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2026年2月23日(月)
2026年2月21日(土)
泡坂妻夫「しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術」。
以下、ふわっとしたネタバレありの感想。
最近ヒットした、とある本の元ネタとなったらしい本なのだが、その本と同じく、「おもしろい!」と言うよりは「手が込んでるなあ……」という一冊。
ミステリ界の奇書であり、一読の価値はあるのだけれど、この手の本は種を知ってしまったらもう読み返すことはないなあ、という点でやや物足りない気持ちもある。
奇術師としても知られる泡坂妻夫ならではの奇想天外なトリックで、これを思いついたとしても、実現させるのは相当大変だろうなと思う。
メイントリック以外の部分も意外と読ませてきたり(サブトリックもよく考えるとやや変化球で異様である)、当時の新興宗教団体の絶妙な怪しさ、主人公がヨーガの使い手、とヘンテコの詰め合わせみたいな一冊。
この変な感じが旅行の特別な気分に合っていたと思う。
なお、「これって、Kindle版はあるんだろうか……?」と気になって、読み終わってからすぐにAmazonのサイトに飛んだのはたぶん自分だけではないだろうな。案の定、Kindle版はなかった。
泡坂妻夫作品、ぼちぼち読み進めたいなあ。畳む
#読書
2026年2月16日(月)
ブローティガンは初読だったのだが、すごく好きな雰囲気で、一気に読み終わってしまった。
ほとんどのものが『西瓜糖』でできている世界。
そして、そこにあるコミューンのような場所・アイデス(iDeath)。
そこでは、淡い感情を持った人たちが、透明で静かな日常を送っている。
かつてはわたしたちと同じように言葉を話す虎たちが住んでいて、人々は虎たちに食い殺されていった。今はもう、虎たちはいない。
アイデスでなにが起こるのかを、『わたし』は西瓜糖の言葉で語っていく。
世界は不気味なほどに淡々としていて、死も暴力も、薄まったような感情によって処理される。
悲しくないわけではないだろうが、(iDeathという名前が指し示すように)死と隣りあう自分を常に意識している彼らは、誰かが死んでも、あまり動揺しない。きっと、予測の範囲内なのだろう。
現実とは似ても似つかないようでいて、彼らの日常はわたしたち読者の日常によく似てもいる。
不思議な国に迷い込んだような、独特な読後感だった。
訳者の方のセンスの要素もかなり大きいのだろうと思うが、読みやすく、染み入るような文体が好きだった。
ブローティガンの他の作品も読みたいな。畳む
#読書
2026年2月10日(火)
ここ最近のユヤタン作品のなかでは、一番かつてのユヤタンっぽいお話かもしれない。
かなりマイルドではあるが、イヤ~な性欲の描写、女性の内面掘り下げの薄さ、イヤミスかつ馬鹿げた世界な結末と、鏡家サーガ的な要素が多くてよかったと思う。
なお、価値観のアップデートはまったくないので、「令和にこの感じはきついな……」という部分もある。このテンションを手放しで楽しめなくなった自分が大人になったということなのか。変わらないユヤタンでいてくれることを喜ぶべきなのか。複雑な心境。
むしろ逆に、もっと倫理観を壊してアクセルを踏み込んでもよかったのではないかな~、と思ったりもした。ここで変にブレーキを踏んでしまうと、ユヤタンの強みがなくなってしまうので。
ともあれ、令和になってもユヤタンはユヤタンだったということを証明する一冊だった。レビューサイトなどを見ていると、この本で初めてユヤタンを読んだという人がたくさんいて、むしろ古参ファンのほうが少なかったりしていて、時代の移り変わりを感じた。
あのころファンだった人たちは、今どこで何をしているんだろう。畳む
#読書
2026年2月8日(日)
当時、8巻まで読んで、途中でやめてしまっていた。
約10年ぶりに最初から読み直してみて、やっぱり8巻あたりで一度減速した感じはあったのだが、そのあとはちゃんと盛り返していて、おもしろかったなあ。粗削りでパワーのある漫画。
