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さかさな「奈落の花園」の下巻を読んだ。
死体を埋める傷だらけの女の子たちのガールズラブ、完結。

母からネグレクトされているめあり。父から虐待を受けているコリン。かつて、友だちを救えなかった璃子。
心に傷を負う三人の少女たちが出会うとき、彼女たちの孤独が共鳴し、傷つけあう。
彼女たちはその心の傷ゆえに、余裕がなく、自己中心的になることもあり、時には意地悪にも見える。
でも、それは互いの欠落を埋めるのに必死になっているだけだ。
むしろ、この境遇で自分勝手にならないほうがどうかしているともいえる。
行き場のない者同士が出会うとき、そこに生まれたのは愛なのか、同情なのか、共鳴なのか。
その感情の正体はわからないけれど、コリンがめありと出会えてよかった。

徹底して大人の姿が端折られていて、どう頑張っても少女たちだけでは解決できない問題に、彼女たちだけが立ち向かう形になっている閉塞感が好きだったなあ。
「福祉が機能してなさすぎるだろ!!!役所、仕事しろ!!!」という気持ちもあるけど、この作品の場合は大人がいないほうが映えるだろうなあ。
そんなことを考えながら読んでいた。畳む


#読書

中原 一歩「小山田圭吾 炎上の『嘘』 東京五輪騒動の知られざる真相」を読んだ。
非常に読みやすく要点がまとめられており、炎上の陰でなにが起きていたのか、裏取りのないまま、不確実な情報が拡散されていった経緯を知ることができる。

個人的には、当時から「こんな怪しげな雑誌の記事を信じるのはおかしい。すべてではないにしても、多少は話を盛っているのでは?」という疑念があったため、炎上には加担していなかった。
90年代~00年代は、雑誌にしろムック本にしろ、内容が盛られていたり、インタビューがでっちあげだったりということは非常に多かったからだ。特にサブカル界隈では、嘘であることが当たり前だった。
しかし、胡散臭い雑誌の記事を鵜呑みにするのが愚かであることはもちろん当たり前だが、同時に、この本に書いてあることを鵜呑みにするのもよくないだろうという視点は持っておきたい。
いじめられた被害者当人の証言はなく、事実とは異なる内容の記事を仕上げた雑誌編集長の山崎氏が取材を拒否しているというのもあって、情報の不完全さはある。

だが、当時、現場にいた同級生複数に裏を取り、さらにそれ以外の同級生や音楽関係者や雑誌関係者にも取材を行っているため、雑誌記事単体よりは信用できる筋の情報だろう。
また、誠実に経緯のすべてを打ち明けた小山田氏本人と、取材から逃げ回っている山崎氏、どちらが読者から見て信用できるかといえば、やはり小山田氏のほうかなと思う。

嘘の内容が載った雑誌記事を訂正したかったが、雑誌関係者との関係を悪くしたくないために訂正の機会を逃しつづけたことで、結果的に長年にわたって時限爆弾を抱えているような状態になってしまったり、炎上がはじまったときにも気を遣って雑誌側へ抗議をしなかったりと、人のよさが完全に裏目に出てしまっているくだりには、誰にでも起こり得る事故なのではないかと思わされる。

炎上はドミノのようなもので、ひとつひとつは「これくらいは放っておいてもいいかな」「人間関係を悪くしたくないから言わないでおこうかな」「今更言っても仕方ないかな」という些細な要素なのだが、それらが折り重なって突然倒れはじめるとき、もはやだれにも止めることのできない大惨事となる。
事態が悪化するまでに、誤った情報を訂正できるきっかけはいくつもあったが、それをしなかった小山田氏にも責任の一端はある。
同級生たちも、雑誌の記事の内容が当時の状況とは著しく異なるものであることを認識しながら、自分にまで炎上の火の粉が降りかかるのが怖くて、訂正する気にはなれなかったと話している。「触ると巻き込まれるから、見て見ぬふりをする」。皮肉にも、これはまさにいじめと同じ構図だ。
雑誌記事に書かれたいじめの内容に対して怒りを燃やした人々が振りまく正義の火の粉が、実際にはそれ以上の苛烈ないじめとなって、猛威を振るっていたという事実に震える。
本来は、この記事を載せた雑誌関係者が表舞台に出ていって訂正するのが筋だったのだが、それも行われなかったことが惨事の規模を広げる一因となっていた。

この炎上のただなかで、「今の日本のマスコミ全体に聞きたいのは、あのとき何が起きたのかを、調べ直したのか?ってことなんですよ」と語った爆笑問題の太田さんはすごい人だなと思った。
この発言はかなり叩かれていたという記憶があるけれど、結局、当時はだれも調べ直していなかったのだ。
それだけではなく、たぶん、小山田氏本人の話すらまともに聞く人はいなかったのだろう。
「叩く前に調べ直すべきだ」という理性よりも、「絶対に許せない、叩きたい、気持ちよく叩きたいからむしろ事実であってほしい、調べ直してほしくない」という、正義に見せかけた群衆のバッシングの欲望が勝った瞬間でもあった。
最近、タイタンという事務所の特異性についてよく考えるのだけれど、渦中でこれを口にすることができる太田さんが君臨している事務所だからこそ、大島さんのような『忖度をしない』後輩が生まれるのかもしれない。

