稼ぐ「くるぐる使い」となった主人公が、自らの外道の所業に呑まれていくさまを描く。

小説の漫画化って、その人の想像している小説世界を壊すこともあるから、繊細なジャンルだと思っている。絵のない世界から絵を作り出すということは、ある意味では漫画のアニメ化や実写化よりも創造性が強い儀式なのかもしれないと思う。

「くるぐる使い」は原作を踏まえた上でアレンジしていて、丁寧に作品と向き合っているのが好きだ。
オーケンを大好きな人が描いたのだろうなと伝わってくる漫画で、愛を感じる。

#読書

矢樹純「撮ってはいけない家」を読み終わった。

非常にロジカルな謎解きホラー作品。良作だと思った。
気になる謎が複数提示されたうえで、ひとつひとつ丁寧に解決されていくのがいいなあ。
どちらかというと謎を解いていく気持ちよさが上回ってしまっているので、そんなに怖くはない。

なお、掲載誌はメフィスト。最近のメフィストのことをあまりチェックしていなかったんだけど、こういうおもしろい謎解き作品がまだまだメフィストに載っているということに安心した。嬉しい。
序盤のなにもわかっていない段階はすごく怖かったのだが、全貌が見えてくるにつれて怖くなくなる。
論理をガン無視したオチにすると「オチはないの?」と言われてしまうし、怪異が論理的すぎると怖さが足りなくなるというところが、この手の謎解きホラーものだとバランスが難しいよなあ。
解決方法も論理でぶん殴る感じだったんだけど、その論理で殴れば怪異の問題が解決できるという根拠が薄くて、そこはちょっと惜しい気がした。
オチはあまりに美しくて陰鬱で大好き。このオチのために紡いできた物語だったと思う。畳む


#読書

ミールスが食べたいなと思いたって、東京メトロ九段下駅へと向かった。
辛くておいしいミールスを混ぜ混ぜしながら食べたあと、せっかく九段下に来たんだから、なにか寄り道してから帰りたいなと思う。
でも、九段下ってなにがあるんだ? まったく知らない。周囲を見渡しても、オフィス街と学生街が広がるばかりで、観光スポットが見当たらない。
ChatGPTに聞いてみたところ、神保町まで歩いていけるとのこと。
じゃあ、行くしかないか。神保町!

神田・神保町周辺のイメージといえば、頭上に通った高速道路である。九段下から、ひたすら高速道路をたどっていったら、すぐに神保町に着いた。パケットの残量が苦しいので、ナビを使わずになんとなくで歩いていったのだが、シンプルな道筋なので迷わずに済んだ。
神保町はかなり久しぶり。数年ぶりかなあ。
いようと思えば一日中滞在できるスポットだが、もう午後なので、行きつけのお気に入りの店に向かった。
娯楽小説の取り扱いが多い店で、初めて神保町に来たときから、ここにだけは必ず寄るようにしている。
店員さんたちがレジ前で話しながら本を整理していた。
ユメキュウの売上がいい、というような話をずっとしている。しばらくして、夢野久作のことだと気づいた。そんな呼び方だったのか。
ヨコミゾとユメキュウの売れ行きがとてもいいらしい。こんな古本屋がまだ日本に存在しているということが嬉しいなあ、と思いつつ、推理小説を四冊ほど購入して帰った。

ほしいものがたくさんあって迷ったけれど、高木彬光を二冊、泡坂妻夫を一冊、カーを一冊。実はカーは初めての購入かもしれない。
積読がたくさんあって、いつ読めるかはわからないが、このあたりのラインナップはなかなか新品では買えないから満足感ある。
特に、高木彬光はそのうち全冊揃えたい作家のうちの一人。

#読書

青山美智子「チョコレート・ピース」を読む。
以下、ふわっとしたネタバレ。

チョコレートに関するさまざまな人間模様を描くショート・ショートストーリー……かと思いきや? という、いつもの青山さん方式の話だった。
青山作品を読み慣れていると、「たぶん、いつものやつが来るんだろうな」と身構えているので、素直に楽しみきれないところはある。
このパターンじゃないやつもたまには読みたいなと思う。