人間の心が視覚として「見えて」しまう超能力を持つ少年が、吹奏楽部でみんなの心を救済しながら、指揮者として成長していく様子を描く、音楽部活漫画。
超能力の描写がかなり行きすぎ・やりすぎの感があり、最終局面では外見上は音楽漫画というよりも異能バトル漫画のような様相を呈してくるのだが、そこが漫画として唯一無二で、存在感がありまくる。
こちらの心をグイグイ掴んでくる優しい漫画で、また最初から読み直したくなるのだった。
また、部活漫画のキャラとは思えない突き抜けた邪悪な敵キャラ・黒条の描写も凄まじい。
もし、部活漫画のキャラの邪悪さを競う選手権があったら、こいつを超えるやつはいないのではないかと思う。
確実に、この能力を使って何人か殺してるのでは??という風格がある。さすがに邪悪すぎる。
「いやいや、嘘じゃん」と思ってしまう部分もあるのだが、その嘘をうまく活用して魅せてくるのがテクニカルで楽しい。
実際の吹奏楽部の人たちはこれを読んでどう感じるのだろうか。気になる。畳む
#読書
2026年2月4日(水)
2024年の本屋大賞受賞作「成瀬は天下を取りにいく」の続編。
続編でありながら、前作と遜色のないおもしろさなのが凄まじい。個人的にはこちらのほうがおもしろかったかもしれないくらい。
以下、軽いネタバレありの感想。
「成瀬は天下を取りにいく」は親友・島崎みゆきとの友情譚でもあったのだが、今回は進路が分かれてしまったため、島崎の話は少なめ。しかし、ちゃんと存在感はある。
話の途中で、受験があり、大学生活がはじまるのだが、そのはじまりの部分はさらりと流していて、イベントとしては扱っていないのも新しいなと思った。
成瀬シリーズが王道な青春ストーリーでありながらどこか斬新に感じられるのは、他の青春ものでは大々的なイベントとして扱われるものを、そういうふうには扱わないという部分の印象が大きいのかもしれない。扱うときもあるけど。
あと、マイペースに発信を続けている弱小YouTuberを前向きな存在として描いているのも今風で好きだったりする。
物語的なテンプレとして、YouTuberってマイナスのイメージを持った存在として描かれがちだと思うんだけど(入っちゃいけない場所に入る、金やバズのためならなんでもやる、私刑を行うなど)、実際にはYouTubeで継続的に発信できる人って、売れる・売れないにかかわらず、すごく努力している人が多い。ネタを探して、撮影して、発信しつづけるというのは、ふつうの人にはできないことだと思う。
みんながみんな悪いことをしているわけではないのに、「そういうものだから」という偏見でクズに描かれがちな状況になんとなくモヤモヤしていたので、今回、成瀬が怪しげなYouTuberとふつうに友だちになっている描写、好きだったなあ。
ラストでは、これまでの話に出てきた人物たちが集合して成瀬を探すという展開が熱かった。
成瀬の行き先が判明したときは「こんな場所にいたとは……! たしかにこれしかない!」と納得の嵐だったなあ。
3巻で終わってしまうとのことなんだけど、まだまだ続いてほしいなあ。畳む
#読書
2026年1月25日(日)
2008年から継続して記録しつづけて、ついに6000。頑張っているぞ。
読書メーターというサービスそのものが長くつづいてくれていることも嬉しい。
いつまでも読書家と並走する存在であってほしいなあ。
#読書
2026年1月24日(土)
絵がかわいくて読みやすい片付けコミックエッセイ。
使いやすいテクニックが多くてよかったのだが、個人的にはあとがきの一言に目を奪われた。
「大事なモノを1つでも誤って捨ててしまうと、その反動で、新しいモノを次々に買いたくなるのです。脳をマヒさせて捨てまくる、という片付け術もナシではないですが、片付けの目的は自己肯定感を高めることにつきます。片付けが原因で自分に自信をなくしたり、自分が嫌いになったのでは、本末転倒です」というくだり。
これ、すごく大事なことなのに、他ではあまり言及されていないよなと思っていた。