巻末にも直近での炎上がいくつか書かれているが、日々、われわれの感情をゆさぶる炎上案件は増えつづけている。強烈な感情のゆさぶりに気を取られているうちに、情報の裏取りをしていないことに気づかない(気付かされない)ような構造が確実にできあがっていると思う。
感情を動かす前に、まずは「これって本当に事実なんだろうか?」と疑っていかなければいけないだろう。ちゃんとしたソースはあるのか。信頼できる筋の情報なのか。偏った考えや誤報ではないか。
令和という炎上の時代を生き抜くために、そして自分が炎上するかもしれない未来のために、備えていこうと思える一冊だった。
当時、炎上に加担した人や怒りをSNSにぶつけた人は、この本を読んで事実について考えるべきだと思うが、そういう人たちはこういう本は読まずに、きょうも新たな標的を探しているんだろうなと思うと、やるせない。畳む


#読書

廣嶋玲子「十年屋」シリーズにすごくハマっている。6巻まで読んだ。
「トラブル旅行社」も非常に好きだったが、十年屋さんは魔法街という世界観の広がりがいいんだよなあ……この調子でどんどん続いていってほしい。

きょう、検索していて特設サイト があったことを初めて知った。
サイトの雰囲気もかわいらしくて、凝ってていいなー。
いつものあのシーンがカラーになっていてテンションがあがった。
カラシと十年屋さんの家族のような距離感が好きすぎるんだけど、7巻からはミツとあの人の距離感も気になるところ。

#読書

高橋秀武「花と銀」を2巻まで読む。
宮仕えが性に合わず警察をやめた左右田銀は、私立探偵として気ままに暮らす日々を送っている。
警官だったころに憧れていた警部補の花井も警察をやめてヤクザに転向していたことを知り、勢いでかつての思いを告白してしまう。
『警察を辞めた』という共通項を持つふたりが繰り広げる、レトロなラブコメディ。

「エリア88」の二次創作で作者の方を知ったのだけれど、オリジナル作品もコマのテンポがなんとなく新谷かおる感があるというか、ほんのりレトロな裏社会なのがいいなー。
1巻はヤクザものにしてはほのぼのしすぎていて、やや物足りない感じだったが、2巻からはクライム・サスペンスの様相を呈してきていて、かなり楽しめる。
性的な描写は今のところほとんどなく、このふたりがどういう関係に落ち着くのか、今後も見守りたい。

#読書

井田千秋「家が好きな人」を読んだ。
さまざまな家の間取りと、そこに暮らす女性たちを描くオムニバスのオールカラーコミック。
ゆったりと過ぎていくひとり時間を、フルカラーの温かな筆致で描く世界観がいい。
かわいらしい小物が並べられた部屋には生活感があり、そこに住む人の人生を感じさせる。
こんなにかわいい小物が大量に並んでいたら、掃除するのは大変だろうな……と余計な心配をしてしまったが、こんな家に住めたら気持ちが弾んで楽しいだろうなとも思う。
おうち時間の多い人におすすめの一冊だった。

#読書

上遠野浩平「ブギーポップ・ダークリー 化け猫とめまいのスキャット」を読む。
ブギーポップシリーズ16冊目。
史上最強の能力者・スキャッターブレインと、統和機構最強・フォルテッシモの対決を描く。

ブギーポップはもともとジョジョからの影響を強く感じる作品だが、今回の話は明確にジョジョ4部オマージュだと思われる。
「音梨町」という地名を強調しているところといい、ラスボスの性質といい、かなり意識して似せに行っている気がする。さらに、「振り返ってはいけない、幽霊が出る小道」への言及もあったりする。

序盤のコッテコテの学園ラブコメ展開に、「上遠野浩平ってこんなにコテコテのラブコメをやる人だったか……?」と違和感を抱かせておいて、終盤でその違和感への答え合わせが行われるという構成になっており、今回も非常に楽しめた。完成度が高い。

ブギーポップはキャラへの愛着で物語をひっぱっていくようなタイプの作品ではまったくないのだが、フォルテッシモの魅力はエンブリオ以降強まるばかりで、次の登場が待ち遠しい。良キャラだと思う。畳む


#読書

短期間だが、つくばにプチ旅行へ行ってきた。
エキスポセンターや植物園を巡り、いい天気だったので、バスには乗らずに研究都市を歩き回った。
なんとなく作り物っぽい感じというか、アニメに出てくる街みたいな雰囲気が好きなんだよなー。
たまたまテキトーに入ったインドカレー屋のカレーがすごくおいしくて、普通のインネパ系カレーとは違った雰囲気だったのがお得感があった。
かなりたくさん歩いたので、これでカロリー消費できているといいな。
つくばは、まったり過ごせてすごく好きなので、また行きたい。次はもうちょっと計画的に、行きたい場所をまとめてから。