いつもよりかなりライトかつ甘々な感じで、「これはティーン向けなのでは?」と思っていたが、実は「anan」での連載をまとめたものということで、ライトさにも納得。
たしかに、女性雑誌ならこれくらいライトなほうがいいんだろうな。
やや物足りず、もっと大人向けなテンションの作品が読みたくなった。
「赤と青とエスキース」が好きすぎるので、これを超える青山作品を探したいんだよなー。
また、別のも読もう。畳む


#読書

葦原大介「ワールドトリガー」29巻を読了。
ふわっとしたネタバレありの感想。

ようやく閉鎖環境試験が終了。いや~、長かったな。
実際、「閉鎖環境試験が長すぎてやめた」と言っている人もちょこちょこ見かけるけど、個人的にはもっと見ていたかったなあ。
ここまで、ひとりひとりのキャラクターがどういう人物なのかということを丁寧に描いてきているわけだけど、閉鎖環境試験はその積み重ねへの答え合わせとしてすごく気持ちのいい話だった。
完璧なように見える人にも裏側に欠点があり、外側から冷徹な評価が下される。
当たり前だが、完璧な人なんていないのだ。

「この人ってこういう人だよね」という読者のイメージと、A級隊員たちからの「こういう人であるなら、こういう問題点があるよね」という評価が交わるとき、まったく新しい視点とおもしろさが生まれる。
閉鎖環境試験は、いわば、23巻までの物語を読んできた読者へのご褒美のような存在だと思っている。
ボーナストラック的なイメージもあって、23巻までを読んでいない人がいきなりここを読んでも、たぶんよくわからないと思う。少なくとも、試験に参加しているメンバーがどの隊のどういうポジションの人なのかという知識は必須。
ここからは新たな試験が始まるわけだけど、次はどんな試験になるのか、気になるなあ。

みんなの新たな一面が見られてすごくよかった閉鎖環境試験なんだけど、一番印象的だったのは水上先輩と諏訪さんかなあ。
水上先輩のことを今まであまり意識していなかったので、「この人、こんなクセ強な人だったんだ!?」という驚きが大きかったなあ。
みんなの欠点が露呈していくなかで、諏訪さんの欠点だけがほぼ出てこなかったのは逆に怖かった。諏訪さんの株がストップ高になってしまう……! 年齢のわりに人間ができすぎている。

29巻ではイコさんが好きすぎて困った。生駒旋空はコピーできないっていうくだりもめちゃくちゃいいんだよな……実はすごい人かもしれないイコさんから目が離せない。
能力的に優れている部分は今回はあまり出てこなかったけど、遠征という極限の環境に必要なのって、イコさんや太刀川さんみたいな底抜けの明るさを持つ素直な人なんじゃない?と心から思う。
あと、地味に成長したよなあと思うのは香取さんだったり。閉鎖環境試験は香取隊の成長の物語でもあったんだよなあ。畳む


#読書

クワハリ/出内テツオ「ふつうの軽音部」9巻を読む。

ここへきて、水尾くん掘り下げ回か~~い!!!と盛り上がった。
はとっちのなかの桃ちゃんと厘ちゃんのイメージがひどすぎて笑っちゃった。
「殺す殺す殺す殺してやるゥ~~~~!!!」がテンポよくて好き。神殺しの厘ちゃん、正直見たい。

そして、8巻からの流れで指川先生と仲良くなってるの、地味にお気に入りの展開だったり。
8巻好きすぎて、9巻は「誘惑」をBGMに流しながら読んだという。先生、また出てきてほしいな。
そろそろ1巻から順番に読み直したいなと思いつつ、今回も一瞬で読了。続き楽しみ。畳む


#読書

ずっと気になっていた、エルヴェ・ル・テリエ「異常【アノマリー】」を読むぞ~! 楽しみ~!
と意気込んだのはよかったのだが、そういえば、ハヤカワ・ミステリ文庫に合うブックカバーがなかった。
カバーをつけようとして、初めて気づくという。
つるつるしたきれいなカバーと帯なので、できたらカバーをつけたいなあ。
今月は散財しすぎているから微妙なんだけど、通販しようか悩む。