単なる片付けや掃除ならメリットしかないからやればやるほどいいのだが、断捨離に関しては、判断を誤ったときのデメリットが大きい気がしている。
「ハイになって家族のものまで捨ててしまい、離婚の危機」
「炊飯器や掃除機などの生活必需品を思い切って捨てたら不便になってしまった」
「入手困難な絶版本や思い出の品を捨ててしまい、後悔」
などなど、断捨離ハイによる失敗って、致命的なダメージに繋がる場合が多々ある。
そこまで極端な方向へ行かなくても、大事なものを捨ててしまった経験は、代替品を買うストレス解消に繋がりがち。
断捨離は自分を救う行為であると同時に、自傷行為の側面もあるということを知っていなければ、適切な断捨離はできないと思う。
基本的に手持ちのお金で現状回復できないようなものは捨てないほうがいいし、捨てるにしてもよく考えてから最後に捨てたほうがいい。
「とりあえず捨てろ!」と語るのではなく、「捨てたら自己肯定感が下がるものは捨てるな」と言ってくれるのが優しくて印象に残った。畳む
#読書
2026年1月23日(金)
最初は恋愛ギャグ漫画だと思っていたが、徐々にガチホラー漫画となり、そして最後には純愛漫画として美しい着地を見せた。
最終巻で好きだったのは、恋愛という概念への向き合い方だった。
恋愛漫画って、「他者から承認される話」になりがちだと思う。ありのままの自分で、誰かに認めてもらえる、というような。
でも、恋愛って、他者と向き合うだけではなくて、なによりも自分自身と向き合うことなのではないか。
優里は、青野くんという他者ならざる他者を通して、隠されていた本当の自分を観測する。
自分自身と向き合うことで、青野くんがいなくても未来へと歩いていける。
1巻のころの彼女とはまったく違う、新しい自分になって。
優里がおとなになるための物語だったのかもしれないと思った。畳む
#読書
2026年1月19日(月)
「感情的」という単語を見ると、イライラしがちな人のための本なのかと思いがちなのだが、クヨクヨ、イジイジ系の悩みにも効く内容でよかった。
成熟した大人は、すべてを曖昧なグレーとして判定して、白黒つけないでおくことで、感情的な波を最小限に抑えることができるというくだり、かなり納得したなあ。
この年になると、なんとなく様子がおかしくなって疎遠になった知り合いがちょこちょこいるんだけど、様子がおかしくなる前兆として「やたらと白黒つけたがる」というのがあった。
他人の誤字にやたらと噛みつくとか、嫌われたと思いこんで大暴れするとか、自分とちょっとでも意見が異なる人を見るとブチギレてしまうとか。
「ああ、うっかり間違えて書いちゃったのかな?」とか、「たまたま調子が悪かったのかな?」とか、「おれ自身は違う意見だけど、そういう意見もありだよね」とか、すべてを『グレーとして』流して処理をするということが、メンタルをよく保つ秘訣であり、大人として成熟するということなのだろうな。
メンタルケア的にも役に立つ一冊で、よかったと思う。また読み直したい。畳む
#読書
2026年1月14日(水)
なお、中身は手書きではない。提出するときに手書きであるというだけ。
今回は、東日本大震災の直後のオーケンの語りからはじまる一冊。ざっと十年くらい前のものだ。
「がんばれソングやいい人ソングでは心癒されない人たちを後方支援するのが自分の役割」というようなことを繰り返し言っていて、励まされる。
オーケン関連の曲が好きな人って、たぶん昔からこういう感じの人たちが多くて、「世界に一つだけの花」のような曲で(これは例として本のなかで出されているので、ここでもそう呼ぶ)みんなが感動している事実そのものに打ちのめされたりすることって、多々あると思う。
令和的に言うなら、ミセスとか髭男とかがもてはやされているなかで、それらの明るいヒット曲のメロディが自分自身にはまったく響かなかったりする瞬間にだけ生じる孤独って、確実にあると思う。これはきっと、どの時代にもある。
世間のたくさんの人にリーチして、みんなが感動している曲であるはずなのに、自分の心にその感動が生じていないときのむなしさや疎外感。