きのうの夜は、「奈落の花園」に加えて「ふつうの軽音部」の新刊を読んでいた。
きょうは電車内で、「ブギーポップ・クエスチョン 沈黙ピラミッド」を読んだ。
ブギーポップシリーズ・15冊目。
「ブギーポップ・イン・ザ・ミラー 『パンドラ』」あたりの雰囲気が好きな人はかなり合うんじゃないか。
ブギーポップに基本的にハズレはないと思っているけれど、「沈黙ピラミッド」のノスタルジーというか、『失われた青春の思い出』の風景は好きすぎたなあ。
死別でなくとも、すべての青春は過ぎ去っていくもので、気づいたときにはすでにないということを思い出させてくれる。
この失われた風景の物語が「VSイマジネーター」のお話と組み合わさっているの、技ありだと思う。

#読書

旅先の電車内で、さかさな「奈落の花園」の上巻を読む。

いわゆる死体埋め百合なのだが、ある程度関係の固まったふたりが死体を埋めるのではなくて、死体を埋めるところから関係がはじまるのが新鮮でおもしろい。
感情が未発達かつ家庭環境に問題を抱えた幼いふたりが死体を埋めて秘密を守るというシチュエーション、めちゃくちゃいいな……。

展開は陰惨さがかなり強いのだが、試練を愛で乗り越えられそうな予感もして、この先が気になる。
今月、下巻が出るっぽいので楽しみ。

#読書

まるよのかもめ「ドカ食いダイスキ!もちづきさん」1巻を買って読む。
「孤独のグルメ」を発端とするひとりめし系漫画は、さすがに出尽くしてきて飽和したジャンルかと思っていた。
食べ歩き、自炊、ブラック労働のあとの鬱めし、酒飲みのつまみなどなど、多彩なものが揃っている。
が、ここへきて、そのなかのどれともかぶっていない(気がする)作品が登場。
めし漫画は、読むと「おいしそう!食べたい!」と思うものが多いはずなのだが、もちづきさんの場合は、食べたいと思う人は少ないのではないか。まず実行する勇気があるかどうか。

わたしの大好きな漫画「鍋に弾丸を受けながら」に、エルヴィス・プレスリーの死の原因となったといわれる超高カロリーサンドイッチ・通称エルヴィスサンドというものが登場する。
めちゃくちゃおいしそうなのだが、同時に健康をあらゆる意味で破壊するシロモノであることもしっかりと描かれている。
「鍋に弾丸を受けながら」にはその後も印象的な食べ物が多数登場するが、やっぱり、エルヴィスサンドという『美味と引き換えに死ぬ』食べ物のインパクトを超えてはいない。
もちづきさんの持つインパクトも、エルヴィスサンドと同じ種類のものだろう。
人は、死の淵で踊りつづけるだれかがいたら、見つめずにはいられない。
これはもはや、めし漫画などではなく、『死』を間接的に描いた漫画なのではないか。
生きるための『食』が、なぜか真逆の『死』へと接続している矛盾。

一部でドカ食い描写が問題視されているらしいが、気軽に真似できて、真似したらほぼ確実に死ぬという意味では、たしかに問題かもしれない。
作中で「これは食べてはいけないものだ」ということがはっきりと描かれており、個人的にはそこまで問題だとは思わないけれど、心配になるのもわかる。
このあと、もちづきさんがカジュアルに流行しまくり、みんなが真似するようになったりするかもしれないし。

絶対に食べてはいけない禁断の食。
罪悪感をスパイスとして、死へとひた走るピエロ。
もちづきさんがどこまで走っていくのか、見守りたい。畳む


#読書

かまど・みくのしん「本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む ~走れメロス・一房の葡萄・杜子春・本棚」を読んだ。
本を読んだことのないオモコロライター・みくのしんさんが、みずみずしい感性で、友人のかまどさんと一緒に名作を紐解いていくという本。

名作をネタにして遊んで終わる系の本かと思いきや、描写のなかの深いところまで入っていって、作品そのものを主人公と同じ立ち位置から追体験するような読み方をしていて、本を読み慣れている人ほどはっとさせられるような気がする。
難しくて飛ばしてしまうような単語に対して、「これなに?」と疑問を投げかけていくのもいい。

最終章では「読書とはなにか?」という哲学的命題にも触れているように思えて、なかなかに興味深い本だった。
雨穴さんが、みくのしんさんを思いながらベストセラー本「変な家」を書いたという話もよかったなー。

同じ本を読んでいたとしても、その読み方は人それぞれ。
情景に深く入り込んで共感する人もいれば、淡々と事実だけを処理していく人もいる。
本来ならば知るはずのない、『他人の読書』という秘められた領域を垣間見ることのできる不思議な体験。
読書が好きな人にこそ、読んでほしい本だった。

#読書

森バジル「なんで死体がスタジオに!?」を読んだ。
生放送のバラエティ番組『ゴシップ人狼』の開始前、番組の主役として活躍するはずだった人気俳優・勇崎恭吾の死体がスタジオで発見される。
犯人からのメッセージには「番組を予定通りに行わなければ、スタジオを爆破する」とあった。
スタジオに死体を置いたまま、嘘のゴシップを話している人狼をあぶりだす『ゴシップ人狼』が開幕する。
はたして、嘘をついている人狼は誰なのか。そして犯人の狙いは?