#読書

花田菜々子「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年のこと」を読んだ。

波瀾万丈でドラマティックな実録本。
さまざまな人がマッチングする出会い系サイトで、ひたすらに相手に合いそうな本をおすすめしまくるという、嘘みたいな本当の話。
一応、恋愛目的でない人もいて、同性と会うこともでき、友だち作りや人脈作りに利用している人もいるサイトらしい。
当たり前だが、ヤリモクや変態も一定数いて、いろんな種類の人がひしめいているカオスな空間。

別居中の夫との関係の悪化、そして大好きだった職場・ヴィレッジヴァンガードが本好きにとって居心地のいい場所ではなくなってきたという焦燥感に突き動かされ、本が大好きな自分が、これからどう生きるべきなのかを追いかける、思考の旅に出る。

自分の人生に本当に必要なものはなんなのか。
夫との関係をどう精算するべきなのか。
ヴィレヴァンを辞めて、その先に新しい仕事を見つけられるのか。
迷いながら、知らない人とカフェでひたすらに出会いつづける。
その先にある、人生の答えとは。
出会った人のなかには、一生ものの友だちになれる人もいれば、気が合ったのに一度しか会わなかった人もいる。
まるでこの世界の縮図を見ているようで、心が躍った。

自分もまた、かつてのヴィレッジヴァンガードが大好きだった人間なので、最近のヴィレッジヴァンガードが、はぐれもののための風変わりな本を売る場所ではなく、かわいいキャラの雑貨やアニメの推し活グッズを売る店になってしまったことは非常に残念に思っている。いつのまにか、ヴィレヴァンの本のコーナーにはめったに行かなくなったなあ……。
業績もよくないらしいし、なかなか厳しい局面に立たされているのだろうな。

なお、この作品はドラマ化もされており、サイトで出会ってよき友人になった遠藤さん役は森崎ウィン、夫役は竹財輝之助だった。
竹財さんってやっぱりこのポジションなんだ……!と納得感があった。なぜか破局が似合う。
ドラマの中身、どんな感じなんだろう。

わたしたちは狭い世間のなかで苦しんで右往左往しているけれど、一歩外に出れば、自分で思う以上にさまざまな人がいて、それぞれに別の生き方がある。
出会い系サイトでの出会いの先にあるかもしれない人生のヒントを探す、長い長い旅。
手元にある本を通して、その向こうにだれかの人生の真実を見つける。そんな壮大な一冊だった。畳む


#読書

マンスーン「無職、川、ブックオフ」を読んだ。
オモコロライターのマンスーンさんが、30歳まで無職だった自分の人生について語るエッセイ。
独特の文体、詩情のある文章と、無職という特殊な状況がうまく噛み合っていて、じんわりしみるエッセイだった。

おもしろいのは、料理に対して非常にアクティブで、凝った海苔弁当を作ったり、チャパティを焼いたり、ちゃんと油で揚げたポテトチップスを夜な夜な親に隠れて作ったりなど、無職らしからぬ丁寧な調理をずっと行っているところ。
こういうマメなところが無職脱出につながったのだろうか。

無職って、意外と詩的な状態なんだな……と新しい発見ができる一冊だった。

#読書

村田沙耶香「となりの脳世界」を読んだ。
最近、小説にハマっている村田沙耶香さんのエッセイ。

小説作品がかなり尖っているけど、ご本人はどんな方なんだろうか?と気になっていた。
とても愛らしくて、ちょっと天然で、それでいて小説に含まれているあの尖りの片鱗は感じられる。めちゃくちゃ好きなテンションだった。
今年読んだなかでナンバーワンのエッセイかもしれない。
かわいいのに、どこか異様で、あの世界観がちょこちょこ見えるのが最高。

かつて好きだった少年漫画の主人公の話、すごく気になるんだけど、誰のことなんだろう……。
この漫画かな?と思う候補はある。
ここに出てくる条件である程度絞れそうだけど、よくわからず。めちゃくちゃよさそうな漫画なので、読んでみたいなあ。