東日本大震災のような有事のときには、その孤独が普段よりも浮き彫りになる。
あのころはたしかに、「いい人ソング」「がんばれソング」が波状攻撃のように孤独な心に迫ってくる状態だった気がする。
有事にこそ、「不謹慎ソングで後方支援」と言ってくれるオーケン、本当に素敵だった。
もちろん、オーケンは明るい音楽が好きな人や、それで救われる人のことはまったく否定していない。
ただ、それ以外で救われる人もいるんだぜ、自分はそういう人を応援しているんだ、と一言言ってくれるのがすごくいいなあ。畳む
#読書
2026年1月10日(土)
2026年1月8日(木)
大阪の被差別部落出身の著者が、世界各地の被差別グルメを追いかけていく本。
直接的な関係性はない土地柄であるはずなのに、被差別グルメには「一般階級の人々が見向きもしないような食材」を「揚げて食べやすくする」、「臭みを取りながら食べる」などの共通項がある。
大阪における「あぶらかす」(屠殺後に余ったホルモンを揚げたもの)、アメリカにおける「フライドチキン」(一般階級の人々が食べない部位を揚げて、骨ごと食べられるようにしたもの)、ブラジルにおける「フェジョアーダ」(豚の耳、尻尾、内蔵、足などを豆と一緒に煮込んだもの)、ネパールにおける「牛肉料理」(カースト制の厳しいネパールでは、牛肉を食べることそのものがカースト下位である証明となり、牛肉を食べるだけで差別の対象となる)。
著者は自らのソウルフードである「あぶらかす」の面影を求めながら、差別されながら生き抜く人々の声を聞き、時には拒絶されたり、騙されたりしながらも彼らの食文化を追う。
高野秀行「辺境メシ ヤバそうだから食べてみた」や森山 慎/青木 潤太朗「鍋に弾丸を受けながら」などのハード系グルメルポが大好きなのだが、この本もなかなかに考えさせられるグルメの旅だった。
どの国にも差別の構造があり、差別された人々がいて、その人たちだけの「むら」の文化がある。
彼らはそれを語りたがらないため、いつのまにか失われてしまっている文化もある。
そういった食の文化をそっとすくい取って、口に運んでいく瞬間の感動。
それが、著者自身の思い出の味「あぶらかす」と交差するのも興味深くて、印象的な一冊だった。畳む
#読書
2026年1月5日(月)
「変な」シリーズ第四弾。
以前よりも気持ち悪さやグロさが減って、ミステリ要素がやや増えた。
今回はいつもと違う毛色の話で、栗原の過去が語られる。
一日あればサクサク読める、スナック感覚ミステリだった。
毎回、ミステリファンとしてはロジック弱めで物足りない。ちょっと論理的に怪しいな~という部分が多い。「戦乱の世」(戦時中のこと?)とか、言い回しもやや違和感あり。
ただ、このシリーズは大ブームのなかで小学生が読んでいたりするらしく、ミステリ入門書としては読みやすくていいだろうなと思う。
個人的には雨穴さんのミステリよりもYouTubeでやっているホラーが好きだから、ホラーの本も出してほしいな。畳む
#読書
2025年12月26日(金)
2025年12月22日(月)
読んだことのなかった名作を読むシリーズ。
第14回(1962年度)読売文学賞、1967年度最優秀外国文学賞受賞。
昆虫採集をするために砂丘の村に降り立った仁木順平は、住人たちの策略により、砂の穴の底にある民家に閉じ込められてしまう。そこでは、ひたすら砂かきをすることが生業となっており、住人たちは仁木にも砂かきをやらせるつもりだったのだ。民家で暮らす寡婦との奇妙な共同生活がはじまる。
仁木は抵抗し、何度も脱出を試みるが、どうしてもうまくいかずに連れ戻されてしまう。
彼はもとの生活に戻ることができるのだろうか……。
砂に埋もれながら暮らすという非現実的な舞台設定なのに妙にリアルで、読者の口の中にまで砂が入ってくるように感じられる。
どうすれば脱出できるのかというサスペンス、女との極限共同生活の果てに芽生えてくる愛情、人生ってこんなものかもしれないという諦念。
ひとつひとつがあまりにおもしろすぎて、こういう圧倒的な存在感こそ、名作の証なんだなあと思った。