きっと、これを書いた人は「水曜日のダウンタウン」が大好きで、「名探偵津田」からこの着想を得たんだろうな~。
という体感の、ライト系ミステリ。
虚構と真実が番組のなかで混じり合う構成といい、名探偵津田好きと相性がよさそう。
バラエティ番組をメタとして見ている視聴者には楽しめると思う。
バラエティ番組とミステリという取り合わせが新しく、生放送というドキドキする舞台装置もあいまって、夢中で読み進められた。

ただ、ジェットコースター的に展開していった先のオチはやや弱め。
「構造的に、犯人はこの人なのでは?」と予想していた人がそのまま犯人だったのは物足りなかった。
とはいえ、一晩で軽く読めるライトミステリとしては上々だと思った。
不器用な一発屋芸人の仁礼くんはいいキャラ。

#読書

内科に行き、PCR検査をしてもらった結果、コロナ陽性だった。
この時点で熱はほぼほぼ下がり、喉の痛みだけが残った感じなのだが、最低でも5日間は出勤してはいけないらしい。
休暇をもらったつもりで、自宅待機を楽しもうかと思う。

布団でゴロゴロしつつ、平尾アウリ「推しが武道館いってくれたら死ぬ」を10巻まで読んだ。
かつてアニメ版を全部見て、「このあとどうなるんだろ?」と気になっていた作品。
あまり主軸となる物語はなく、まったりと推しと交流しつづける話だと思っていたので、10巻での怒涛の展開には度肝を抜かれた。
そろそろ終わっちゃうのかな……という雰囲気になってきている。どうなってしまうのか、かなり気になる。

#読書

タイトルは失念してしまったが、昔読んだ本に、「読書の記憶の定着には、本を読む場所やシチュエーションが関係している」と書かれていた。
たとえば、「◯◯駅の✕✕というカフェで読んだ」とか、「〇〇へ向かう途中の電車のなかで読んだ」とか、「受験勉強をサボってまで読んだ」とか。
特別な場所やシチュエーションで読んだ本の記憶は、ありふれた場所で読んだものより、定着しやすいらしい。

この本を読むよりも以前から、本と場所の記憶を絡めるのは好きだったので、かなり納得感があった。
特に、旅行先で読んだ本は、自分のなかでは特別な立ち位置にある。旅の記憶と、その本のあらすじが同時に思い出せて、すごく嬉しい気持ちになるのだった。

最近では、あとから思い出しやすいように、本のタイトルと読んだ場所、そのときのシチュエーションをできるだけ一緒にメモするようにもしている。
「図書館やレンタル屋さんの返却期限前にあわてて読んだ」、「ラーメン屋さんに置いてあったのを読んでみたらおもしろかったから買ってしまった」、「◯◯さんのおすすめで読んだ」、「Kindleで大安売りセールをやっていて買った」など、内容以外の読書にまつわる情報をあえて横に置いておくことで、なぜか愛着が増すような気がするし、思い出しやすくなる。そんな気がしている。

#読書

阿部 暁子「カフネ」 を読んだ。
今年読んだなかでベスト3に入る小説かもしれない。

不妊治療がうまくいかず離婚に発展し、さらに溺愛していた弟が急死し、途方に暮れて自暴自棄になっていた野宮薫子は、弟が残した遺言書をきっかけに、弟の元恋人・小野寺せつなと出会う。家事代行サービス会社「カフネ」で働くせつなを手伝ううちに、薫子は失った感情を取り戻していく。

以前から繰り返し述べているのだけれど、『死者の本心を探して旅をする』話が好きだ。
死んだ人の気持ちを過去にさかのぼって正確に知ることは、基本的には不可能だ。でも、残された人たちは当然、それを知りたがる。その謎を解くことで、悲しみから逃れようとするかのように。
「カフネ」では、急死した弟・春彦の本当の気持ちを探し、薫子とせつなが真実を探っていく。
最初は喧嘩ばかりしていたふたりが、徐々に歩み寄り、互いの事情を知っていく過程がすごく丁寧に描写されていて、ページをめくるたびに泣きそうになった。

「カフネ」は、春彦の死の真相を探し求めるミステリ仕立ての物語でありながら、これからの未来を生きていく薫子とせつなの物語でもある。
春彦がなぜ死んでしまったのかを知っても、彼はもう戻っては来ない。
彼がいないことを受け容れて前に進むことが、彼女たちにとっていちばん大切なことだ。
だから、この物語においてミステリ的な要素は添え物にすぎない。
でも、そのそっと添えられた謎がまた優しく感じられて、すごく愛おしい。
悲しみをひとつひとつ乗り越えて、前に進む。そして、断絶を感じた相手と、もう一度勇気を出して対話する。人間関係から逃げずに、未来を見据える。
その過程のすべてが尊くて、大好きなお話だった。畳む