文庫版だと加筆もあるらしくて、文庫でも読みたくなる。畳む


#読書

芦沢央「嘘と隣人」を読んだ。
第173回直木賞候補作のイヤミス短編集。
「火のないところに煙は」がおもしろかったので期待しすぎたのか、やや肩透かしだった。

イヤミスとしてはよくできていると思うんだけど、どんでん返しをすることによって、それまで読者が心のなかで構築していた感情のストーリーが崩れ去ってしまうため、イヤミスのイヤの部分が削がれるタイミングがあって、もったいないなと思った。もっとイヤミス部分にがっつり振ってほしかった。
抱っこ紐のバックル外し事件、外国人就労差別問題など、社会派っぽい題材に触りつつも、あまり掘り下げていないのも物足りなさが残った。

これで、第173回直木賞候補作を半分読み終わったことに。
あと3作品で全制覇できるし、読んでみようかな。
ただ、大長編っぽいのが残ってしまっているので、挫折しそうな気もする。畳む


#読書

村上春樹「猫を棄てる 父親について語るとき」を読んだ。
村上春樹をあまり読まない人生を送ってきた。
たまには、なにか読むか……ということで、一日で読めそうなボリュームのこちらをチョイス。
自伝的エッセイで、ハルキ・テイストではない話だが、好きだったなあ。

村上春樹が、そんなに仲のよくなかった父について、淡々と語っていくというエッセイ。
主観的な情報ではなく、父親についての客観情報をもとに家族の歴史を解説しており、エッセイなのに、感情が控えめですごく丁寧に読ませる。

家族エッセイって、仲のいい人(あるいはすごく悪い人)について語らなければいけないような先入観があるけれど、実はそんなに仲がよくなくても、距離感があっても、物語はあるんだぜ、という肩肘はらない感じも好きだった。
親と仲がよくない人、そんなに交流していない人はきっとそれなりにいるはず。
だけど、やっぱり、他の人と比べてしまって、その事実自体に引け目がある人は多いと思う。
でも、仲のいいばかりが家族ではなく、別に仲よくなくてもいいんだ。そこにはたしかに、思い出がある……と当たり前のことを確認させられる。そんなあたたかいエッセイだった。畳む


#読書

上遠野 浩平「ブギーポップ・ウィズイン さびまみれのバビロン」を読んだ。
シリーズ18冊目なのだが、どうやら話の間に入っている外伝がたくさんあるようで、「意味ありげに出てくる知らないキャラ」が増えてきた。上遠野浩平作品では知らない人が急に出てくるのはよくあることなのだが、そろそろ外伝を読まないとまずいかもしれないという気持ちもある。
と思いつつ、やっぱり本編が気になって、本編を読んでしまうのであった。外伝もたぶん買ってあるはずなのだが、つい。

さて、「さびまみれのバビロン」は、すでにこの世にはいない『イマジネーター』水乃星透子の影響を受けたまま、運命に縛られている者たちの物語。
お話としては原点回帰感があり、イマジネーター好きとしてはおいしい巻だった。その代わり、統和機構の話は少なめ。
死してなお、あまりにも強大な『世界の敵』でありつづけている強キャラ感がたまらないんだよな。
衰退したバビロンの街と、すでにいない水乃星透子にすがる者たちの姿を重ね合わせているタイトルもよすぎる。

次に本編を読むか、そろそろ外伝に行くか……悩みどころだ。とりあえず本編全制覇したい気持ちもある。畳む


#読書

村田沙耶香「信仰」を読んだ。
「世界99」と共通の設定もちょこちょこあって、もしかするとプロトタイプ的なポジションなのかもしれない。
短編集なので、「ここから先が見たいのに!終わっちゃった!」と思う話もあり。
でも、基本は社会を裏側から見られる村田ワールド全開で、楽しめたなあ。
自分のクローンたちと暮らす「書かなかった小説」が一番好きかもしれない。
一日でサクッと読める感じもよい。
ゆるやかに村田沙耶香マラソンをはじめようかと思っている。

#読書

村田沙耶香「世界99」、読み終わった。
凄まじい質量とぶっ飛んだ世界観で脳をぶん殴る、とんでもない小説。
後半はやや失速したかもしれない部分もあったけれど、着地点はすごく納得。