現代に読んでもめちゃくちゃおもしろい。特にオチが大好きすぎるなあ……。
年末にこれが読めてよかったなあと思う。映画版も気になるところ。畳む
#読書
2025年12月20日(土)
少し前に2巻まで読んで、存在をすっかり忘れていた漫画。
カワイイ女の子(なお、実際は変な人ばかりであまりかわいくはない)に囲まれまくった芹沢達也っぽい料理通のおじさんが潰れそうな料理店をコンサルして立て直すぜ~!というような話。
原作が久部緑郎ということで、立て直しパートは「らーめん才遊記」のテイストそのまま。ここは満足感があるのだが、サイコ萌えキャラとでもいうべきメインキャラの女子たちに現実味がなく、世界観の構築に失敗している気がする。
1巻はまだ大丈夫そうだったのだが、2巻、3巻と話が進むにつれて、お店のパートとメイン女子キャラのパートのリアリティラインが噛み合っていない形になっていく。だんだんとお店パートも雑になり、打ち切りっぽいエンドへ。
ただ、3巻終盤の風呂敷のたたみ方は非常によかったと思う。こんなにきれいにまとまるとは予想できなかった。
これによって読後感がかなりよくなった。
このゴール地点を最初から決めていたとしたらすごいな。畳む
#読書
2025年12月19日(金)
出先であるにもかかわらず、最寄りの図書館に駆け込んで読もうとしていた。
いったい、なにがあったのだ。
起きてからも、なんとなく読まなければいけない気がしている。読むか。
三島由紀夫は中高生のときにハマっていて、「金閣寺」「仮面の告白」「潮騒」あたりは読んだ。
「豊饒の海」は長すぎるせいか、読んでいなかったなあ。
今読めば、なにかが変わるだろうか。
#読書
2025年12月18日(木)
原作小説を丁寧に漫画化しており、「くるぐる使い」以外のオーケンの作品のエッセンスも取り入れながら、美麗な絵で紡がれる残酷な悲劇が素晴らしい。
超能力を持った狂人の少女(くるぐる)を見世物とし、大金を稼ぐ「くるぐる使い」となった主人公が、自らの外道の所業に呑まれていくさまを描く。
小説の漫画化って、その人の想像している小説世界を壊すこともあるから、繊細なジャンルだと思っている。絵のない世界から絵を作り出すということは、ある意味では漫画のアニメ化や実写化よりも創造性が強い儀式なのかもしれないと思う。
「くるぐる使い」は原作を踏まえた上でアレンジしていて、丁寧に作品と向き合っているのが好きだ。
オーケンを大好きな人が描いたのだろうなと伝わってくる漫画で、愛を感じる。
#読書
2025年12月16日(火)
非常にロジカルな謎解きホラー作品。良作だと思った。
気になる謎が複数提示されたうえで、ひとつひとつ丁寧に解決されていくのがいいなあ。
どちらかというと謎を解いていく気持ちよさが上回ってしまっているので、そんなに怖くはない。
なお、掲載誌はメフィスト。最近のメフィストのことをあまりチェックしていなかったんだけど、こういうおもしろい謎解き作品がまだまだメフィストに載っているということに安心した。嬉しい。
序盤のなにもわかっていない段階はすごく怖かったのだが、全貌が見えてくるにつれて怖くなくなる。
論理をガン無視したオチにすると「オチはないの?」と言われてしまうし、怪異が論理的すぎると怖さが足りなくなるというところが、この手の謎解きホラーものだとバランスが難しいよなあ。
解決方法も論理でぶん殴る感じだったんだけど、その論理で殴れば怪異の問題が解決できるという根拠が薄くて、そこはちょっと惜しい気がした。
オチはあまりに美しくて陰鬱で大好き。このオチのために紡いできた物語だったと思う。畳む
#読書
2025年12月15日(月)
辛くておいしいミールスを混ぜ混ぜしながら食べたあと、せっかく九段下に来たんだから、なにか寄り道してから帰りたいなと思う。
でも、九段下ってなにがあるんだ? まったく知らない。周囲を見渡しても、オフィス街と学生街が広がるばかりで、観光スポットが見当たらない。
ChatGPTに聞いてみたところ、神保町まで歩いていけるとのこと。
じゃあ、行くしかないか。神保町!