#読書

上遠野浩平「ブギーポップ・イントレランス オルフェの方舟」を読む。
ブギーポップシリーズ14作目。
ブギーポップマラソンもようやく折り返し地点にさしかかっている。相変わらずおもしろい。
前作「ブギーポップ・バウンディング ロスト・メビウス」は今後の布石となりそうではありつつ、単品ではやや物足りない話だったのだが、今回は原点に立ち返ったようなお話で、ボーイ・ミーツ・ガールとセカイ系の調和が感じられてよかった。
やっぱり、刹那的なボーイ・ミーツ・ガールはいいよね……。
救いはまったくないんだけど、その乾いた感じこそがブギーポップなんだよなー。

ちなみに、この14作目までのあいだに「ビートのディシプリン」シリーズが4巻分も挟まれているっぽいのだが、これをいつ読むかが悩ましい……セールのときにまとめ買いしてあるので、いつでも読めることは読めるんだけど、まずは本編を読んでしまいたいような気もする。

#読書



乃木坂太郎「夏目アラタの結婚」を3巻まで読んだ。
見つかっていない死体の部位をどこに埋めたのかを聞き出すため、主人公・夏目アラタが、死刑囚『品川ピエロ』と結婚しようとする話。
映画館で予告を見てから、ちょっと気になっていたのだが、思ったよりも異様な話だった。
恋愛ものではなく、単なるサスペンスでもなく、ふたりの思惑が面会室でぶつかりあう頭脳バトルのような構成になっていて、先が気になる。

イメージにぴったりすぎる、映画版の主役ふたりのキャスティングもすごい。
実写に合わなそうというか、絶対にコレジャナイ感じになりそうな原作なのに……しっかり合っている……。
特に柳楽優弥はこういう役をやらせたら右に出るものはいないと思う。バッチリすぎるなー。
すでに完結しているっぽいので安心して読めそうだが、怖くて手元に置いておきたくないような雰囲気もあって、ここから先をいつ読もうか悩んでいる。

#読書



上條一輝「深淵のテレパス」を読んだ。

創元ホラー長編賞受賞作。
この人もオモコロのライターさんらしい。

「変な怪談を聞きに行きませんか?」と会社の後輩に誘われ、ふしぎな怪談を聞いたことをきっかけに、自宅で怪奇現象が起きるようになってしまった高山カレン。不気味な水音、突如部屋に出現する汚水。怪異を発生させないためには、常に部屋に光を満たす必要があった。
カレンが助けを求めたのは、YouTubeで怪奇現象を取り扱う「あしや超常現象調査」だった。
彼らは、カレンを取り巻く怪奇現象の正体を突き止めることはできるのか?

ひとつひとつのピースはよくある形なのに、全部集めると精巧なパズルが完成する感じで、豪華で贅沢な構成だった。
そこまで突き抜けた恐怖描写はないが、超能力、推理、怪奇現象、呪いなどなど、要素が多くてお得感がある。
呪いの発生源が特定された瞬間のミステリ要素も気持ちよく、全部盛りセットの優等生的な作品。満腹感があった。
最後の一ページで急に新たな絶望に叩き落とすのも好きだったなー。このままシリーズ化希望。

#読書

三宮麻由子「わたしのeyePhone」を読んだ。

四歳で光を失って『シーンレス』の世界で生きる著者が、スマホに出会ったことで変化した日常を軽快に語るエッセイ。
スマホによって生活が激変し、自力でできることがたくさん増えて、生き方の形が変わっていくという激しい喜びが語られていて、心を揺さぶられた。
視覚障害という言葉を用いず、『シーンレス』という言葉を徹底して使用しているところも好きだった。

市川沙央「ハンチバック」と同じく、わたしたちが当たり前に享受しているサービスを当たり前に利用できない人がいるという社会の問題に気づかせてくれる良書だった。
すべての人を取りこぼさない社会になってほしいし、なにか新しいサービスをリリースする際には、必ず「すべての人が利用できるものなのか?」を考えてリリースしてほしいな、と思った。

飲食店のタッチパネル式の注文システムや、ウェブサイトにログインする際に画像を操作しなければならないシステムなどは、目が見えていなければ絶対に利用できないサービスだ。
こういうものが、この世界には数多く存在している。
コロナ禍のような特殊な状況下では、こうしたシステムが生活を大きく制限することもある。
また、カレーの辛さを文字で記載しているパッケージならばスマホの読み上げ機能によって辛さを確認できるが、唐辛子の絵だと確認しづらい……というのも、「確かにそうだ!」と思った。
おしゃれなパッケージの食品は最近多いけど、見た目よりも、読み上げ端末で必要な情報を確認できるようにデザインすることを優先すべきだ。
視覚障害がある人のみではなく、字が読めない人や日本語を母国語としていない人にとっても、読み上げ機能は革命的であるはずなのだから。

タッチパネル端末で人件費を削減しているというけれど、実は「タッチパネルだったら注文できないから、来るのをやめようかな」とシーンレスの方に思われていることもあるわけで、最初から読み上げ機能をつけておくなどの配慮は必要だろう。
タッチパネル端末ではなくモバイルオーダーなら、自分のスマホの読み上げ機能で注文できるというのも、目から鱗だった。
健常な人の目線だと、店内でのモバイルオーダーのシステムは、タッチパネル端末を用意するお金をケチっているよくないシステムだ、という意見の人もいるけれど、モバイルオーダーが生命線となっている人もいるということか。