「男」という性的な加害をする存在、「女」という加害される存在……という対立の軸の中に、「では、『女』の下にもうひとつ性別があったら、どうなるか?」という思考実験の話だった。
ただ、それ以外にもテーマはいくつもあって、性別の話はその一部分でしかないのだけれど。

外国人差別、感動ポルノ、性差別、性加害などなど、さまざまな社会問題がごった煮となり、巻き起こるカオスのなかで読者も現実と向き合わざるをえない。
読み終わったあと、世界の見え方が変わる。
そんな小説だった。畳む


#読書

濱田祐太郎「迷ったら笑っといてください」を読んだ。
R-1ぐらんぷり2018優勝者である、先天性の視覚障害を持つ芸人の濱田祐太郎さんのエッセイ。

フランクで読みやすい文体と、冷静な判断力を感じさせる内容で、するすると読める。
コナン・ドイルの「ボヘミアの醜聞」が引用されているというサプライズもあって、楽しい読書時間だった。

芸能界(特にテレビ業界)における障がい者の扱いはまだ整備されていないところもあるだろうけれど、濱田さんがその先陣を切っていっているような感じもして、興味深かった。
周囲の芸人さんたちが、濱田さんの見えない世界を補完するためにたくさん協力してくれているのが伝わって、温かい気持ちになれた。
みんな、「障がい者がいると気を使う」というけれど、「障がい者側もみんなに気を使っている」んだけどな~、というくだりで、いろいろ考えさせられた。健常者の側に立っていることで、見えないことがたくさんあるなあ。畳む


#読書



「ふつうの軽音部」の最新刊がよすぎて、「誘惑」を聞きに行ってしまう。
こういう超メジャーソングがこの漫画に出てくるの、なくはないけど、やや珍しいよなー。
「このタイミングで……!?この人が!?」というのもすごくよくて、ナイス選曲だと思った。
これからの展開も楽しみ。

#読書

村田沙耶香「世界99」の上巻を読んだ。
いや、これ、すごくない……?
まだ上巻が終わったところなのに、2025年に読んだ小説のなかでナンバーワンかも、という予感をビシビシ感じている。

性格のないからっぽの女の子・空子が、さまざまな他人の人格を切り貼りして世界を渡っていく物語。
空子の生きる世界は、現実の世界とすごくよく似ているのだが、ところどころが大きく違う。
物語の鍵を握るのは、ふわふわの白い毛を持ち、甘い声で鳴く愛玩動物の『ピョコルン』。
ピョコルンが単なるペットの範疇を超えた瞬間に、世界は揺らぎはじめる。

朝井リョウさんのこのコメントが、また興味深い。
小説というものの輪郭が、いわば地球を覗く窓の形が、本書によりまた大きく更新されました。
それはつまり、この本の中で初めて寛げる人がいるということです。
救済と爆弾は同じ姿で在れるのだと気付かされました。


「この本の中で初めて寛げる人がいる」というフレーズに納得したような気がする。
この作品の世界は残酷で、空子はたくさんつらい目に遭うのだけれど、そんな空子と、自分が案外似ているように思える。空子のように極端に分裂した人は本来はいないはずなのに、彼女に共感してしまうのは、現実世界の人間もまた、さまざまなペルソナを付け替えて場を乗り切っているからなんだろうか。
下巻も楽しみすぎる。

#読書

「ふつうの軽音部」の8巻を読んだ。
これ毎巻おもしろいけど、今回はいつにも増しておもしろかったのではないかと。
他人の痛みから生まれる青春の輝きって、人工的に作れるんだね……。
人為的に作った青春の輝きという謎概念を導入していくスタイル。
バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!のスタイルもいいし、続きも楽しみ。

#読書

おもしろいコミックエッセイを掘り起こして探すのは意外と難しい。
最近の売れ線や電子書籍ストアのおすすめは検索すれば出てくるのだが、そういうのではなくて、10年前、20年前の名作を読みたいんだよな。
実話ものはあまり好まない人も多く、総括的に探すのが困難なジャンルなのかもしれない。