神田・神保町周辺のイメージといえば、頭上に通った高速道路である。九段下から、ひたすら高速道路をたどっていったら、すぐに神保町に着いた。パケットの残量が苦しいので、ナビを使わずになんとなくで歩いていったのだが、シンプルな道筋なので迷わずに済んだ。
神保町はかなり久しぶり。数年ぶりかなあ。
いようと思えば一日中滞在できるスポットだが、もう午後なので、行きつけのお気に入りの店に向かった。
娯楽小説の取り扱いが多い店で、初めて神保町に来たときから、ここにだけは必ず寄るようにしている。
店員さんたちがレジ前で話しながら本を整理していた。
ユメキュウの売上がいい、というような話をずっとしている。しばらくして、夢野久作のことだと気づいた。そんな呼び方だったのか。
ヨコミゾとユメキュウの売れ行きがとてもいいらしい。こんな古本屋がまだ日本に存在しているということが嬉しいなあ、と思いつつ、推理小説を四冊ほど購入して帰った。
ほしいものがたくさんあって迷ったけれど、高木彬光を二冊、泡坂妻夫を一冊、カーを一冊。実はカーは初めての購入かもしれない。
積読がたくさんあって、いつ読めるかはわからないが、このあたりのラインナップはなかなか新品では買えないから満足感ある。
特に、高木彬光はそのうち全冊揃えたい作家のうちの一人。
#読書
2025年12月14日(日)
以下、ふわっとしたネタバレ。
チョコレートに関するさまざまな人間模様を描くショート・ショートストーリー……かと思いきや? という、いつもの青山さん方式の話だった。
青山作品を読み慣れていると、「たぶん、いつものやつが来るんだろうな」と身構えているので、素直に楽しみきれないところはある。
このパターンじゃないやつもたまには読みたいなと思う。
いつもよりかなりライトかつ甘々な感じで、「これはティーン向けなのでは?」と思っていたが、実は「anan」での連載をまとめたものということで、ライトさにも納得。
たしかに、女性雑誌ならこれくらいライトなほうがいいんだろうな。
やや物足りず、もっと大人向けなテンションの作品が読みたくなった。
「赤と青とエスキース」が好きすぎるので、これを超える青山作品を探したいんだよなー。
また、別のも読もう。畳む
#読書
2025年12月10日(水)
ふわっとしたネタバレありの感想。
ようやく閉鎖環境試験が終了。いや~、長かったな。
実際、「閉鎖環境試験が長すぎてやめた」と言っている人もちょこちょこ見かけるけど、個人的にはもっと見ていたかったなあ。
ここまで、ひとりひとりのキャラクターがどういう人物なのかということを丁寧に描いてきているわけだけど、閉鎖環境試験はその積み重ねへの答え合わせとしてすごく気持ちのいい話だった。
完璧なように見える人にも裏側に欠点があり、外側から冷徹な評価が下される。
当たり前だが、完璧な人なんていないのだ。
「この人ってこういう人だよね」という読者のイメージと、A級隊員たちからの「こういう人であるなら、こういう問題点があるよね」という評価が交わるとき、まったく新しい視点とおもしろさが生まれる。
閉鎖環境試験は、いわば、23巻までの物語を読んできた読者へのご褒美のような存在だと思っている。
ボーナストラック的なイメージもあって、23巻までを読んでいない人がいきなりここを読んでも、たぶんよくわからないと思う。少なくとも、試験に参加しているメンバーがどの隊のどういうポジションの人なのかという知識は必須。
ここからは新たな試験が始まるわけだけど、次はどんな試験になるのか、気になるなあ。
みんなの新たな一面が見られてすごくよかった閉鎖環境試験なんだけど、一番印象的だったのは水上先輩と諏訪さんかなあ。
水上先輩のことを今まであまり意識していなかったので、「この人、こんなクセ強な人だったんだ!?」という驚きが大きかったなあ。