ジョブズは自分が作ったiPhoneに読み上げ機能を実装して、こまめに改良していたという逸話もこの本のなかにあった。
誰ひとり取り残さず、みんなにiPhoneを使ってほしいという愛を感じて、自分がiPhoneユーザーであることがすこし嬉しく思える。

巻末にある春風亭一之輔さんとの対談も、ゆるくて優しくて、あたたかい気持ちになった。いい本だった。畳む


#読書

冨樫義博「HUNTER×HUNTER」を、今更読んでいる。
とりあえず、8月は15巻まで買った。

自分と「HUNTER×HUNTER」との付き合いの距離感は、ちょっと変だ。
初めて読んだのはたしか中学生のときで、友人に貸してもらって読んだ。たぶん、14巻くらいまで。
当時、「家庭教師ヒットマンREBORN!」や「銀魂」、「BLEACH」など、どちらかというと明るい作風の漫画が自分の中でブームだったせいか、さらっと読んだだけで、まったくハマっていなかった。
家では母親が旧アニメ版に熱狂していたが、こちらもかなり薄暗くてグロくて、そのときの自分はスルーしていたと思う。まったく見た覚えがない。

スルーしたまま時は過ぎ、新アニメ版のキメラアント編を見たことで時が戻る。
途中からなので、わからない部分もあったが、すごくハマった。
「HUNTER×HUNTER」ってこんなにおもしろいんだ!と、そのときに初めて知ることになる。遅い。
この時期に、詳しくは思い出せないが、「HUNTER×HUNTER」のポチポチゲーみたいなものがあって、それにも手を出していた気がする。ウイングさんを育てていたような記憶がぼんやりとある。
キメラアント編のあとの選挙編もおもしろくて、原作が気になるなあ……と思ったが、今から追うのは大変だよね、ということで、またスルーしていた。

そして、ふたたび時が流れ……2024年。
特になんのきっかけもなく、1巻から大人買いしはじめた。
中学生のころ、あんなにもハマっていなかった序盤の展開が、おとなになってから読んだら、すごくおもしろかった。人間関係も細やか。
2024年に、この漫画をこんなにまっさらな状態で楽しめているのは、自分くらいのものではないだろうか。かなりお得だ。
このあと、どういう展開になるのかも、アニメで見た部分以外はまったく知らない。さらにお得。
そんな時の流れのなかで、9月には新刊が出るという……スケール感がおかしくて、認識能力がバグりそうな展開だった。畳む


#読書

risui「紅魔館の女たち」1巻を読んだ。

連載がはじまった瞬間に「絶対に単行本で買う!!」と心に決めたどハマりシリーズ。
やっぱり最高だった。
最初のときめきを信じてよかった。

紅美鈴と十六夜咲夜の百合な関係を中心に進んでいく東方二次創作漫画なのだが、あまり見ないタイプの珍しいキャラ解釈で、人によっては合わない可能性もある。
が、描写が細かく、オリジナル衣装の設定などもあり、個人的には爆裂ヒット。

めーさく以外の関係性も楽しく、何度でも読み直したくなる。
絵柄もオシャレで雰囲気ある。
美鈴のことが大好きすぎて変な感じになっている咲夜さんがかわいい。ほのぼのしてしまう。
両思いなのにすれ違いまくりで、ろくにラブラブできていないのも、かわいらしくて好き。

#読書

廣嶋玲子「十年屋 時の魔法はいかがでしょう?」を読んだ。

「トラブル旅行社」シリーズを読み終わってしまったので、今度はこちらを。
どうしても捨てられない大切なものと思い出を、一年の寿命と引き換えに、十年間預かってくれる『十年屋』を名乗る魔法使いのお話。
それぞれの主人公が歩んだ十年の重みがすごく尊くて、時の流れのスケール感にジーンとする。
子どもにとっての十年って、大人の十年よりも長くて、果てしない時間だよなー。

約束を守らない悪い人はひどい罰を受けるという因果応報っぷりは「銭天堂」と近いんだけど、十年後に店から品物を回収するかどうかを決断するという時間経過要素のせいか、銭天堂より心にしみる気がする。好きだなー。
廣嶋玲子さんの本を読めば読むほど、ハズレのなさと刊行速度にびっくりする。いくらでも読めそう。

#読書

近藤史恵「幽霊絵師火狂 筆のみが知る」を読んだ。
明治維新を経て、世の中が一気に変わりはじめた時代。
老舗料理屋「しの田」のひとり娘・真阿は、胸を病んでいると言われ、部屋にこもりがちな鬱々とした生活を送っていた。
ある日、「しの田」の二階に居候が来ることを知らされ、好奇心に胸を躍らせる。
彼は著名な幽霊絵師で、名を『火狂』といった。
彼のもとに絵画に関する悩みをもつ人々が訪れるたび、真阿は彼と心を通わせながら、謎を解いていくのだった。

一応、出版社の説明には『絵画ミステリ』と書かれているのだが、どちらかというと怖くないホラーっぽい体感があり、がっつりとした謎解きは少なめかもしれない。
ミステリとしてもホラーとしてもやや薄味で、でも、その薄味さや想像で補う余白が妙に心地よくて、さらっとした読み応えだった。
文体もあっさりしているので、たぶん一日あれば読めると思う。