#読書

コミックエッセイを、一ヶ月に何冊か読む。
グルメ系、闘病系、お仕事系、子育て系、家事系、旅行系、ペット系などなど……いろんなジャンルがあって、飽きない。
そんな読書生活のなかで、おもしろいコミックエッセイの条件ってなんだろうなとよく考える。

・絵がうまい、かわいい
・マンガや構成がうまい
・体験の内容が特異である(普通の人が体験したことのないようなもの)
・事実のデフォルメがうまい(盛りすぎず、そのまますぎず)
・作者の人格がおもしろい(性格がいい、自分の感覚と合う、あるいは性格が悪すぎて惹かれるなど)
・実生活に役立つ(片付け、グルメ、自己啓発など)

これらの評価軸のなかで、一個でも飛び抜けているものがあれば、きっと印象に残るんだろうなと思う。
逆に、一個でも合わないポイントがあると、それだけで読む手が止まってしまうこともある。

自分の中でのナンバーワンコミックエッセイはおそらく、吾妻ひでお「失踪日記」だろう。
言うまでもなくマンガがうまい。テンポよくて、絵もかわいい。
家出をしてホームレスとして林で寝泊まりし、ゴミ捨て場を毎晩あさるというトンデモ体験も凄まじい。続編のアル中病棟もおもしろかった。
もっと壮絶な体験もあるはずなのだが、あくまでも明るい部分だけをすくいとってマンガにしているという冷静さも好きだったり。
絵柄のかわいさと、体験の非日常感のギャップが気持ちよくて、何度も読み返した思い出がある。
最近は読んでいなかったので、また読み返そうかと思っている。

#読書

松下龍之介「一次元の挿し木」を読んだ。
2025年、第23回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作。
二百年前の人骨のDNAと、四年前に失踪した妹のDNAが一致するという驚愕の謎の提示が魅力的すぎて読みはじめたのだが、この出だしがあまりにもよすぎて、終盤はトーンダウンした印象もある。
予想の範囲内の真相で、もう一捻りほしい気分だった。
以下、やや否定的な感想。

ミステリ的に納得できる解決が来るかと思って期待していたけど、SFとライトノベルのあわせ技のような結末で、リアリティに欠ける感じがした。倫理的に受け容れがたい部分もある。
ハラハラドキドキで楽しいし、一気読みできる勢いはあったけど、ラストには納得していないかも。
あと、内容には関係ないが、主人公が信じられないほどイケメンであるということを強調する描写がすごくしつこくて、「そんなに何度も言わなくてもいいよ!?」と思ってしまった。
ただ、メインのトリックはうまく機能していると思うし、好きだなー。
解説にもあるけど、読者を強く惹きつける謎の提示がデビュー作で完成しているのは凄まじいインパクト。

個人的には、「救急医である主人公の元に搬送されてきた男が、自分とまったく同じ顔だったが、すでに手遅れで、眼前で死んでしまった」という山口未桜「禁忌の子」とあらすじが似ているから、これと同じ水準を求めてしまって、勝手にややがっかりしたというのも大きいかな。
「禁忌の子」は医学部出身の方が書いていて、合間に挟まれる、医学的にリアリティのある描写がおもしろかったんだよなあ。

このミス大賞は「怪物の木こり」しか読んでいなくて、これが二作目。どちらも、最初からライトノベルだと思って読むほうがすっきりと読める作品かもしれない。すくなくとも、ミステリよりサスペンス重視の賞だということを念頭に置いておくべきかなあ。
大賞の「謎の香りはパン屋から」も、ノリが軽すぎて序盤で(第一章が終わったところくらいで)挫折してしまったんだよなー。こちらはもしかしたら徐々におもしろくなるかもしれないので、またリベンジしたいところ。畳む


#読書

木下由一「あらくれお嬢様はもんもんしている」の7巻・8巻を読んだ。
エロコメから純愛ラブコメへ。そしてその先は……?という分岐点に立っている。

内容を知らない人が表紙だけ見たら、「すごくエロいマンガなのかな?」と思いそうなんだけど、内容的には即物的なエロからは急速に遠ざかっていっており、そこがすごく令和的で好きだったりする。
二人が両思いになり、付き合いはじめた時点で「もう終盤戦なのかな」と寂しく思っていたのだが、実はここが新しいスタート地点であったという驚き。