みんなの欠点が露呈していくなかで、諏訪さんの欠点だけがほぼ出てこなかったのは逆に怖かった。諏訪さんの株がストップ高になってしまう……! 年齢のわりに人間ができすぎている。
29巻ではイコさんが好きすぎて困った。生駒旋空はコピーできないっていうくだりもめちゃくちゃいいんだよな……実はすごい人かもしれないイコさんから目が離せない。
能力的に優れている部分は今回はあまり出てこなかったけど、遠征という極限の環境に必要なのって、イコさんや太刀川さんみたいな底抜けの明るさを持つ素直な人なんじゃない?と心から思う。
あと、地味に成長したよなあと思うのは香取さんだったり。閉鎖環境試験は香取隊の成長の物語でもあったんだよなあ。畳む
#読書
2025年12月4日(木)
2025年11月20日(木)
と意気込んだのはよかったのだが、そういえば、ハヤカワ・ミステリ文庫に合うブックカバーがなかった。
カバーをつけようとして、初めて気づくという。
つるつるしたきれいなカバーと帯なので、できたらカバーをつけたいなあ。
今月は散財しすぎているから微妙なんだけど、通販しようか悩む。
#読書
2025年11月17日(月)
波瀾万丈でドラマティックな実録本。
さまざまな人がマッチングする出会い系サイトで、ひたすらに相手に合いそうな本をおすすめしまくるという、嘘みたいな本当の話。
一応、恋愛目的でない人もいて、同性と会うこともでき、友だち作りや人脈作りに利用している人もいるサイトらしい。
当たり前だが、ヤリモクや変態も一定数いて、いろんな種類の人がひしめいているカオスな空間。
別居中の夫との関係の悪化、そして大好きだった職場・ヴィレッジヴァンガードが本好きにとって居心地のいい場所ではなくなってきたという焦燥感に突き動かされ、本が大好きな自分が、これからどう生きるべきなのかを追いかける、思考の旅に出る。
自分の人生に本当に必要なものはなんなのか。
夫との関係をどう精算するべきなのか。
ヴィレヴァンを辞めて、その先に新しい仕事を見つけられるのか。
迷いながら、知らない人とカフェでひたすらに出会いつづける。
その先にある、人生の答えとは。
出会った人のなかには、一生ものの友だちになれる人もいれば、気が合ったのに一度しか会わなかった人もいる。
まるでこの世界の縮図を見ているようで、心が躍った。
自分もまた、かつてのヴィレッジヴァンガードが大好きだった人間なので、最近のヴィレッジヴァンガードが、はぐれもののための風変わりな本を売る場所ではなく、かわいいキャラの雑貨やアニメの推し活グッズを売る店になってしまったことは非常に残念に思っている。いつのまにか、ヴィレヴァンの本のコーナーにはめったに行かなくなったなあ……。
業績もよくないらしいし、なかなか厳しい局面に立たされているのだろうな。
なお、この作品はドラマ化もされており、サイトで出会ってよき友人になった遠藤さん役は森崎ウィン、夫役は竹財輝之助だった。
竹財さんってやっぱりこのポジションなんだ……!と納得感があった。なぜか破局が似合う。
ドラマの中身、どんな感じなんだろう。
わたしたちは狭い世間のなかで苦しんで右往左往しているけれど、一歩外に出れば、自分で思う以上にさまざまな人がいて、それぞれに別の生き方がある。
出会い系サイトでの出会いの先にあるかもしれない人生のヒントを探す、長い長い旅。
手元にある本を通して、その向こうにだれかの人生の真実を見つける。そんな壮大な一冊だった。畳む
#読書
2025年11月10日(月)
オモコロライターのマンスーンさんが、30歳まで無職だった自分の人生について語るエッセイ。
独特の文体、詩情のある文章と、無職という特殊な状況がうまく噛み合っていて、じんわりしみるエッセイだった。