ふたりの距離感が絶妙に優しく、世間知らずな真阿を見守る、ひとりのおとなとしての火狂がとても魅力的だった。
近藤さんの作品は初読みだったんだけど、他の作品も読みたいな。畳む


#読書

一穂ミチ「パラソルでパラシュート」を読んだ。
初読みの作家さん。
凄まじく惹きつけられて、一日で一気読みしてしまった。

30歳になったら退職しなければならない、大手企業の受付嬢である美雨。
やりたいことはないし、できることもない日々に焦りを覚えていた彼女は、ある日、売れないお笑い芸人の矢沢亨と出会う。つかみどころのないふしぎな存在感を放つ亨、亨の相方の弓彦、そして亨とシェアハウスで暮らしている芸人たちとの交流を通じて、美雨は「なにもない」自分の人生と向き合っていく。

もともと、特別な絆で結びつけられた男性ふたり+そこに現れる女性という関係性がすごく好きだ。この作品の男+男+女の関係性は教科書に載ってもいいくらい最高のバランスだと思う。
男性ふたりの絶妙な距離の描き方が独特だなと思ったのだけれど、もともとボーイズラブの作家さんらしいということをあとから知り、納得した。
「パラソルでパラシュート」はボーイズラブではないのだけれど、ボーイズラブ並みに丁寧に描かれた男ふたりの話ではある。
男女の恋愛っぽいものを描きつつ、男性ふたりの関係性を掘り下げるというのが、たぶんみんなあまりやりたがらないというか、難しい作劇なのではないかと思うんだけど、この作品はそこをすごく丁寧に処理していて、だからこそ、先が気になってどんどん読んでしまった。
リアルな大阪の空気感が優しくて好きだったし、芸人のシェアハウスに一緒に住むというシチュエーションも、芸人好きとしてはわくわくしたなー。
一穂さんの他の作品も読んでみたいなと思った。

#読書

梨×株式会社闇「その怪文書を読みましたか」を読んだ。
ホラー好きの著者が街やネットで見つけた怪文書を収集しているうちに、怪文書同士がある文脈を共有していることに気づきはじめる……という、最近よく見かけるミッシング・リンク系モキュメンタリーホラー作品。
小説ではなく、『怪文書のまとめ』という体裁をとっているため、特にストーリーなどはない。考察系コンテンツといえる。

背筋「近畿地方のある場所について」のラストの袋とじだけ読んでいるような贅沢な怖さがあった。やっぱり絵や写真による怖さってダイレクトに来るから、かなり効くなあ。おもしろい。
ただ、ホラー現象そのものは非現実的なものでも、『怪文書』は現実にも存在している。
現実の『怪文書』は怪異ではなく病に苦しむだれかが生み出しているということを考えてしまうと、『怪文書』という存在自体を過剰におもしろがるようなテンションは悪趣味で、微妙に乗り切れなかった部分はある。
このあたりのリアリティラインは本当に難しいのではないかと思う。本当っぽいほうがより怖いから、本当にありそうな方向へどんどん傾いていくけど、あまりにも現実に近いと、楽しめなくなってしまう。
たぶん、フィクション性の高い小説や漫画だったら気にならなかった気がする。『本当にあった怪文書』という体裁がよくないのかな。

ところで、「その怪文書を読みましたか」の作品としてのレベルをより高みへと押し上げているのは、間違いなく、ラストで『寄稿』として追加されている品田遊のコラムだと思う。
これによって、単なる事象の羅列ではなく、明確な文脈が発生しているような気がするし、全体に『それっぽさ』が付加されていて、アッパレな采配なんだよな。
オモコロでホラーといえば梨さんと雨穴さんのイメージだけど、品田遊先生のホラーももっと見たいなと思った。畳む


#読書

中平正彦「ストリートファイターZERO2 さくらがんばる!」を読んだ。
「なんか、どこかで読んだ気がするな……この話……」と思っていたが、実は2018年に読んでいた。まだ6年しか経ってないのに、忘れるな!!!!
たぶん家のどこかに紙の本がある。
当時はアドンで頭がいっぱいだったから、忘れてしまったんだろうな……。

さて、「さくらがんばる!」は、ゲームに逆輸入された設定がもりもり入っている、超名作。
春日野さくらというキャラクターのよさが最大限まで引き出された、最高の漫画だ。
格闘ゲームは、練習して、高みを目指して、『初心者』が『うますぎる神々』に追いつこうとする努力の過程そのものだ。
リュウをめざして拙い技を練習するさくらの姿は、すべてのプレイヤーの姿と、そして自分とも重なっていく。そこがすごくグッと来るのだった。
『完成形』ではなく、『未熟者』としての春日野さくらがこんなにも魅力的なのは、それが自分自身そのものだからだ。
闇の暗殺拳が、光の拳に変わる瞬間。純粋な憧れが、道を切り開いていく瞬間。
格闘ゲームって、そういう瞬間の連続なのではないか。