既存の作品(少女漫画やドラマなど)では、両思いになったふたりは、雰囲気が盛り上がったままキスをして、そのまま朝チュン……というような流れが多い。
しかし、本当にそれでいいのか? 雰囲気に流されているだけで、ちゃんとした同意(避妊や挿入の有無なども含めて)、取れてないかもよ?……という。
あらもんのすごいところは、お互いが『恋愛』と『性欲』を相反するものとして俯瞰して見ているところ。
そして、『恋愛』と『性欲』を同じ方向に向かわせるために、ありえないほど長く、ふたりでディスカッションを行うというところだ。
相手のことを本当に愛しているのなら、高校生で性行為には及ばないのではないか。
性欲によって勢いだけで致してしまうのは、本当の愛ではないのでは。
時には保健の教師にも相談しながら、『高校生同士でセックスするのって本当に純愛の結果ですか? 単なるリビドーであるなら、本当に愛しているわけではないのでは?』というテーマを丁寧に掘り下げていく。
純愛と性欲が矛盾するとき、性的同意は得られない。
互いに相手を求めながらも、論理的矛盾や倫理観によって、性行為は回避されていく。
セックスだけでなく、たった一度のキスにも丁寧な同意を取っていく、お互いを思いやるためにひたすらに話し合うという誠実さが、このマンガを輝かせている。
『雰囲気で、流されるまま、なんとなくする行為』の不誠実さをここまで描き出されてしまうと、拍手するしかない。
最終的には結ばれるんだろうけど、そこへ至るまでのプロセスがあまりにおもしろくて、もうずっとこのままでいてほしいとすら思う。凄まじいマンガ。畳む


#読書

森博嗣「χの悲劇」を読む。
そういえば、Gシリーズをまだ全部読めていなかったよな~と思い出して。
最後に読んだのが「キウイγは時計仕掛け」で、2022年だった。3年ぶり。

今回の主人公は、かつて真賀田研究所でプログラマをしていた、島田文子。
いつものおなじみメンバーが出てこなくて、ちょっと残念。これまでの話とは関係ないのかな……と思いながら読んでいたら、最後の数ページで怒涛の展開があって、びっくりした。

森ミステリィの真骨頂は、トリックの内容や謎解きではなく、真賀田四季という人の人生を読者が必死に追いかけていくという点にあるのだと思う。
凡人がどれだけ思考を重ねても、天才・真賀田四季には届かない。
それでも、彼女の歩んだ道を追いかけたいと願ってしまう。そんな不思議な魅力がある。
全貌が見えないまま歩みつづける、謎の多いシリーズだったが、ここへ来てようやく、謎の正体に届きそう。そんな手応えの一冊だった。
次は「ψの悲劇」へ。どうなるか楽しみ。畳む


#読書

青柳碧人「乱歩と千畝:RAMPOとSEMPO」を読む。
第173回直木賞候補作。
もしも、命のビザを発行した外交官・杉原千畝と、戦前推理小説の道を切り開いた江戸川乱歩が、親友だったら……というIF設定に基づく、友情歴史小説。
それぞれの視点から展開していく伝記ストーリーもおもしろいが、ふたりの人生がどう交わり、どんな影響を与えていったのかという描写も丁寧で、引き込まれた。

また、当時の推理小説界のそうそうたる客演メンツもおいしく、このあたりの時期のミステリが好きな人は名前を追いかけているだけでも楽しいと思う。
特に、横溝正史の大活躍ぶりは非常に好きだった。いいキャラしてる。
途中、「乱歩と正史」でもよかったのでは?と思うシーンがいくつかあった。

『戦前推理小説』から、『戦後推理小説』へと引き継がれていく魂の話や、その引き継ぎのきっかけとなったあの作品に関する話など、ミステリファンなら絶対に見たいであろう話題が目白押しで、どこからどこまでがフィクションなのかはよくわからないが、楽しい読書だった。
直木賞を受賞してもよかったんじゃないかと思う。受賞作なしなのが本当にもったいない。

#読書

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