おもしろいのは、料理に対して非常にアクティブで、凝った海苔弁当を作ったり、チャパティを焼いたり、ちゃんと油で揚げたポテトチップスを夜な夜な親に隠れて作ったりなど、無職らしからぬ丁寧な調理をずっと行っているところ。
こういうマメなところが無職脱出につながったのだろうか。
無職って、意外と詩的な状態なんだな……と新しい発見ができる一冊だった。
#読書
2025年10月31日(金)
最近、小説にハマっている村田沙耶香さんのエッセイ。
小説作品がかなり尖っているけど、ご本人はどんな方なんだろうか?と気になっていた。
とても愛らしくて、ちょっと天然で、それでいて小説に含まれているあの尖りの片鱗は感じられる。めちゃくちゃ好きなテンションだった。
今年読んだなかでナンバーワンのエッセイかもしれない。
かわいいのに、どこか異様で、あの世界観がちょこちょこ見えるのが最高。
かつて好きだった少年漫画の主人公の話、すごく気になるんだけど、誰のことなんだろう……。
この漫画かな?と思う候補はある。
ここに出てくる条件である程度絞れそうだけど、よくわからず。めちゃくちゃよさそうな漫画なので、読んでみたいなあ。
文庫版だと加筆もあるらしくて、文庫でも読みたくなる。畳む
#読書
2025年10月27日(月)
第173回直木賞候補作のイヤミス短編集。
「火のないところに煙は」がおもしろかったので期待しすぎたのか、やや肩透かしだった。
イヤミスとしてはよくできていると思うんだけど、どんでん返しをすることによって、それまで読者が心のなかで構築していた感情のストーリーが崩れ去ってしまうため、イヤミスのイヤの部分が削がれるタイミングがあって、もったいないなと思った。もっとイヤミス部分にがっつり振ってほしかった。
抱っこ紐のバックル外し事件、外国人就労差別問題など、社会派っぽい題材に触りつつも、あまり掘り下げていないのも物足りなさが残った。
これで、第173回直木賞候補作を半分読み終わったことに。
あと3作品で全制覇できるし、読んでみようかな。
ただ、大長編っぽいのが残ってしまっているので、挫折しそうな気もする。畳む
#読書
2025年10月21日(火)
村上春樹をあまり読まない人生を送ってきた。
たまには、なにか読むか……ということで、一日で読めそうなボリュームのこちらをチョイス。
自伝的エッセイで、ハルキ・テイストではない話だが、好きだったなあ。
村上春樹が、そんなに仲のよくなかった父について、淡々と語っていくというエッセイ。
主観的な情報ではなく、父親についての客観情報をもとに家族の歴史を解説しており、エッセイなのに、感情が控えめですごく丁寧に読ませる。
家族エッセイって、仲のいい人(あるいはすごく悪い人)について語らなければいけないような先入観があるけれど、実はそんなに仲がよくなくても、距離感があっても、物語はあるんだぜ、という肩肘はらない感じも好きだった。
親と仲がよくない人、そんなに交流していない人はきっとそれなりにいるはず。
だけど、やっぱり、他の人と比べてしまって、その事実自体に引け目がある人は多いと思う。
でも、仲のいいばかりが家族ではなく、別に仲よくなくてもいいんだ。そこにはたしかに、思い出がある……と当たり前のことを確認させられる。そんなあたたかいエッセイだった。畳む
#読書
第174回直木賞受賞作。
実は直木賞ってそんなに読んできていなくて、途中で読むのをやめたりした作品が多いのだけれど、これはサクサク読めて好きだった。
大正から戦後までのカフェーの風景を、女給の目線から描くお話。
フェミニズム的な感じや、戦争の恐ろしさみたいなパートもすこしだけありつつ、基本は女性たちの生活をのどかに描写している場面が多くて読みやすいと思う。いい雰囲気のカフェーだなあ。
大河的なテンションも好き。
映画化、ドラマ化したら映えそうだなと思った。
人物が多いから、ドラマのほうがいいかな。畳む
#読書