さくらとリュウ以外の登場キャラクターとしては、春麗と元のやりとりが特に印象的。
草薙京との会話のくだりもすごくよかったなー。
京とさくらという組み合わせが妙にしっくりきて、最初からこういう感じの話だったような気がするくらいだった。
あとは、全編通して、火引弾という最高の師匠の存在感もいい。リュウとダン、その両方があってこそのさくらなんだよなー、としみじみと思う。畳む


#読書

汀こるもの「最強の毒 本草学者の事件帖」を読む。
ミステリとして非常によくできており、謎の組み立て方も魅力的でよかった。

10人以上を殺した『最強の毒』の正体を突き止める第1話、平賀源内の実像に迫る第2話、そして、二十年前に死んだ木乃伊の死因を推理する第3話。
特に第3話が二転三転の真相で、凝っていて楽しかった。時空を超えて真実を導き出すタイプのお話が大好物なので、これはかなりイチオシ。
終盤、「そういえば、この謎ってどういうことだったんだ?」と思っていたら、突然、性的マイノリティの苦悩を描き出すというくだりが非常にこるもの先生らしくて、心をわしづかみにされた。
1冊できれいにまとまってはいるんだけど、このバディで続編も見たいなー。畳む


#読書

廣嶋玲子「トラブル旅行社(トラベル) 魔獣牧場でホームステイ」を読む。

トラブル旅行社シリーズ第2巻。
今回は、神話っぽい世界で魔獣たちとホームステイをする。
1巻よりもシビアな展開だし、なかなか重めなテーマだった気がする。
魔獣たちの描写もリアルで◯。
シビアだけど、ちゃんとハッピーエンドで大好きだった。
嫌なことから逃げつづける主人公が、そのことによって招いた悲劇を受けて、自分の醜さに気づき、前を向くというのが非常によかった。今回も挿絵が最高にかわいくてテンション上がる。
この人の絵、もっと見たいな。
あー、あと1巻で既刊が終わっちゃうのか……もったいないなー。畳む


#読書

池上彰「池上彰が読む『イスラム』世界 知らないと恥をかく世界の大問題」をざっくりと流し読みしていた。

例によって、「ラシード使いとして、ラシードの住む国のことがもっと知りたいぜ!!」という気持ちで読みはじめたのだが、主に中東の政治的な問題の話が多めで、実生活に関する身近な話はあまりなかった。
あと、十年くらい前の本なので、情報はやや古めかも。

ムスリムのことやハラールのことがすこし知れてよかったのだが、ラシードの好物であるえびシューマイはハラール的にアリなのかナシなのか、そこらへんのさじ加減はよくわからなかった。
この本だと、「うろこのない魚介類はナシ」というふうに書いてあるのだが、ハラール食品を取り扱う会社のウェブサイトなどでは、むしろエビはハラール食品としておすすめであるというふうな記述がよくある。
宗派によって異なる、人によっても異なる、と書かれていることもあるため、最終的には個人の解釈によるのかもしれない。
このあたりのバランスって、どういうふうな裁量で決まっているのか、食に禁忌の少ない日本人としては、いまいちピンとこないんだよなー。
豚肉やアルコールと比べたら、よしとしている人が多いよ、ということだろうか。
次はもう少し、実生活を中心とした本を読んでみたいなと思った。畳む


#読書

連城三紀彦「黒真珠」をようやく読み終わった。
長々とかばんに入れたままにしていたやつ。
2022年に発売された、おそらく連城三紀彦最後の新刊。
恋愛と推理を基軸にした、これまでの未収録作品を一気に収録する短編集。

連城三紀彦は短編の名手だが、その名手ぶりが遺憾なく発揮されている短編集だと思う。
恋愛小説なのか、推理小説なのか?という議論を超えて、「そういえば、現実の恋愛も、どんでん返しの連続なのではないか?」と思わせてくれる。恋愛感情の描写のきめ細やかさや、迫りくる不安、修羅場の予感が、見事にミステリ的ギミックと結合する瞬間、名状しがたい快感が生まれる。
特に好きだったのは、「過剰防衛」「裁かれる女」「紫の車」かなあ。

やっぱり連城三紀彦はおもしろい。
まだまだ未読が残っているのが嬉しすぎる。
マラソンは、まだ始まったばかり。

#読書

椎名うみ「青野くんに触りたいから死にたい」12巻を読む。
『恋愛漫画』なのか、『ホラー漫画』なのか。
1巻からずっと、絶妙なグラデーションのなかにこの物語はあった。
しかし、ここへきて、『恋愛』こそが『ホラー』の中核にあったということがわかってきていて、戦慄する。

お互いの心の深い部分まで熟知したふたりは、必然的に体を求め合う。
『恋愛漫画』としては完璧な終着点なのだが、『ホラー漫画』としては、その終着点こそが、最悪の悲劇となる。
こうなることは、数巻前からわかっていたはず。
でも、いざその状況になってみると非常に怖い。
丁寧に積み重ねてきた彼らの大切な日々が、状況を悪化させる元凶だったことがわかりはじめて、この漫画がどこへ走っていくのか、非常に気になる。畳む


#読書

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